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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第12章 その男【服部半蔵】

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信長様からの勅命

(ほう、さすが浩一の仕事はいつ見ても完璧だな…)


 城内に入り俺達は信長様とお目通りの為、案内役の人から【拝謁の間】に通され、静かに彼の登場を待っていたのだが、ここに来る道中で俺は浩一の仕事を確かめていた、各廊下の柱には夜でも女中さんが安心して歩けるようシーリングライトが施され、特に人が集まるこの【拝謁の間】には壁際に3台の大型空調機器が設置されており、長時間の軍議でも皆快適に過ごせる温度に保たれるようになっていた。


(なるほど、天井には照明器具が目立たない様にダウンライトを採用しているのか…まぁそれ以上に各主要な部署にはそれぞれの電化製品を配備してるらしいけど、これだけの電力を確保する工事のために、俺はその部材仕入れで雨の日も寒い日も負けずに何度川へ飛び込んだ事か…)


 まぁその苦労の甲斐があり、俺も浩一も信長様からの信頼が更に厚くなったのだから、結果オーライというべきである。

 ちなみに令和事業部支社長である浩一の奥さん【瞳ちゃん】から、以前この事業に関わる費用の伝票を見せてもらったが、部材仕入れ費用に船舶使用料、その他申請関連の手数料などなどを合わせると、稲葉山城電力供給工事の総費用は3億3千万円だったらしい…無論、俺個人の資産では3億2千900万円足りなかったが、大蔵省がアノ【織田信長】氏であるので、この程度は大した金額ではない♪。


(ま、令和の時代では【(きん)】相場がかなり美味しいみたいだし♪)


「ところで【淳一】この大広間もかなり涼しいですわね…まるで<かなめ>らのお屋敷みたいですわ…」


「あぁ、この城が快適になるように信長様の(めい)で浩一と蜂須賀小六殿(どの)達が改築工事を手掛けたんだ…」


「まぁ!あのお屋敷といい、このお城まで!あのお(かた)はそれほど凄い技術を持っておられるのですか!そんな天から授かりし才を持っておられるお(かた)が、買い付けしか出来ない【淳一】のご友人だなんて…何ともお可哀そうですわ…」


「あのな!工事用の南蛮製品を仕入れるのもかなり大変なんだぞ!」


「しっ!(あるじ)、<かなめ>さん!間もなく信長様のお成りです!」


 それからすぐ蘭丸様より信長様参上の声がかかり、俺達はひれ伏し彼の登場を迎える態勢に入ると、静かに障子が開き、あの飄々とした松平様よりも遥かに威厳を放った信長様が一の段に座った。


「巽よ!竹千代の件、見事成し得たらしいの、よくやった…褒めて使わす!(おもて)を上げよ!」


 信長様も松平様の夫婦関係を陰ながら心配されていたのか、今回の件が円満解決になりかなりご機嫌のように見えた、ようやくこれで俺の仕事が終わった事になり、俺自身は大ケガをしたものの、信長様からのお褒めの言葉で全ての苦労が吹き飛んだ気がした。


「ははっ!」


(それにしても…すでにこの一件が信長様の耳に伝わっていたとは…さすが織田家の情報収集能力は大したものだ…)


「ん?巽の隣に居るのは(かえで)であろうが、その横の娘は誰じゃ?」


 俺が返事をするよりも早く(かえで)さんの口が開いた。


「はっ、信長様…この不詳橘楓(たちばなかえで)…岡崎にてこの<藤原かなめ>を剣術の弟子として迎え入れました…此度は殿(との)へのご挨拶を兼ね、ここへ連れて来た次第でございます…」


「そうか、殊勝な心掛けである!(かえで)、そして<かなめ>とやら、2人とも(おもて)を上げよ!」


 俺自身のお役は終わったのだが、それでもまだ心の底から安心は出来なかった…それは…まだ二日酔い真っ只中の<かなめ(あいつ)>が信長様の前でとんでもない失態をしまいか、それが不安で胃の奥がキリキリしていたからだ!。


「ははっ!…さ、<かなめ>さんも…」


「はいですの…」


 ゆっくりと<かなめ>は顔を上げていく、ここからは彼女にとって【顔見せ】は得意分野なので、まだ俺自身不安でドキドキする事はない。


「ほう…なかなか美しきおなごではないか…(かえで)に負けず劣らずじゃの…せいぜい(かえで)の元で己の腕を磨くがよい!」


「ははっ!」


 鼻の下を伸ばしデレデレの藤吉郎様と比べ、力強い君主の威厳を放っている信長様は、やはり人の上に立つに相応しいお(かた)だ<かなめ(あいつ)>の美貌に全く心を揺るがす事も無く、平常に振舞っておられる、それが藤吉郎様と信長様の違いなのだ。


「ところで巽よ、なぜわしが貴様を呼びつけたのか、その意味…分かっておるか?」


「はっ、滝川様の北伊勢侵攻が成功し、次の狙いは六角氏ではないかと…そして…その先には京がございます…しかし、それには一向衆が殿(との)の覇業を邪魔しようと立ちはだかるはずです…」


「うむ、そうじゃ…そこで貴様にやってもらいたい事がある、猿、重治(しげはる)と共に(ヤツ)の【観音寺城】を落とせ!」


 ここで俺の中に大きな疑問が生まれた、確か観音寺城を落とすきっかけとなったのは【足利義昭】が信長様を頼り越前からやって来ると、浅井家・松平家と共に京へ上洛する途中での出来事だったはず…まさかそのお役が俺に回って来たなんて、やはり俺の学んだ歴史の歯車が少しずつ狂い始めていた。


「畏まりました、それで殿(との)…その(あいだ)殿(との)は何をされるおつもりですか?」


「知れた事…わしに歯向かう一向衆を根絶やしにする!そこで巽達は派手に観音寺城を攻め、業火に包まれる【六角 義賢(ろっかくよしかた)】の城を民たちに見せ付けてやれ!織田家に歯向かえばこうなる運命であると、年寄りから子供まで知らしめるのじゃ!」


(そ、そんな…)


「その(のち)、わしは悠々と【足利義昭】を引き連れ京へと上洛する!よいか、見事猿達と共に織田家上洛への足掛かりといたせ!この件は次の評定にて、正式にわしからの勅命(ちょくめい)として皆の前で伝える!」


(という事は…すでに信長様と【足利義昭】は水面下で条約を交わしているのか…)


「……御意にございます…」


 俺はてっきり新しい便利家電の注文かと思っていたのだが、よくよく考えてみると、これほどオール電化システムに進化した稲葉山城にはもはや追加する道具など無いだろう…次の俺の仕事は【(いくさ)】だ…完璧に俺のテリトリーではないのに!。


(取り敢えず…すぐに帰宅して藤吉郎様と竹中様に相談だ!)


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