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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第12章 その男【服部半蔵】

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豪勢な歓迎会

 俺は藤吉郎様と共に<かなめ>を連れて食堂に到着すると、テーブルの上には<おねちゃん>と<仲様(なかさま)>お手製の豪華な料理が用意されており、浩一と小一郎様、竹中様もすでに着席し<かなめ>の参上を待っていた。


「こ、これは…南蛮物の物置台じゃないですか?そ、それに…松平様すら座った事のない台にみんな座っておりますわ…これも【淳一】が南蛮から買い付けたということですか?」


「まぁそうだ!恐れいったか♪ちなみにみんなが座っている台の事を【チェアー】と言うんだぞ♪この時代では折り畳みが出来る【床几(しょうぎ)】と同じ腰掛けの役割かな…」


「ほれ、ほれ、<かなめ>ちゃんは今日の主役じゃから、一番奥の上座(かみざ)の席に❤」


 ちょうど藤吉郎様にエスコートされ<かなめ>が席に着いた頃、少し遅れて(かえで)さんも現れた、そんな彼女の衣装は<かなめ>の師匠らしく綺麗な着物を羽織った【打掛姿(うちかけすがた)】で、更にいつものポニーテールを外し、お(いち)様のように垂れ髪の髪形に変え現れたのだ。


(か、(かえで)さん…凄く綺麗だ…)


「お!おぉ、(かえで)ちゃんも<かなめ>ちゃんに負けず劣らずめんこいのぉ~❤我が家に可憐な花が2輪も咲き、何とも(はな)やかになったのぉ~♪花だけに…」


「おい、どうして可憐な花が2輪だけなんだよ!(あと)二人忘れてないかい?」


 藤吉郎様の真後ろで、鶏の唐揚げを盛った大きな皿を両手に持ちながら<おねちゃん>が怖い表情で立っていた、それは完全に着飾った(かえで)さんに対するジェラシーも含まれているのは明らかである。


「お、おね!い、いや…そうではなくてじゃの……ん?どうして(あと)二人なんじゃ?…おねはともかく…」


「おほん、藤吉郎!まだこの家にはもう一人可憐なおなごがおるじゃろう!」


 更に<おねちゃん>以上に低い声で<仲様(なかさま)>が藤吉郎様に声をかけた。


「え?………はぁ?…ま、まさか…母ちゃんか?…あのな、母ちゃんの何処が【可憐】なんじゃ!もう【枯れ尾花】ではないか!」


「のぅ<おね>や、今夜の飯は藤吉郎にやらぬで良いからの!」


 ようやく俺はいつもの木下家に戻って来れた喜びを感じる事が出来た、これから久しぶりにみんなで集まり同じテーブルを囲い食事をする、もしあの時本気で【服部半蔵】が俺達の命を狙っていたのなら、もうこの空気を感じる事なんて無かっただろう。


「まぁそうへそを曲げるなや母ちゃん、では<かなめ>ちゃんの歓迎会前に自己紹介でもするかの♪もうわしや<おね>、母ちゃんは済んでおるので、小一郎から順に自己紹介をしてくれ♪」


「あ、はい…では、拙者兄藤吉郎の弟で<木下小一郎>と申します、お役は(おも)勘定方(かんじょうがた)と情報整理をしております」


 こうして時計回りに小一郎様から順に自己紹介が始まった。


「次に私は<藤本浩一>といいます、巽淳一とは幼少よりの友人で、現在は稲葉山城の改築や城内の生活環境を管理するお役を信長様より頂戴しております」


 さてさて、こうして自己紹介が進んでいく中、この会の主役である<かなめ>はどうかと言いますと…まるで借りて来た猫の様に物静かで微笑みを絶やさず、まるで「お前は貴族のご令嬢か!」とツッコミたくなるほど、しっかりと相手の顔を見詰めながら何度も小さく頷いている始末…。


(一度でも俺にそんな顔をしてみろよな!)


 そんな猫を被っている<かなめ>が最も驚きの顔を出したのが次の竹中様の番が来た時だった!。


「<かなめ>殿(どの)、先程は紹介出来ずに申し訳ありませんでした…拙者、木下藤吉郎様の配下であり相談役の<竹中重治>と申します、以後お見知りおきを…」


「え、えっ!た、竹中?…ま、まさか…あなた様はあの【今孔明(いまこうめい)】と称されている【竹中半兵衛】様でございますか?え、えーーっっ!…う、嘘~❤」」


「はぁ…まぁ、実際の所かなり過大評価だとは思いますが…いやはや、お恥ずかしい限りです…」


 偶然にも新幹線の隣の席で憧れのアイドルと出会ったギャルのように<かなめ>の表情が変わった、それもそうだろう…【今孔明(いまこうめい)】の名は遠い国まで鳴り響いているし…それに、色白い肌に切れ長の目、均整の取れたイケメンの顔つき、更に【(ちょう)】が付くほどの天才頭脳の持ち主なのだから<かなめ>の顔がミーハー女子に変わっても致し方無い。


「とんでもないですぅ~~❤あの有名な竹中様とこうして会えるなんて…感激です❤私、松平家康様の奥方である【築山(つきやま)】様に仕えておりました<藤原かなめ>と申します、縁あって橘楓(たちばなかえで)様の弟子となり、これから日々精進致しますゆえ、以後よろしくお願いいたします」


(また似たような事を言うが、一度でも俺にそんな態度をしてみろよな!)


 あの<かなめ>の姿を見て面白くないと感じたのは俺だけではなく、もう一人居る!言わずと知れたこの家の(あるじ)である藤吉郎様だ!。


「も、もう自己紹介はこれくらいでいいじゃろ!ほれ、乾杯じゃ、乾杯じゃ!皆、グラスを持て!」


 間違いなく<かなめ>にとって触る物、口にするもの、すべてが衝撃だったはず、キンキンに冷えた飲み物、見た事がない温かくて美味しい料理、煌々とこの部屋を照らす室内灯の明るさに快適な空調…その()、俺と<おねちゃん>は、まともに食事が出来ないほど<かなめ>からの質問攻撃を受ける事になったのは言うまでもない。


(……これで<かなめ>も木下ファミリーの一員か……先が思いやられる……)



<翌日>



 深夜まで続いた<かなめ>の歓迎会は、酔い潰れて倒れた藤吉郎様をきっかけに御開(おひら)きとなったが、俺は今日の為に酒は殆ど口にしておらず、信長様との拝謁をする為、すでに早朝から(かえで)さんと<かなめ>を伴い稲葉山城に向かっていた。


「あぁ~~~…まだ頭がズキズキしますわぁ~~……」


「さっき渡した鎮痛薬がもう少しで効いて来るから我慢してろ!たく、未成年者が二日酔いなんて…」


「だってあんな甘いお酒があるとは知らなかったのですもの…それに、何度もあのお猿さんが飲ませてくるから……うぅ~~~……気持ち悪いですわ…」


 完璧に令和の時代なら未成年者の飲酒は違法であり、それを勧めた者も処罰の対象となるのだが、10歳で嫁入りをするこの時代では<かなめ>は完全に成人扱いであり、誰も飲酒を(とが)める者など居ないのだ。


「あの(あるじ)?早急に信長様からのお呼びとは、いかなる内容なのでしょうか?」


「…うん、恐らくは上洛についての計画じゃないかと思うんだけど…てか、どうして<かなめ>まで付いて来るんだよ…そんなに具合悪いなら部屋で寝てろよ!」


「何をおっしゃられておりますの!姉様(あねさま)の行くところ<かなめ>有りですわ……うぅ~~…きっと【淳一】は姉様(あねさま)と二人きりなれば…破廉恥な事をするに違いありませんの…うぅ~~…胸がムカムカしますわ…」


(ムカムカしてるのはこっちだ!)


「お前、信長様の前で絶対に粗相はするなよ!」


 浅井家との同盟が完了し、京までの道のりはあの観音寺城を残すだけとなったが、もはやあの六角氏の勢力では織田軍団に歯向かう事は出来ないだろう…となれば…恐らく信長様の考えは……。


(出来れば血を流すような(いくさ)は避けたいけど…)


 何はともあれ、俺達は浩一が手掛けたハイテク稲葉山城に到着した。


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