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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第12章 その男【服部半蔵】

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藤吉郎エンジン全開!

<それでは失礼いたしまして…>


 俺の部屋の障子が静かに開いていく…すでに藤吉郎様は、まるで夕飯後待ちに待った【ケーキの箱】をママに開けてもらえる幼児のように身体をウキウキと揺らし、部屋の外に意識を集中させていたが<かなめ>はまだ頭を伏せつつ器用に両手で障子を開けていく。


(うわ、この仕草…<かなめ(あいつ)>絶対計算してやがる…)


「お、おい!は、はよ…わしにそなたの顔を見せてたもれ❤」


(おっさん、いつから公家になったんだよ?)


「え、で…でも…かの有名な【木下藤吉郎】様に見せるほどの顔ではございませんので……き、きっと…顔を見るなり、私は屋敷を追い出されてしまうかも知れません…」


 完全に悪い意味で俺の両腕に鳥肌が立った!俺にとって<かなめ(あいつ)>は天敵ではあるが、その甘ったるいアニメ声と、超美少女級の容姿は認めざる負えない…今、<かなめ(あいつ)>はそれを見事に利用し、藤吉郎様を自分の聖域に取り込もうとしているのだ!。


「ううん、ううん、おじさんね、そんな酷い事はしないよ~❤」


「でも…私まで御厄介になると…生活費もひっ迫すると思われますし…何処かの古い長屋(ながや)にでも紹介していただければ…そこで慎ましく生きますので……」


(お前!そんなつもりは毛頭ないだろが!)


「え~~!そんなのダメダメ~、(かえで)ちゃんの弟子になったのなら、もう<かなめ>ちゃんはこの家の家族だよぉ~❤それに、わしを含め皆【侍大将】なのじゃから、金子(きんす)の事は気にしないでいいんだよぉ~♪だ・か・ら、早うそなたの顔を見せてたもれ♪」


 今度は全身に鳥肌が立った…<かなめ>の仕草もさることながら、藤吉郎様の全開エロおやじの姿にも俺の身体は正直に反応している。

 きっとこの中で一番冷静でいるのは竹中様だけであろう。


「そ、それほど言われるのであれば………」


 ひれ伏した姿のまま<かなめ>はゆっくりと頭を上げていく!俺はそんな<かなめ>の顔を見て絶句した!。


(くそ!や、やってくれたな!<おねちゃん>!)


 頭を上げた<かなめ>の顔には、完全に浩一の嫁さんである瞳ちゃん直伝のメイク技術が施されており、ノーメイクでさえ美少女なのに、更に令和のメイク技術で至高の美少女へと化けていたのだ!そんな<かなめ>の顔を見た俺は感心よりも軽い怒りを感じている。


「ほう、これはこれは…」


(うぅっ、竹中様まで…)


「あ~~ん、もう<かなめ>ちゃん、か・わ・い・い~~❤おじさん、<かなめ>ちゃんがあんな事を言うから、とってもドキドキしちゃったお~~!」


(ダメだ…藤吉郎様のエンジンどころか…ターボまでかかってしまった…やはり恐るべし<おねちゃん>…)


 ここで俺は完全に<おねちゃん>の魂胆が見えた…まず藤吉郎様に美しく着飾った<かなめ>を披露し、その容姿でかなりのインパクトを与え、更にこれから同じ屋根の下で住む事も理解させると、当然藤吉郎様の事である!間違いなくこのおっさんは<かなめ>にちょっかいを出すのは明らか!となれば、旦那がそんな【おいた】をするのだから<おねちゃん>も気兼ねなく俺にモーションをかけれるという短絡的計画なのだろう。


「ほれほれ、むさくるしい部屋じゃが、入れ入れ❤」


(俺の部屋なんですけど…)


「は、はい…お邪魔いたします…は、恥ずかしいですから、あまり私の顔を見ないでくださいね…」


(藤吉郎様も藤吉郎様だが、<かなめ>!お前もお前だな!)


「か、かわえぇ~~❤もうおじさん、いっぱい<かなめ>ちゃんの顔を見ちゃおうかな~~❤」


 こうしておしとやかに<かなめ>は藤吉郎様の前に出てひれ伏すと、改めて挨拶を始めた。


「このたびは素性(すじょう)も分からぬおなごをこの屋敷に迎えていただき、ありがとうございます…私は【藤原かなめ】と申し、無理を言い橘楓(たちばなかえで)様の弟子となり、これから剣の修行に邁進する所存でございます…至らぬ点もありましょうが、どうか末永く家族の一員として受け入れていただきますよう、よろしくお願い致します」


「う、うむ♪(かえで)ちゃんと剣の修行か♪それはいい眺め…いや、しっかりと精進いたすのじゃぞ❤今日からは自分の家だと思い(みな)と仲良く暮らすのじゃぞ!」


(このおっさん、一瞬本音が出そうになったな…)


「ありがとうございます♪」

(ニコッ❤)


 俺にしてみればかなりわざとらしい笑顔に見えたが、相手は藤吉郎様なのだ…もう完全に藤吉郎様は<かなめ>の術中に掛かったようだ…そんな<かなめ>の背後で糸を引いているのは嫁である<おねちゃん>とも知らずに…。


「あぁ~、きゃわいい~~❤こんな<かなめ>ちゃんのきゃわいい笑顔をこれから毎日見れるとは、わしは果報者じゃ♪」


(ダメだ…もうこのおっさんの気分はブレーキの壊れたF1(エフワン)マシーンだ…)


「え、そ、そんな…でも、ご要望であれば、いつでも藤吉郎様だけに…み・せ・ま・す・よっ❤」


 よく女性が口にする言葉に「男って馬鹿よねぇ~」というのがある…今俺はその言葉の意味を痛いほど理解していた。

 当然ながら竹中様もそれを知っているのか、今回ばかりは殆ど口を開く事はなく、ただ静かにその言葉の張本人でもある藤吉郎様を見守っていた。


「え~~!ほんとかのぉ~♪あ、うん、お、おほん!うむ、では改めて…拙者が【池付きの庭】がある豪華な屋敷の当主で、あの織田信長公の右腕とも人々から称されており、この広き美濃で知らぬ者は無しとまで言われておるあの【一夜城(いちやじょう)】を築き上げた質実剛健、勇猛果敢、才色兼備の木下藤吉郎とは、わしの事であ~~る!」


(なげ~~よ、おっさん!何で無理してイケメンの顔を作ってんだよ!それに、誰が信長様の右腕なんだ?)


「えーーーっっ!そ、そんなに素晴らしいお(かた)だとは露知らず…どうりで藤吉郎様のお背中からは、言葉に出来ない神々(こうごう)しい威厳が広がっていると思いました!今、私はそんな凄いお(かた)の前に座っているのですね、感激です❤どうか、これまでの無礼をお許しください!」


(おめ~もだ!<かなめ>!調子乗ってんじゃねぇよ!)


 もうこれ以上この二人に付き合っていられなくなった俺は、一番肝心である信長様からの伝言を聞く事にした。


(伝言があるとなれば…俺にまたアイテムの依頼か…それとも、今の織田家の勢いからすれば…桶狭間での大勝利に始まり、美濃攻略、そして…近江浅井家との同盟も済んでいる…となれば、そろそろ…)


「あの…藤吉郎様、信長様の伝言とは何でございましょうか?」



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