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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第12章 その男【服部半蔵】

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軍神の化身

 大和飛燕流(やまとひえんりゅう)、三の奥義…<十二飛燕(じゅうにひえん)>!あの猛将柴田勝家でさえ翻弄した高速12連撃の奥義!その剣戟は相手の死角を狙って打ち込まれるため、何処から飛んでくるか予測が出来ない必殺技である。


「…ついに奥義を出すつもりか…面白い、ならば…その奥義、一度でもわしの身体に当てる事が出来たのなら…この勝負、貴様の勝ちにしてやろう…」


「はぁ~、はぁ~、はぁ~、(まこと)ですね?師匠…」


「当てられればの話だ…来い!(かえで)!」


(な、何なんだ…あの【服部半蔵】の余裕は?もしかして、これまで(かえで)さんの技を簡単に交わしてきたから舐めているのか?なら、チャンスはこちらにある!頼むぞ、(かえで)さん!)


 どんなバトル系コミックやアニメでも【奥義】の言葉が出たとたん、必ず相手は警戒し身構えるのがお約束だ、なのに…【服部半蔵】は警戒することも無くその場で立ち尽くし、あまつさえ(かえで)さんを挑発してくる、これが演出ありの物語とガチの実戦である事の大きな違いなのかも知れない。


「くっ!【毘羯羅燕(くびらえん)】」


 (かえで)さんは愛刀を水平にしたまま無防備に立つ【服部半蔵】目掛け飛び込む!。


「ふっ…二十四(にじゅうし)曼荼羅陣(まんだらじん)……」


 ♪カッッッン!!


(まさか、あの高速での斬り込みを弾き返した!)


「うっ【 招杜羅燕(しょうとらえん)】」


 ♪カカッッン!!


「【 真達羅燕(しんだらえん)】!」


 ♪カッッッン!!


「くっ【摩虎羅燕(まこらえん)】!」


 ♪カーーーン!!


 俺は何かの幻でも見ているのかと錯覚してしまうほど【服部半蔵】は苛烈極まりない(かえで)さんの奥義を次々と全て受け流している!あの柴田勝家でさえ何も出来なかったのに、この男は呼吸すら乱さず四方八方から飛んでくる剣戟を(さや)と刀の二本だけで弾き返していたのだ!。


「次が12番目だぞ、(かえで)!」


「てやぁっ!【宮毘羅燕(くびらえん)】!!」


 ♪カーーーーーーーーッン!!……


(え……う、嘘……だろ?……あの12連撃を……全て弾き返すなんて……)


「あ…姉様(あねさま)……」


「ど、どうして…私の奥義が……師匠には通じない?…何故なの?」


 当然俺や<かなめ>よりも(かえで)さんの方がショックは大きい、恐らく彼女はこの奥義に絶対なる自信を持っていたはず、例え有効打でなくても【服部半蔵】の腕をかすめるだけで彼女の勝利だった、きっと彼女もその程度なら出来ると確信していたのだろうが、12連撃の全てを交わされてしまったのだから、茫然となって当たり前である。


「まだ分からぬか(かえで)、貴様は十二…わしは二十四……<十二飛燕(じゅうにひえん)>とは十二の干支(えと)方位!しかし、わしの二十四(にじゅうし)曼荼羅陣(まんだらじん)は【二十四山(にじゅうしざん)】の結界からなっておる!いわば、どの方位からでも貴様の動きは先に読める…」


 もし、もしこの【服部半蔵】が信長様のような野心家であったなら、この国の半分はすでに手にしていたかも知れない…戦国時代の(いくさ)は大将の首を取ればその時点で終了…この男なら敵陣に単身で乗り込み敵将の首を取るのも容易いはず…。


(か、怪物なんてもんじゃない……あの男…軍神の化身だ……この日本であの男に勝てる奴は居ないかも知れない…か、(かえで)さん…)


「奥義を出してもこのざまか………この様な弟子を持ったわしにしてみれば最大の失態…何が命を賭けて守り通すだ…片腹痛いわ…軽はずみに弟子を取った時点で、貴様は二人の命を奪う結果となったのだ、それを悔やみながらこの二人の最後を見届けるがよい!次、七歩目!」


 ♪ザッ!


「てやっ!<十二飛燕(じゅうにひえん)>【 因達羅燕(いんだらえん)】!」


(カウント前の奇襲攻撃!)


「ほう、発動させる順番を変えて来たか…だが…」


 (かえで)さんの<十二飛燕(じゅうにひえん)>は干支の【()】から始まる【毘羯羅燕(くびらえん)】を規則正しく発動させる必要はなく、どの干支からでも始める事が出来るようだ、となれば攻撃の組み合わせは924通りとなる、先程と攻撃パターンが変われば少しは期待出来ると思っていたのだが…。


 ♪カーーーーーーーーッン!!


「たわけ、一度見抜かれた技がこのわしに再度通用すると思ったか、残り少ない一打を無駄にしたな…(かえで)…」


(あ、後…二回…も、もう崖っぷちだ…)


 すでに【服部半蔵】は(かえで)さんを挟んで約3メートルほどの位置まで俺達に歩み寄っている、全く疲れを感じていない【服部半蔵】に比べ、すでに(かえで)さんはかなり息を荒くしている、あの氷のように冷静沈着のサイボーグだった彼女の面影は完全に消えていた。


「はぁ~、はぁ~、はぁ~、はぁ~…」


(かえで)、貴様には見えぬが、後ろの二人がどんな顔をしているか教えてやろう、死の恐怖に顔色は(あお)く、(ひたい)からは冷や汗が流れ、唇は紫に染まっておる…貴様も覚えがあろう、死を直面した者の顔を…さて…(あと)3歩で、この二人の顔が更にどう変わるか、見ものだな……次、八歩目…」


 ♪ザッ!


「はぁ~、はぁ~、くっ!…」


 通常攻撃は全て見切られ、第三の奥義ですらあの男には通用しなかった…すでに(かえで)さん自身も次の攻撃からは【全身全霊】で挑まなくてはならない事を覚悟しているはず…となれば、次は…。


「はぁ~、はぁ~…大和飛燕流(やまとひえんりゅう)二の奥義【輪廻円舞猛燕(りんねえんぶもうえん)】!」


二十四(にじゅうし)曼荼羅陣(まんだらじん)!来い!(かえで)!」



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