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それはまるで太陽みたいな人

勢溜の大鳥居の前、いつものように午前中から観光客で大変賑わうこの場所に現れた1つの影ー、


社へと向かう参拝客が今はまるでその人物を避けるように、さらにはその者の大きさに圧倒されてしまい、隠すことも忘れジロジロとあからさまに凝視している。


大勢の参拝客からは遠巻きに「大きい人ねー!」「外国の方かしら?」「ママ、あれ!」「こら!指差しちゃ駄目!」とヒソヒソと囁かれる声も聞こえてくるが、どうやら注目の的となっている本人は気にしていないようだ。

 ふぅーっと、肩を揺らす程大きく息をつくと、この鳥居からは見えない拝殿の方に目を向けて「ようやっと着いたべ」と感慨深い声を漏らしていた。


そんな時、トンっと後ろ足に小さな衝撃が。

その者の体の大きさから、その衝撃は大したものではなかったが振り返って見てみると、すぐ真後ろに一台のベビーカーがある。


おや?っと思っていると、大きな日よけの帽子をかぶった母親らしき女性が、目の前の人物の大きさに驚き「あああ!?ご、ごめんなさい!私、気づかなくてですね!本当にごめんなさい!」と勢いよく頭を振り上げては謝罪の言葉を口にした。


彼女の声や様子を見て、2人の横を素通りしていた人達もその歩みを止め始めた。



「あら、どうしたのかしら?」


「なんか、ベビーカーが当たっちゃったみたいよ…」


「あらあら、大変。」


「大丈夫かしら?」



周りの参拝客が足を止め心配そうにこちらを見ているのを感じて、母親は居た堪れないい気持ちでいっぱいになっていく。


母親が謝るたびに日よけの帽子が前に下がるのを見て、どうやら彼女の言葉に嘘はなく故意ではなかったことが窺えた。

半べそをかきそうになる母親に向かって、その人物はニコリと笑うと「なんも。」と彼女の頭の上に手をやり、帽子ごとその大きな手で包み込み優しく撫でた。


これには周りの人も驚いたが、1番驚いたのは母親自身だろう。


急に撫でられた彼女は「あ、ちょっと、あの」と驚きをあ露わにしていたが、それでも知らない男性に撫でられて嫌悪感どころか、なんだか幸せな気分になっていることに気づいた。


すると、すぐ近くで「あ!あぅ!」と赤ん坊の声が聞こえてきた。


それは2人の間にあるベビーカーの中からで。

男性がそこを覗き込むと、黄色の涎掛けをつけた小さな赤ん坊が嬉しそうに男性に向かって手を広げていた。

彼はその体の大きさから、大人からはまず驚かれる。

だが何故だろう、赤ん坊や子供には惹かれるものを持っていた。


帽子を整えている母親からも「え、珍しい。この子…とっても人見知りなのに。」と声が漏れていた。


彼は「よいしょっ、」と言いながら膝を折ると、その小さなキラキラと輝く瞳に目を合わせた。



「あーう!きゃあ!」



嬉しそうに自分に突き出された小さな紅葉のような手を、男性は見るからに大きな手でそっと包み込んだ。

勿論その手にはほとんど力を入れていないのだが、まるで陽だまりの様な彼の手の温もりに赤ん坊はまた声を上げて喜び、そしてその姿に母親も安心した顔になった。


周りにいた参拝客達からも、いつの間にか暖かい眼差しが生まれているではないか。


彼は赤ん坊のふくふくとした、まるでつきたての餅のような頬を見つめ、ふっと口を綻ばせると嬉しそうに目を細め大声で笑った。



「ハハハハハッ!!なんまらっ、めんこいなぁ!!」



そのあまりの大声に、また日よけの帽子は大きく傾くのだった。





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