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新たな人神現わる…ってペース早くない!?

挿絵(By みてみん)






ー え、この全然似てない2人は双子で…私と同じ人神!?え?どういうこと?



要が混乱しているのが誰から見ても一目瞭然の中、「ぱんッ!」と軽快な柏手が鳴った。

驚いた要が音のなった方へ目をやる。

もちろん、イズモや応、甲も自然と視線の先は同じで…


皆の視線の先には、菜箸を握った李人がふんぞり変えるように立っていた。



「よし、自己紹介終わり。早く飯にしよう!腹減った!」



李人の後ろにはいつの間にか、要が切った不揃いのニンジンが使われたニラ玉が炒められているではないか。

李人の食欲が今鰻登りに急上昇していることは理解できるのだが、要は納得する訳にはいかなかった。


要は思わず李人の前へと詰め寄り、自分の掌をぶぶぶんッ!と横に高速スライドさせた。



「いやいやいやッ!!全然っす!全然紹介されてないっす!!」


「ああ?飯食ってからにしろ!」



「そんな〜!」と言いかけたが、すぐ横にいた応からも「わたしも、イズイズの朝ごはん食べたい!」と声があがってしまった。


応の言葉に反応するように、甲が炊飯器の前に置かれたお茶碗としゃもじを両手に持って「イズ兄…このお茶碗に、ご飯よそって良い?」とイズモにお伺いを立てている。


どうやらこの3人、思った以上に腹ペコマイペースな人間なようだ。


壁にかけられた時計がもう7時30分を回っているを見て、イズモは仕方ないと言うように、そっと要の肩に手をやった。



「甲、ありがとうございます。要さん、みんな1ヶ月はここにいますので、焦らなくても大丈夫ですよ。」


「え?」


「そうだよ!応は逃げないもん!要ちゃんとも遊びたいしね!」



風貌からもまるでアイドルかの様に華やかに「パチっ☆」と片目を閉じる応に、キュッと腕を抱き締められた要は、彼女の明るいピンクの髪から緑の良い香りがすることに気がついた。



「ご飯食べたら、いーっぱいお喋りしようね!要ちゃん!」


「う、うん。」


「おい!準備できたぞ!早く喰おうぜ!」



李人の自分達を呼ぶ声に、要と応は急いで食卓へと足を運ぶ。

急に3人も増えたこともあって、食台の上は一気に賑やかになっていた。


イズモのお手製のぬか漬けの漬物から始まり、オクラと茗荷の酢の物、ほうれん草と鰹の茹で節で和えたお浸し、朝採れミニトマトはさくらんぼの様に小粒だか、キラキラと真っ赤に輝いている。


煮物は色が濃厚な南瓜がゴロリと大きめに、でもとても美味しそうに炊かれていた。


メインはノドグロの塩焼きが人数分用意され、食欲旺盛な男子のためかベーコンのアスパラ巻きと人参入りニラ玉も用意されている。


炊き立てのご飯から登る温かな湯気を、要は思いっきり鼻から吸い込むとすぐに多幸感に包まれた。

さらにそれを口に入れれば、お米の甘みと旨みがジュンワ〜ッと口の中を満たしていく。


ー 美味しい!なんで炊き立てのお米って、こんなに美味しいの!


その思いは要だけでなかったようだ。

隣に座った応と甲からも歓喜の声が聞こえてきたのだ。



「美味しい!イズイズ、美味しいよ!このノドグロの塩焼き、身がとってもふわふわなの!」


「…お出汁が聞いてる、湯葉も美味しい。」



イズモは「こら、食事中ですよ。」と言いながら「喜んでもらえて良かったです。」と微笑んだ。

双子はそれを見て、嬉しそうにご飯をまた頬張ってモキュモキュと食べている。


要が応を感激させた焼き魚に箸をつけようとした時、席を立ったのは李人だった。



「イズモ、おかわりして良い?」


「李人、おかわりは自由ですが…あなたちゃんと噛んで食べていますか?」



お米は飲み物ではないのですよ、と言いたくなるほど李人はご飯をぺろりと平らげていた。

李人は「ハハハっ!」と笑うと、嬉しそうに炊飯器へと駆けていく。



「俺、絶賛育ち盛りだかんな!すぐに腹減んだよ!」



そう言いながらご飯をどんどんよそっていく李人…の後ろに、いつの間にか甲も控えめに立っているではないか。


甲も照れるように「僕も、最近よくお腹がすく。」と言って、李人からしゃもじを受け取っていた。



「ハァ…米櫃をもう一度確認しなくては。」



イズモは小さなため息をつくと「10代の食欲が羨ましいですよ。」と苦笑いした。

そんな彼を見ながら、こっちに戻ってくる李人はケラケラと笑って応に声をかけた。



「米の心配は大丈夫だろ、なあ応!」


「もちろん、無問題!」



お箸を持った手でVサインを決める応に、要は頭を傾げた。

お米と彼女に、どういった関係があると言うのだろう。



「え?どういう意味?」


「応ね、お土産でいっぱいお米持ってきたんだ!」



両手を大きく広げる応を見て要は雷を打たれた。


ー お、お土産!?


「僕はお味噌と…あと、魚介類は昼過ぎには冷蔵便で届くよ。」


ー 甲くんも!?ちゃんと手土産持参!?この、双子見た目よりもしっかりしてる!!



要はそんな失礼なことを考えながら、今更ながらに自分が手ぶらでここに来ていることに気づいた。

いや、来る予定では無かったのだから仕方がないのだが…これは居た堪れない…。


頼みの綱とでも言うように、震える声で前の席に座る李人にこそりと声をかけた。



「ま、まま…まさか李人…さんは持ってきてないよね?」


「あ?何が?」


「ぉ、お土産…」


「あ?持ってきてんに決まってんだろうが。応が何ヶ月も前から食べたい菓子リストとか、くっだらねぇもん送ってきやがるからな!持って来ねぇと後が五月蝿ぇし。」



ー ぃ嫌あ゛ぁぁー!!!手土産ないの自分だけケテーイ!!!!


要の打ちひしがれている姿を側に、応は嬉しそうに李人に笑いかけた。



「うふふふ。李人の所お取り寄せできないものもあるんだもん!」


「こんな時ばっかり標準語使ってんじゃねぇよ!」


「訛って何言っでのが分がんないって言っだの、李人のぐせに!」



今にも席から立ち上がりそうな2人の剣幕に、イズモは小さく「んっ、」と咳払いすると静かに苦言を呈した。



「二人とも、いい加減にしなさい。」


「「…はい。」」



「ごめんなさい、イズイズ」と萎れる応の頭を撫でてあげたくなりそうな所だが、要は今それどころでは無かった。



「やばいやばいやばい…」



ー 私だけ、常識人じゃないみたいい!!!!









「どうしたんですか?要さん、なんだか顔色が悪いようですが…」


「え!?いえいえ、そんなことはないですよ!」



朝食を終えた後、応と甲はお皿洗いを担当し、李人はコンロ周りを磨いていた。

要たちは食卓の上を綺麗にしながら、皆んなのお茶の準備に取り掛かっていた。


李人のお土産も含めて大量の茶菓子を手に持った時、まだ気持ちがスッキリしない要にイズモが声をかけてきたのだ。


慌てて否定する彼女をじっと見たイズモは、ハッとなって要に詰め寄った。



「もしかして、緊張していますか?」


「え?」


「李人以外の人神に会うのは初めてでしょう?」


「あ、それは…そうですね。」



本当は手土産一つも持っていない自分に嫌気がさしておるのですよ…とは言えなかった要は、的外れなイズモの会話に今は乗ることにした。


実際、イズモの言った通り急に新たな人神が2人も現れて驚いたのは本当のことだし。



「なんだか、自分のことだけしか考えていなかったから…本当に私以外の人神がいるなんて…思ってもいなかったです。」


「そうですね、この国には7人の人神がいると言われています。」


「7人…」



ー じゃあ、あと2人もいるんだ。…どんな人たちなんだろう?


要の呟きに、イズモは言葉を続けていく。

それは人神誕生の歴史を指していた。



「意外にもこの国には人を神だと崇める信仰が古くからあって…それも各地に散らばっているので、正式に人神がいつ誕生したのかはまだ判明されていません。」


「そうなんですか、」


「ええ、古いものでも書物に残されているのは江戸時代だと言われています。」


「江戸時代!?」


「はい。」


「あの、でも人神って…どうやって分かるんでしょうか?拝められればなるってものじゃないですよね?」


「それは、」


「なになに〜?なんが面白い話しでるの?」



イズモと要の会話に入って来たのは応で、どうやら食器洗いは終わった様だった。

流し台を見れば、甲は李人と一緒に何やら話し込んでいるようだ。


応は、お茶菓子の中から一口サイズのチョコを選ぶとイズモに「食べて良い?」と伺いを立てた。

イズモは「もちろん、お皿洗いありがとうございました。」と言うと、続けて「要さんに、人神のことを話していたんですよ。」と応に言った。



「え〜!せっかく、要ちゃんがいるんだからもっと面白い話しようよ!」



応はそう言うと口の中に甘いチョコを放り込みながら、眉に皺を寄せる。

するとそこで、ピンポーンと玄関の呼び出し音が鳴った。



「おや、誰か来客でしょうか?」



部屋のモニター画面を見に行ったイズモは、すぐに要たちの所に戻ってきて「何やら荷物が届いた様なので皆んなで話していて下さい。」とだけ言うと、玄関の方へと姿を消してしまった。


要はイズモの後ろ姿を名残惜しそうに見送った。



ー もっと、イズモさんから人神のことが聞きたかったなぁ。

ー 応ちゃんは…、あんまり興味なさそうだし…



要の推察通り、応は要の隣に座り込むと身を乗り出すように、先ほどとは話題を変えて話しかけてきた。



「ねぇねぇ!要ちゃん、最近まで東京にいたんでしょ?今何が流行ってるのか教えて?できたらsnsでも未発表なやつ!あっ、ファッションとかね!」


「ええ?ごめん、私あんまり詳しくないの…ずっと病院にいたし。」


「ああ〜そっがぁ…あ!でもでも、高知じゃ元気でしょ?高知で流行ってること教えてよ!映えるとこあったら教えて欲しい!写真とってるのある?あっ、スマホある?ライン交換しよ?」


「わ、わ、ちょっと、待って…」



応の勢いのある会話に押され気味な要。

人見知りとは無縁な応に、要は目を丸くするばかりだ。

そんな彼女の食台を挟んだ正面に、また李人が座り込む。


李人は自分の買った可愛らしい菓子など無視して、渋い煎餅をパリッと音を立てて応を指差した。



「ったく。応は、服と菓子と映えばっかだな!」


「良いでしょ!好きなんだから!李人ウルサイ!!指もささないで!失礼だよ!」


「あんだと!あの菓子全部喰っちまうぞ!?」



李人が次にバッと指差したのは可愛い猫や花が描かれた紙袋たち。

あれ全部お菓子なの?と聞きたくなるほど大量にある。


李人はこれらを買う時から「応、マジであいつシメてやる。」と嫌な顔して店に並んでいたのだ。



「いやー!!!止めでよ!馬鹿ぁ!」



応の悲鳴のような声を聞いて台所から甲がやってくるのが見えた。

彼は手に、皮を剥いた林檎入りの皿を持っていた。



「応も李人も五月蝿いよ。」



甲はやれやれと言う様に小さくため息をつきながら李人の横に座った。






「お荷物、これで全部になります。」


「ご苦労様です。」



所変わってー、

玄関先で配達員から荷物を受け取っていたイズモは「何やら中が騒がしいな…」と思いながらも、配達員にお礼を伝えていた。


荷物は大きめのアタッシュケースと、ダンボールと発泡スチロールが何箱かあった。

いくら仕事とはいえ、炎天下の中でこれをここまで運ぶのは大変だっただろう。



「本当に、ありがとうございました。…おや、」


「え?」



イズモの視線が少し後ろの方に動いたのが見えたのか、配達員が反射的に自分の後ろを振り返った。


しかし、そこには目立った何かがあるわけでもなく…

まだ後ろを振り返ったままの配達員に、イズモは「すみません、変な声が出てしまって…」と苦笑いした。




「なんでもありませんので、お気になさらないで下さい。」


「そうっすか?では、ありがとうございました!」


「こちらこそ、ありがとうございました。」



颯爽と駆けていく配達員の後ろ姿を見送ってから、イズモはまた視線を動かした。

彼はその場で膝を折ると、目を優しく細めてこう言った。



「さて、あなたの主様はどうなさったのですか?」



側から見れば、イズモの前には誰もいない。

でも、人神であるイズモにはちゃんと見えていた。

だから、その者の声を聞いてイズモは驚いたのだ。



「ブぃイ!」


「え、…なんですって?」









「う〜う〜う!!李人のイジワル!」


「李人兄は、もうちょっと大人になりなよ。」



家の中ではまだ李人と応、さらには甲が参戦して言い争いが起きていた。

似てないようで結託された双子に李人は嫌そうな顔して口を開いた。



「うゲェ!東北・北陸コンビ、まじで面倒いな!」



李人の「今度から絶対ッ菓子屋には行かねえかんな!」と言う言葉に、とうとう応は頭にきたようだ。

彼女は椅子から立ち上がって李人に怒鳴り込んだ。



「むぅッ!李人の馬鹿ヤンキー!!」


「あ、」


「あ?」


「応…それ、禁句だ」


よ、と甲が言う前に、李人の血管が切れた音が聞こえた(要談)



「ゴラァァッ!!!応このやろっ、ちょっと表出ろやぁ!?」


「ぎゃー!!李人が怖い!要ちゃん助けて!!」


「ええ!?ぎゃあ!」



突然、自分の後ろに隠れた応にも驚いた要だったが、前を見れば般若がもうそこまで来ていることに、さらに寿命が縮む思いだった。


般若は口から火を吹く勢いで要に詰め寄ってくる。



「そこどけぇぇ…要ぇぇぇ!」


「ぼ、ぼぼぼ…暴力反対ですッ!」



きっと自分もただでは済まないだろう、だがこのまま素直に応を李人に差し出せばヤバい展開になるのは目に見えている。

要は生まれたての子鹿のようにガクガクと膝を震わせながら、なんとか李人の…違った、般若の前に立ち続けた。


暴力という言葉に反応するように李人は手を挙げて反論した。



「いや、殴ってねえだろ!」


「顔が怖い!」



要の後ろにいる応から出た咄嗟の言葉に、要と甲が「うんうん!」と高速で頷く。

もちろん李人のコメカミには「ピキリ」と青筋が入った。



「あんだと!?」


「現在進行形で怖いぃぃぃ!!!」



涙目の応の叫びに、残像が残るほど頭を振り続ける要と甲。

そんな3人を見て、李人は「いや、おまえらなぁ…」と息を吸い込むと、思いっきり吐くように叫んだ。



「お前らの方が言葉の暴力振るってんだろうが!!」



馬鹿・ヤンキー・顔が現在進行形で怖い…はい、まごうことなく言葉の暴力です。



「「「確かに!」」」



3人は閃いたとでもいう様に「本当だねー!」と頷き合っている。

李人は「こいつら、アホか。」と思いながら、要の後ろから出てきた応の手首をギュッと握った。



「応、とにかくお前こっち来い!」



李人も別に応に暴力を振りたいわけではない。

なんならその場で正座させて「もう、我儘(主にお土産)言いません。」と言わせたいだけなのだ。


黙っていたらアイドル顔なのに…と百合子にため息つかれる程には、彼の顔は整っている。

まあ、でも彼にメンチ切られたら誰でも怖いのだ。

実際…今、彼般若だし。


しかし、どんなに李人が怖くても可愛いお菓子や雑貨は諦め切れない応。

だから素直に彼の言うことを聞く訳にはいかず、まだ抵抗を止めないでいた。

あと応は可愛い見た目とは違って、以外と力持ちだった。



なので、李人が腕を引っ張っても梃子でも動く気はないのだ。



「やだ!絶対やだ!ヤダヤダヤダ!!」


「ちょ、おま、こいつ…本当に女、かッ?」


「応ちゃん、李人も…」



「一旦、落ち着こうよ」と要が言おうとした時だった。



「アキサミヨーーー!!!!」



ここにいる4人とは違う叫び声が上がったのだ。

それはまるで幼い女の子の様な声。



「え!?何!?だれ、誰の声!?」



要は驚いて、リビングの窓の向こう…綺麗に手入れされた庭へと目をやった。



なんと、そこには幼い少女が立っているではないか。

こんがりと焼けた素肌に、白いワンピースが眩しい印象だ。


その少女を目にした途端、叫んだのは取っ組み合ってる李人と応だった。



「「琉宝(りゅうほう)!?」」


「…え、2人とも知り合いなの?」



要の質問に答えたのは、1番窓の近くにいた甲だった。



「あの子は、琉宝。…九州地方を守地とする人神だよ。」


「ぇ、」



ー あんな、小さな子供が?



要の見開かれた視界の中で、少女は凄いものでも見つけたように、また大きく叫んだのだ。




「李人ニーニーが、応ネーネーを虐めてるさあー!」





文字入力に不具合が出まして、更新不可能になりました。

修理が完了次第、更新します。

読んで下さる皆様、すみません。

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