DKBL002 一匹狼×素直委員長 「想い出に置き去りの君」
こんばんは、城山です。
DKBL短編企画、第二弾です!
この「一回短編にしてみる」章の短編は、内容が完結するものではなく、各カップルの「第1話」を作ってみた的な感じです。なので今後も「続きそう〜」な雰囲気で終わると思います。
各カップルのお話は今後もまったり妄想していく予定です。
(添付画像が見にくくて申し訳ないです……)
【攻め】一匹狼 蔵院 ロウギ
【受け】素直委員長 霞見 タスク
☆あの時、助けられなかったから……
孤高の狼、蔵院ロウギ。
隣のクラスにいる、従兄弟の秀才委員長と比べられる日々。
成績も要領も悪い。ついでに目つきも。ロウギはクラスで浮いている。
「おはよう、蔵院くん」
そんな彼に、分け隔てなく接する唯一の人物がいた。
クラス委員長の霞見タスク。
人当たりが良く、非の打ち所がない。
だがそれだけで。
没個性の真面目な生徒でしかなかった。周りの人間にとっては。
「今日は間に合ったね、ちゃんと起きれたんだ?」
いつも遅刻スレスレのロウギに、タスクは物怖じする事なく話しかける。
誰とでもする世間話のように。
「……うるせえ」
ロウギには、このクラス委員長は八方美人の良い子ちゃんにしか見えていない。
クラスの誰も、俺を恐れて目も合わせないのに。こいつは違う。
まるで俺が「どこにでもいる、ただの生徒」であるかのように接してくる。
気味が悪い。
◇ ◇ ◇
「ああ、いたいた! 蔵院くん!」
昼休み、ロウギが人目を避けて校舎裏で休んでいると、タスクがやって来た。
どうやったらこんな所を探し当てられるんだ、とロウギはその執念に驚いた。
「はあはあ、もう。探したよお」
真面目な性格だから、学校中を走り回ったのだろう。タスクの額には汗が滲んでいた。
それがやけに眩しくて、ロウギは校舎裏の日陰にいる自分との「違い」を思い知る。
やっぱりこいつは、俺とは違う。
そう思ったら、目の前の姿に意味もなく苛々した。
だがそれを知る由もないタスクは、息を整えながら早口でまくしたてる。
「蔵院くん、キミは今日日直だって何度言えばわかるの!? 午前中は全然仕事してくれなかったでしょ。せめて午後からはちゃんとやってよ、日誌も書くんだよ!」
「……チッ、めんどくせえ」
舌打ちしながらロウギが言うと、走って紅潮した頬をさらに染めて、タスクは迫ってきた。
「めんどくさいのはわかるよ、でもね、みんな順番にやってるんだよ! 今日は蔵院くんの番なの!」
キンキン響く高い声。ロウギの苛立ちはますます酷くなっていた。
大きな瞳、白い肌が桃色に染まっていて。滲む汗の、その匂いにクラクラする。
「蔵院くん、クラスの活動にはちゃんと参加して欲しいよ! でないと——」
オマエハモットキラワレル
記憶の底に沈めた幻聴が蘇りそうになる。
嫌だ、聞きたくない。
「……言うなっ」
ロウギは咄嗟にタスクの襟元を掴んでいた。
その言葉を言わさないためには、その唇を塞ぐしかない。
己の、唇で。
「——んうっ」
小さな口だった。
驚きに震えている。
しかし、もっと驚いていたのはキスしたロウギの方だった。
何故、こうなった。迫ってくる口を塞ぎたかっただけなのに。
「……ッ」
キスしたのはほんの一瞬で、ロウギはすぐにタスクを手放した。
「ふえ……っ」
タスクは驚愕と戸惑いで瞳を震わせ、その場にへたり込んでしまった。
羞恥に怯む、その姿をロウギは見下ろした。
急速に落ちてくる罪悪感。
いじめられた子どもを見ているような。
「……クソッ」
いたたまれなくて、ロウギはその場から逃げ出した。
遠ざかるタスクの姿を振り返る事は出来なかった。
彼が今、何を考えているのか。考えたくなかったから。
◇ ◇ ◇
次の日、ロウギは学校に来たくはなかった。
だけど、家にはもっといたくない。仕方ない、登校するしかない。
教室に入ると、すぐにタスクと目が合った。
「あ、おは、よ……」
遠慮がちな瞳が揺れている。
辿々しく震える唇に目が行って、昨日の事を思い出す。
「……ッ」
ロウギは何も言えず、ぷいとそっぽを向いてしまった。
そのままタスクを無視して席に着く。
「あ……」
タスクはそれでもロウギの方を見ていた。
傷ついたような表情で、佇んでいる。
「チッ……」
ここは教室。周りに人がたくさんいる場所で、昨日を掘り返す訳にはいかない。
そう自分に言い聞かせて、ロウギは視線を窓辺に張り付かせた。
午前中の授業中、ロウギは常にタスクからの視線を浴びていた。
チラチラと気にされている。居心地が悪すぎる。
だが、タスクがそうするのは、昨日ロウギが彼にキスをしてしまったから。
脈絡がない……などを飛び越えた所業を、どう取り繕おう。ロウギは最初そればかり考えていた。
昨日のタスクの叱責から、過去が突然舞い戻って。
それで混乱したせいだ。
だが、その過去を言うことは出来ない。言いたくもない。
そんな思考になっているからか、今日も過去の感覚が思い起こされる。
特に、タスクの視線から……
俺を助けようとして、助けられなかった。助けてくれなかった、あの弱々しい視線が。
昼休みを告げるチャイムで我に返る。
ロウギは過去を振り払おうとかぶりを振った。
落ち着け。
今はもう、俺はあの時の俺じゃない。
誰にも頼らない、誰も寄せつけない、孤独な狼であろうとしてるじゃないか。
昨日の件は俺の気の迷い。非は俺にある。その決着は自身でつけなければ。
「おい」
「……ふいっ?」
弁当を広げる気配もないタスクに、ロウギは意を決して声をかけた。
「ちょっと来い」
「うん……」
それだけでタスクはロウギについてきた。
廊下を歩き、階段を登って、生徒の喧騒からは段々と遠ざかる。
それでもタスクはロウギの背中を追い続けていた。
最上階に到達し、屋上へと続く扉を開ける。
ここの錠前は随分前からバカになっていて、少しのコツで容易に開く。
「だ、ダメだよ! 屋上なんて出たら!」
さすがにタスクはロウギを制止した。
だが、ロウギは構わずにタスクの腕を引いて屋上へと進む。
「誰も来ねえからいいんだろ!」
「ああっ」
その小柄な体を乱暴に引っ張って、ロウギは屋上へ出て扉を閉めた。
強い風が吹く。タスクは少し身を震わせた。
寒さからなのか、それとも怖さからなのかは、ロウギにはどうでも良かった。
「……」
強引に連れて来られたので、タスクは俯きながらロウギを上目遣いで見ていた。
少し睨んでいるようにも思えたが、震えるウサギのようで怖くもなんともない。
「昨日は……悪かった」
怖くはないが、目を合わせることは出来ない。
ロウギはそっぽを向いたまま、ボソリとタスクに謝った。
「……」
タスクは目をまるくして、少し口を開けて棒立ちになっている。
言われた言葉の意味がわからない、といった表情だった。
なんでそんな顔してんだ。
謝るだろ、普通。俺は変な事は言ってない。
そう言いたかったロウギだったが、タスクがあまりに放心しているので、うまく言葉が出てこなかった。
何か傷つけたのだろうか。そんな焦りで言い訳がましい台詞が口から出て行く。
「なんか、その……つい、っていうか、成り行きっていうか……」
キスした理由は言えない。
というか、何故キスまでしたのかはロウギにもよくわかっていない。
「成り行き……?」
タスクが呟いたその声は、儚く、悲しみを帯びていた。
「!」
泣きそうな、その顔に、ロウギの胸がぎゅうと締め付けられる。
口喧しいと思っていた「良い子の委員長」が、その枠を飛び出して違う存在になったような感覚だった。
「——もういいっ!」
タスクは俯いたまま、入ってきた扉へ向かう。
ロウギを横切るその時、思わず腕を取っていた。
「待てよ」
何故、止めたのだろう。
理由はわからないが、このまま帰したくないと思ってしまった。
「離して!」
すぐ側で。
体温も、吐息も感じられる距離。
抱き潰す事も可能なくらいに、近い。
「離せえ……っ!」
そんな事を言われて、離せると思うか?
「離すかよ……ッ」
それは、衝動だった。
腕の中の、小さな生き物を。
自分の物にしたいと思ってしまった。
「ん……っ!」
ロウギは暴れるタスクをフェンスに押しつけて、そのまま強引に唇を奪った。
欲しい。
全て、俺のものにしたい。
そんな衝動で、ロウギはタスクの唇を貪り続けた。
「あ……」
ふと、我に返る。
タスクの体から力が抜けたからだ。
「ふあ……」
タスクの思考は限界を超えてしまっていた。
ロウギの腕の中で、全てを手放そうとしている。
「おい、委員長!?」
「ふえええ……」
「霞見ィ!」
屋上の空。抜けるような青を見上げながら、タスクは気を失ってしまっていた。
ロウギはこの小さな生き物と、古い因果がある事にまだ気がついていない。
タスクもまた、想い出の中で後悔している事を。
ーーーーー ロウギとタスクってどんな二人? ーーーーー




