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【エッセイ】BLカテゴリが出来るまで続くシチュ妄想フリートーク  作者: 城山リツ
今までの妄想カップルを一回短編にしてみる章
31/34

DKBL002 一匹狼×素直委員長 「想い出に置き去りの君」

 こんばんは、城山です。

 DKBL短編企画、第二弾です!

 この「一回短編にしてみる」章の短編は、内容が完結するものではなく、各カップルの「第1話」を作ってみた的な感じです。なので今後も「続きそう〜」な雰囲気で終わると思います。

 各カップルのお話は今後もまったり妄想していく予定です。

 (添付画像が見にくくて申し訳ないです……)




挿絵(By みてみん)




【攻め】一匹狼 蔵院(くらいん) ロウギ

【受け】素直委員長 霞見(かすみ) タスク

☆あの時、助けられなかったから……




 孤高の狼、蔵院ロウギ。

 隣のクラスにいる、従兄弟の秀才委員長と比べられる日々。


 成績も要領も悪い。ついでに目つきも。ロウギはクラスで浮いている。


「おはよう、蔵院くん」


 そんな彼に、分け隔てなく接する唯一の人物がいた。


 クラス委員長の霞見タスク。

 人当たりが良く、非の打ち所がない。

 だがそれだけで。

 没個性の真面目な生徒でしかなかった。周りの人間にとっては。


「今日は間に合ったね、ちゃんと起きれたんだ?」


 いつも遅刻スレスレのロウギに、タスクは物怖じする事なく話しかける。

 誰とでもする世間話のように。


「……うるせえ」


 ロウギには、このクラス委員長は八方美人の良い子ちゃんにしか見えていない。

 

 クラスの誰も、俺を恐れて目も合わせないのに。こいつは違う。

 まるで俺が「どこにでもいる、ただの生徒」であるかのように接してくる。


 気味が悪い。




 ◇ ◇ ◇




「ああ、いたいた! 蔵院くん!」


 昼休み、ロウギが人目を避けて校舎裏で休んでいると、タスクがやって来た。

 どうやったらこんな所を探し当てられるんだ、とロウギはその執念に驚いた。


「はあはあ、もう。探したよお」


 真面目な性格だから、学校中を走り回ったのだろう。タスクの額には汗が滲んでいた。

 それがやけに眩しくて、ロウギは校舎裏の日陰にいる自分との「違い」を思い知る。


 やっぱりこいつは、俺とは違う。


 そう思ったら、目の前の姿に意味もなく苛々した。

 だがそれを知る由もないタスクは、息を整えながら早口でまくしたてる。


「蔵院くん、キミは今日日直だって何度言えばわかるの!? 午前中は全然仕事してくれなかったでしょ。せめて午後からはちゃんとやってよ、日誌も書くんだよ!」


「……チッ、めんどくせえ」


 舌打ちしながらロウギが言うと、走って紅潮した頬をさらに染めて、タスクは迫ってきた。


「めんどくさいのはわかるよ、でもね、みんな順番にやってるんだよ! 今日は蔵院くんの番なの!」


 キンキン響く高い声。ロウギの苛立ちはますます酷くなっていた。

 大きな瞳、白い肌が桃色に染まっていて。滲む汗の、その匂いにクラクラする。


「蔵院くん、クラスの活動にはちゃんと参加して欲しいよ! でないと——」


 オマエハモットキラワレル


 記憶の底に沈めた幻聴が蘇りそうになる。

 嫌だ、聞きたくない。


「……言うなっ」


 ロウギは咄嗟にタスクの襟元を掴んでいた。

 その言葉を言わさないためには、その唇を塞ぐしかない。


 己の、唇で。


「——んうっ」


 小さな口だった。

 驚きに震えている。


 しかし、もっと驚いていたのはキスしたロウギの方だった。

 何故、こうなった。迫ってくる口を塞ぎたかっただけなのに。


「……ッ」


 キスしたのはほんの一瞬で、ロウギはすぐにタスクを手放した。


「ふえ……っ」


 タスクは驚愕と戸惑いで瞳を震わせ、その場にへたり込んでしまった。

 羞恥に怯む、その姿をロウギは見下ろした。


 急速に落ちてくる罪悪感。

 いじめられた子どもを見ているような。


「……クソッ」


 いたたまれなくて、ロウギはその場から逃げ出した。

 遠ざかるタスクの姿を振り返る事は出来なかった。

 彼が今、何を考えているのか。考えたくなかったから。




 ◇ ◇ ◇




 次の日、ロウギは学校に来たくはなかった。

 だけど、家にはもっといたくない。仕方ない、登校するしかない。


 教室に入ると、すぐにタスクと目が合った。


「あ、おは、よ……」


 遠慮がちな瞳が揺れている。

 辿々しく震える唇に目が行って、昨日の事を思い出す。


「……ッ」


 ロウギは何も言えず、ぷいとそっぽを向いてしまった。

 そのままタスクを無視して席に着く。


「あ……」


 タスクはそれでもロウギの方を見ていた。

 傷ついたような表情で、佇んでいる。


「チッ……」


 ここは教室。周りに人がたくさんいる場所で、昨日を掘り返す訳にはいかない。

 そう自分に言い聞かせて、ロウギは視線を窓辺に張り付かせた。




 午前中の授業中、ロウギは常にタスクからの視線を浴びていた。

 チラチラと気にされている。居心地が悪すぎる。


 だが、タスクがそうするのは、昨日ロウギが彼にキスをしてしまったから。

 脈絡がない……などを飛び越えた所業を、どう取り繕おう。ロウギは最初そればかり考えていた。


 昨日のタスクの叱責から、過去が突然舞い戻って。

 それで混乱したせいだ。


 だが、その過去を言うことは出来ない。言いたくもない。

 そんな思考になっているからか、今日も過去の感覚が思い起こされる。


 特に、タスクの視線から……


 俺を助けようとして、助けられなかった。助けてくれなかった、あの弱々しい視線が。




 昼休みを告げるチャイムで我に返る。

 ロウギは過去を振り払おうとかぶりを振った。


 落ち着け。

 今はもう、俺はあの時の俺じゃない。


 誰にも頼らない、誰も寄せつけない、孤独な狼であろうとしてるじゃないか。

 昨日の件は俺の気の迷い。非は俺にある。その決着は自身でつけなければ。


「おい」


「……ふいっ?」


 弁当を広げる気配もないタスクに、ロウギは意を決して声をかけた。


「ちょっと来い」


「うん……」


 それだけでタスクはロウギについてきた。

 廊下を歩き、階段を登って、生徒の喧騒からは段々と遠ざかる。

 それでもタスクはロウギの背中を追い続けていた。


 最上階に到達し、屋上へと続く扉を開ける。

 ここの錠前は随分前からバカになっていて、少しのコツで容易に開く。


「だ、ダメだよ! 屋上なんて出たら!」


 さすがにタスクはロウギを制止した。

 だが、ロウギは構わずにタスクの腕を引いて屋上へと進む。


「誰も来ねえからいいんだろ!」


「ああっ」


 その小柄な体を乱暴に引っ張って、ロウギは屋上へ出て扉を閉めた。

 強い風が吹く。タスクは少し身を震わせた。

 寒さからなのか、それとも怖さからなのかは、ロウギにはどうでも良かった。


「……」


 強引に連れて来られたので、タスクは俯きながらロウギを上目遣いで見ていた。

 少し睨んでいるようにも思えたが、震えるウサギのようで怖くもなんともない。


「昨日は……悪かった」


 怖くはないが、目を合わせることは出来ない。

 ロウギはそっぽを向いたまま、ボソリとタスクに謝った。


「……」


 タスクは目をまるくして、少し口を開けて棒立ちになっている。

 言われた言葉の意味がわからない、といった表情だった。



 

 なんでそんな顔してんだ。

 謝るだろ、普通。俺は変な事は言ってない。

 

 そう言いたかったロウギだったが、タスクがあまりに放心しているので、うまく言葉が出てこなかった。

 何か傷つけたのだろうか。そんな焦りで言い訳がましい台詞が口から出て行く。


「なんか、その……つい、っていうか、成り行きっていうか……」


 キスした理由は言えない。

 というか、何故キスまでしたのかはロウギにもよくわかっていない。


「成り行き……?」


 タスクが呟いたその声は、儚く、悲しみを帯びていた。


「!」


 泣きそうな、その顔に、ロウギの胸がぎゅうと締め付けられる。

 口喧しいと思っていた「良い子の委員長」が、その枠を飛び出して違う存在になったような感覚だった。


「——もういいっ!」


 タスクは俯いたまま、入ってきた扉へ向かう。

 ロウギを横切るその時、思わず腕を取っていた。


「待てよ」


 何故、止めたのだろう。

 理由はわからないが、このまま帰したくないと思ってしまった。


「離して!」


 すぐ側で。

 体温も、吐息も感じられる距離。

 抱き潰す事も可能なくらいに、近い。


「離せえ……っ!」


 そんな事を言われて、離せると思うか?


「離すかよ……ッ」



 

 それは、衝動だった。

 腕の中の、小さな生き物を。

 自分の物にしたいと思ってしまった。


「ん……っ!」


 ロウギは暴れるタスクをフェンスに押しつけて、そのまま強引に唇を奪った。


 欲しい。

 全て、俺のものにしたい。


 そんな衝動で、ロウギはタスクの唇を貪り続けた。


「あ……」


 ふと、我に返る。

 タスクの体から力が抜けたからだ。


「ふあ……」


 タスクの思考は限界を超えてしまっていた。

 ロウギの腕の中で、全てを手放そうとしている。


「おい、委員長!?」


「ふえええ……」


「霞見ィ!」


 屋上の空。抜けるような青を見上げながら、タスクは気を失ってしまっていた。

 ロウギはこの小さな生き物と、古い因果がある事にまだ気がついていない。




 タスクもまた、想い出の中で後悔している事を。




ーーーーー ロウギとタスクってどんな二人? ーーーーー




挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
お互い無自覚で好きあってますねー。 自分の気持にいつ気が付くんでしょうか。 気がついたらキスも簡単に出来なくなったりしてw タスク、ロウギを幸せにしてやってくれー。
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