DKBL001 冷徹委員長×ガキ大将 「放課後の檻」
お久しぶりです、城山です。
前回からだいぶ開いてしまいまして、申し訳ありません。
今までの妄想カップルを一回短編にしてみるよ計画、第一弾です。
次のカップルも鋭意作成中なので、またどうぞよろしくお願いします!
【攻め】冷徹委員長 蔵院 ホクト
【受け】ガキ大将 大山 シモン
☆放課後の補習が、いつしか別の意味を持つ……
目障りなサルがいる。
遅刻は常習。休み時間は騒ぎまくる。本当に高校生なのかと疑うほどに。
大山シモン。
クラス一番の問題児であり、クラス委員長である蔵院ホクトが目障りな存在だった。
その自由奔放な行動よりも、チョロチョロと小柄な体をフルに使って走り回る様子が燗に触る。
ホクトは休み時間は静かに過ごしたいのに、ドタバタと埃を撒き散らしてキャッキャと笑う声に苛々する。
あいつはサルだ。ホクトはシモンの事をそう位置付けた。
自分とは全く住む世界が違う存在だと思えば、気にならなくなるのではないかと思ったのだ。
「アッハハ! オマエ、それはワリィだろお〜!」
甲高い声でシモンが笑っても。
あいつはサルだから。
「ええー、いいなあ。放課後、オレも連れてけよ!」
舎弟に囲まれて楽しそうにしている。悩みなんてないのだろう。
だってあいつはお山のボス猿だから。
「楽しみだなあ、ボーリング! ストライク緩和キャンペーン!」
勝手にやってろ。ホクトはこの時まで、シモンの全てに関わりたくもなかった。
だが。
バシン!
ホクトの後頭部に何か当たった。痛い。
軽いものが床に落ちた音がした。視線を落とす。
脱げた上履き。名前「大山」。
シモンははしゃぎ過ぎた。迂闊にも上履きをホクトの後頭部にストライクしてしまった。
「やっべえ……」
小声でサルが何か言ってる。
ホクトはついに堪忍袋の緒が切れて、上履きを握りしめながら、そのサルに近づいた。
「な、なんだよ……」
「……」
「わ、悪かったよ! 痛かった?」
「……補習だ」
何故、そんな言葉を言ったのか。ホクトにもよくわからなかった。
ただシモンの、楽しそうな予定が詰まった放課後を奪いたくなった。
「お前は今日も遅刻した。放課後居残れ。補習を受けろ」
その言葉で、シモンは汗をかき慌て始める。
「バ、バッカじゃねえの!? お前、センコーに聞かずにそんな事出来るわけないだろっ!」
教師を「センコー」ときた。前時代の不良か、お前は。
ホクトはそんなシモンのアホさ加減に少し呆れながら、薄く笑う。
「先生の手を煩わせるまでもない。俺が責任もってきっちりお前に補習する」
するとシモンはますます顔を興奮で赤くして反論した。
「もっとバカじゃねえの!? お前になんの権限があるって言うんだよ!」
「権限ならある」
「ハア!?」
キャーキャー喚くサルは、この時上位の存在がいる事を思い知った。
「……俺はクラス委員長だからな」
成績優秀、品行方正。全ての生徒の見本になり得る存在。
来年度の生徒会長の座は間違いない、と噂される男。それが蔵院ホクト。
当然教師の覚えもめでたく、ホクトが動けば大抵の教師はうんと頷く。
「うひいぃ……」
冷徹な眼鏡の奥に、絶対零度の視線がある。身長などの体格でも敵わない。
サルは本能でそれを感じ取った。
クラス委員長が、ついに問題児を手中に収めた瞬間であった。
そしてホクトの心中で、今まで知らなかった感情が芽生える。
自分を見て震え上がるシモンの顔に、ゾクゾクした。
放課後、皆が帰った教室。
取り残されたのは問題児・大山シモンと、それを監督するクラス委員長・蔵院ホクト。
ホクトが用意したのは数学の問題集。簡単な最初の方でも解けないだろうと思った。
それは想像通りだった。
「こんなのもわからないのか、バカ猿が」
数学の時間なんてほぼ居眠りしているのをホクトは知っている。
だが、あえてバカにしてやった。
「サルサル言うんじゃねえ!」
シモンの怒りに触れたのは、ホクトの想像通りではなかった。
少し笑いそうになる。堪えながら冷たく言ってやった。
「……バカは否定しないんだな」
「あっ、バカも言うんじゃねえ!」
本当にこいつはバカだ。
頭の悪い会話をしてしまった、とホクトは堪えていた笑みが思わず漏れた。
「仕方ない、教えてやる。俺も早く帰りたいからな」
「お、おう……」
自分で補習を無理矢理セッティングしたくせに。
微かに笑った顔をシモンは見逃さなかった。そんな顔もするんだ、となんだかくすぐったい感覚が芽生える。
厳しくて仏頂面の委員長に、違う一面があった事にドキっとした。
◇ ◇ ◇
補習二日目。机を向かい合わせて座る。
今日もホクトはシモンに放課後の補習をやらせていた。
何故こんな事を、と自分でも思う。自分のためには全くならない無駄な補習。
だけど、時折感じる、シモンを支配したい感情が、ホクトの理性を侵食し始めていた。
同級生の、チビでバカな奴に何故そこまで。
ホクトは自分の中に芽生えつつある感情に戸惑いながら、数学の問題集に悪戦苦闘しているシモンの手元を眺めていた。
小さい手。自分よりも一回りも。
この手を俺の中にしまったら、こいつはどうするんだろう。
そんな事を考えていたら、ホクトは無意識にシモンの手をガシっと握っていた。
「うきゃあ! な、なんじゃあ!?」
またサルみたいな声を出す。
ホクトは迂闊にも、少し愉しくなってしまった。
「お前、手が小さいな」
シモンは嫌がっているがその頬は赤くなっていた。
「はっ、放せよ……おっ!」
シモンの赤らめた顔。ホクトの理性が飛ぶ。
可愛いと思った? いや、違う。
——支配したいと思った。
次の瞬間、ホクトは握った小さな手にかぶりついていた。
理性とは関係ない、反射的に。
「ぎゃああ! ナニしやがる、ヘンタイぃい!」
「あ、すまん。まんじゅうみたいだったから、つい」
「誰の手がもみじまんじゅうだぁあ!」
ますます真っ赤になって怒る。不思議な感性とともに。
シモンの思考の中を、もっと知りたいとホクトは思った。
補習三日目。今日も机を向かい合わせ。
素直に居残ったシモンは、少し照れながら机の上に紅葉饅頭を置いた。
「ほらよ」
「なんだ、これは」
「す、好きかと思って」
その答えに、ホクトは絶句した。
こいつ、俺が昨日手に噛みついた事をそう解釈したのか。
本当にバカだ。バカなガキザル。
嘲笑じみた笑いが込み上げるホクトに、シモンはその笑みの意味もわからずに言う。
「毎回、付き合わせてわりいから……」
補習をやらせているのは俺なのに。そんな事も忘れてしまったのか。
バカさ加減に呆れてしまう。俺以外に騙されるなよ、とも思った。
それから、シモンからの意外な言葉に刺された。
「お前が教えてくれる数学は悪くねえ……」
「……ッ」
ホクトはシモンの隣に座る。反射的に。
これまでは向かい合わせに座っていたのに。
急に椅子を移動させて隣に座ってきたホクトに、シモンは大袈裟に狼狽えた。
「な、なんだよ!?」
「この方が教えやすい」
シモンがあまりに慌てるので、ホクトは愉しくなってしまった。その腰を抱き寄せる。細い小さい体に、ゾクゾクした。
「ひうぅ……っ!」
なんだその声は。高くて弱々しい。
初めて聞いた。
俺が初めて鳴かせた声か。
「サルのくせに……」
腰を抱き寄せたまま、ホクトは真っ赤に染まるシモンの頬にかぶりついた。
「ふあっ」
小さな体がビクッと震える。
ホクトの心も震えていた。
「まんじゅうより、甘い……」
「あ、ああ……」
ホクトはシモンの顔を舐めまわした。
舌を這わす度に甘い吐息を漏らすから、その行為はエスカレートしていく。
「生意気だ……」
ついにその唇を奪う。
小さくて、熱い、それから柔らかい唇だった。
「んう……」
シモンの吐息が甘い。
無意識に掴んでくる手が小さくて。
「まんじゅうめ……」
もう補習なんてどうでもいい。
放課後という檻に閉じ込めたい。
ーーーーー ホクトとシモンってどんな二人? ーーーーー




