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【エッセイ】BLカテゴリが出来るまで続くシチュ妄想フリートーク  作者: 城山リツ
今までの妄想カップルを一回短編にしてみる章
32/34

DKBL003 一軍パリピ×夢追いモブ 「モノクロ世界にカラーインクが落ちてきた」

挿絵(By みてみん)



【攻め】一軍パリピ 赤城(あかぎ) テル

【受け】夢追いモブ 一色(いっしき) ケイト

☆お前だけフルカラーに見える……




 一軍男子だ、モテ男だ、そんなのはただの称号で。

 オレの外側だけしか見ないヤツらばかり。

 だから、オレも外側しか見ない。


 結局、見える世界は白黒の、味気ないものだ。

 



 テルは今日も出待ちの女子達と、それに群がる学校の男子どもと街を歩いていた。

 毎日同じ街、行く店も同じ。飽き飽きしているが、他に選択肢もない。

 次第にテルの視界は色を失っていった。日常への興味とともに。


 どうでもいい会話。

 どうでもいい空気。

 いいかげんに愛想笑いも疲れてしまった。

 だけど、これを失ったらオレに何が残る?


 得体の知れない恐怖を感じて、思わず近くに視線を戻す。

 そんなテルの目に飛び込んできたのは、総天然色の一区画だった。


 ただのベーカリー。毎日通り過ぎていたが、どんな店かは覚えていない。

 ショウウインドウ越しに中が見えた。そこに知っているような人物がいた。


「……」


 ただのパン屋だ。

 そう思ったけれど、彼だけが何故かフルカラーに見えて。

 隣を歩く女子に腕を引かれたけれど、テルはベーカリーを通り過ぎても、その姿を目で追っていた。




 ◇ ◇ ◇




 今日も平和な朝。

 ケイトは、新しいノートの表紙を書いていた。レシピノートにしよう。

 学校でしか出来ない作業に胸を躍らせる。


 夢中でペンを走らせていると、ドカッと大きな音を立てて、誰かが前の席に座ってきた。


「……赤城(あかぎ)、君?」


 顔を上げてケイトは驚く。

 目の前にいるのはクラスメイトの赤城テル。


 誰よりもモテて、誰よりも人気がある、クラスの頂点にいる人物。

 最下層モブの自分とは何もかもが違う。話した事さえなかった。


 その一軍男子が、ケイトの目の前に座り、不躾にしげしげと顔を近づけてくる。

 何かを確認しているような目線に、ケイトはにわかに緊張した。


「な、何……?」


 何か嫌われるような事をした覚えはない。

 だからとても不思議で不気味だった。顔が綺麗だから、余計にそう思う。


「やっぱ、昨日のパン屋、お前だよな」


「……っ!」


 その一言で、ケイトの目の前は暗くなる。

 早速バレた。初日だったのに。そんな感情がグルグルと渦巻いた。


「何してたん? バイト?」


「あ、あの……」


 学校の規則でアルバイトは禁止されている。

 しかし、それ以上に知られたくない事情がケイトにはあった。


「お、お願い……」


 消え入りそうな声でケイトはようやく言う。

 目の前のテルは、その小声を聞こうとさらに顔を近づけた。


「誰にも、言わないで……!」


 手が震える。

 油断したら泣き出してしまいそう。


 ケイトはぐちゃぐちゃの感情を懸命に抑えて彼に懇願した。



 

「ふうん……」


 テルにして見れば、小犬のように震えているケイトの心情はよくわからなかった。

 確かにアルバイトは禁止だが、内緒でやっている者はたくさんいる。

 笑って「黙っててよ」と言われれば、それで終わりにするつもりだった。


 だが、目の前のよく知らないクラスメイト——一色(いっしき)ケイトは、深刻な顔をして、まるでいじめられたように暗い顔で絶望している。

 何が彼をそんなに追い詰めているのか。

 少しの悪戯心が湧いてきた。

 それから、意外と可愛くて興味も出た。


「……いいよ」


 テルにはニヤけながら答える。


「ほんと!?」


 すると、ケイトは顔を上げて仏様に助けを求めるような顔つきだった。


 あ、かわいい。

 やっぱり、もうちょっといじりたい。


 教室の景色もテルにとってはモノクローム。

 だけど、ケイトの周りにだけ虹がかかったように見えた。

 昨日、通りがかったベーカリーで感じたものと同じ。


「その代わり、パン食べ放題な!」


「……えっ?」


 テルの放課後。

 新しい用事が出来た。




 ◇ ◇ ◇




「パン屋さんになりたいて……小学生女児か」


 放課後、連れ立って歩きながら笑ってしまった。

 テルは出待ちの女子や学校の悪友達を全て振って、ケイトとベーカリーへ向かっている。


「そ、そんな事ないでしょ。子どもの頃にみる夢と一緒じゃないよ」


 少し口を尖らせて言うケイト。

 その仕草はやはり可愛らしくて、テルはますますいじりたくなる。


「で、都合よく叔父さんがパン屋をやってるから、修行をしてると」


「都合よく、って言うか、叔父さんがベーカリーやってるから、ぼくもそうなりたいって思ったんだ」


「なるほど、そーゆー順番ね」


 他愛のない会話。だけど、なんだか楽しい。

 ミーハーな女子と、おこぼれに預かりたい悪友達とする会話とは比べものにならない。

 テルは不思議と胸が躍っていた。初めて「友達」とお喋りをしたような気がする。


「てか、親戚の家業手伝いならバイトじゃなくね? もっと堂々とすりゃいいのに」


 テルがそう聞くと、ケイトはにわかに表情を曇らせた。


「……実は、親には内緒にしたくて」


「え、なんで?」


 叔父の家に出入りするのに、親に秘密でなんて普通はいられない。

 秘密にする意味もわからなかった。テルは深く考えもせずに聞き返す。

 すると、ケイトは再び泣きそうな顔になって、絞り出すような声を出す。


「……叔父さんはお母さんの弟なんだけど、二人、仲がすっごく悪くて」


「お、おう……」


 子どもに影響するほどの不仲とはどんなものなんだろうか。

 親戚と呼べる存在がいないテルにはよくわからなかった。


「もう、ほんとに仲が悪くて。むしろ憎しみ合ってて」


「そ、そうか……」


 これ以上は聞いてはいけない気がする。プライベート過ぎる話題だ。

 この先を説明させたら、ケイトは泣き出してしまうかもしれない。そんな顔をしていた。


「だから、ぼくが叔父さんちに行ってる事は誰にもバレちゃいけないんだ」


「ふうん」


「ましてやぼくが叔父さんちの跡を継いでパン屋になりたいなんて……絶対に言えない」


「……絶対言えないこと、なんですんの?」


 頑なに肩を震わせるケイトの決意はなんだか悲壮で。

 そこまでの事をどうしてわざわざ選ぶのか。テルには不思議だった。


 だからついなんとなく聞いてしまった。聞いてから少し後悔する。

 ケイト自身を否定する言葉だったかもしれない。だが、ケイトはこちらを見上げて目を丸くしていた。


「それでもパン屋さんになりたいからだよ」



 

 真っ直ぐな瞳だった。

 彼には確固たる決意と夢がある。テルには全く持ち得ないもの。


 眩しい。そう思った。

 少し悔しくて意地悪を言ってみる。


「百歩譲って、パン屋には叔父さん抜きでなればいいんでない?」


 すると、ケイトはますます目を丸くした。

 そんなのはあり得ない、とでも言うように。


「ぼくは、叔父さんの作るパンが好きなんだ!」



 

 あまりにも真っ直ぐで。誰にも侵せない領域をケイトは持っている。

 そこまでの在り方が羨ましい。


「……お前、頑固なんだな」


「そうかな?」


 そして、やはり眩しい。

 彼が、彼だけがフルカラーに見えた理由がわかった気がした。




 ◇ ◇ ◇




 テルがケイトの叔父のベーカリーに入り浸るようになって一週間が過ぎた。

 二人は放課後連れ立ってベーカリーへ行く。

 ケイトは店員としてレジ係を、テルはそれをイートインコーナーで眺めている。

 とても美味しいパンを食べながら。


 ケイトが頑固になるだけあって、パンは絶品だった。

 これは確かに修行したくなる。

 だが、ケイトは今のところただのレジ係。パンの修行はいつするのだろう。


「赤城君、聞いて聞いて!」


 ある日の昼休み、珍しくケイトが声をかけてきた。

 教室内では属するグループが違い過ぎて、二人が話す機会はほぼない。


「お、なんだなんだ」


 いつもは遠慮して遠巻きに見ているのに、ケイトがこちらにやってきた。

 テルは嬉しくなってケイトの肩を抱き、駄弁りグループから脱する。

 彼らはその様子に唖然としているけれど、知った事ではない。


「なんかあったんか?」


 明らかに嬉しそうなケイトの顔。

 悪友達に見せるには勿体無い。

 テルはケイトを隠すように教室の隅に連れて行き、続きを尋ねた。


「あのね、あのね、耳貸して」


「ええー?」


 高校生にもなって内緒話だなんて。よっぽど嬉しい事があったに違いない。

 テルは言われるままに、右耳をケイトに近づける。


 吐息がかかって、少し胸がときめいた。

 そんなテルの気持ちに気づかないケイトは、はしゃぎたいのを抑えながら報告する。


「今日から、パン作りの基礎を叔父さんが教えてくれるって!」


「おっ、マジか!」


 待望の修行の始まりだ。テルにもワクワクが伝染する。




「ぼくがパン作れたら、赤城君食べてね!」


 喜びに溢れて笑う顔。

 総天然色のインクが、モノクロだった胸に滲んでいく。




 やばい、好きかも。




 恋心が、滲んで広がりそうな感覚だった。




ーーーーー テルとケイトってどんな二人? ーーーーー




挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
ケイトが眩しすぎる~。 嬉しそうに内緒話を自分(テル)だけにしてくれるなんて、そりゃあ惚れますわ。
ここで終わりですか?! 続きはどこで読めますか????笑
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