18/19
第十八章『未観測者』
病院の廊下。
時間の感覚が、消えていた。
「一つだけ、方法があります」
椎名の声。
顔を上げる。
「……まだあるのか」
「はい」
一拍。
「あなたが、“観測されない存在”になることです」
意味がわからない。
「他者からも、記録からも」
「一切、認識されない状態」
「そんなことが……」
「理論上は可能です」
静かな声。
「あなたが観測されなければ」
「あなたの観測も、無効になる」
息が止まる。
つまり。
俺が見た未来ごと。
無かったことにできる。
「……代償は」
聞かなくてもわかる。
「消えます」
一言。
「あなたという存在が」
娘か。
自分か。
選択は、あまりにも明確だった。




