第十六章『娘の死体』
それは、いつもと同じように届いた。
無機質な箱。
番号。
管理された未来。
だが。
その箱を見た瞬間、理解してしまった。
開けてはいけない。
理由はない。
だが、確信だけがあった。
「……相沢さん」
背後で、椎名の声。
「それは」
続きを言わない。
言えないのか、言わないのか。
どちらでもいい。
手が、震えていた。
ここまで来て。
何度も見てきたはずなのに。
なぜか、開けることができない。
視界の端で、ラベルが揺れる。
名前。
そこに書かれている文字を。
まだ、見ていない。
見なければ、確定しない。
それが、この世界のルール。
だが。
知ってしまっている。
“これが何か”。
「……違う」
自分に言い聞かせる。
まだ、決まっていない。
まだ、間に合う。
箱に手を伸ばす。
止める。
伸ばす。
止める。
「……見ない」
ようやく、言葉にする。
その瞬間。
箱の中から。
音がした。
カタン、と。
息が止まる。
「……今の」
椎名が、わずかに目を見開く。
ありえない。
これは、“三日後の死体”のはずだ。
なのに。
中に、“何かがいる”。**
理性が崩れる。
反射的に、箱を開けた。
そこにあったのは。
まだ温かい、
娘の体だった。
「――――」
声が出ない。
目が合う。
わずかに、動く。
「……お父、さん」
かすれた声。
その瞬間。
全てが、確定した。




