Sulo, Zeta, Ezel, and Mimili とある大学生たち
本編に未登場の、マルティバースのラボ・チャイルドたちのお話です。
本編26話( http://ncode.syosetu.com/n3613cc/27/ )あたりの裏側。
ナシア・スウロは付属大学の二年生になったばかりだ。
この大学の正式名称は、航空宇宙開発研究所付属大学という。
スウロはこの研究所にどっぷりと浸かって育った一人だ。研究者の親を持ち、学習室と呼ばれる研究所内の学校に行き、付属の高校に進学し、ほぼエスカレーター式にこの大学に入学した。
エリートコースを歩んでいるようだが、実際はスウロに選択肢がほぼないだけ。
そしてそれに関連する悪い知らせが、同大学に通う年上の幼馴染よりもたらされた。
「おー、いたいた。相変わらず暗いな、ダサいな!」
講義が終わって出ていこうとしていたら、捕まった。
口は悪いが、女性である。名を、ミミリ・アナという。
「・・・なに」
「ちょっくら話があんのよ。馬鹿とヘタレも揃ったら話すねー」
「・・・先に話してくれないか。馬鹿と話したくない」
「ごっめん、むっりっ!あたしも嫌だし、付き合って」
仕方なくミミリについていく。たどり着いたのは、図書館の中にある会議室だった。学生たちがディスカッションするとき、周囲に迷惑がかからないよう防音してある。会議室と言っても大小さまざまで、ミミリが予約していたのは三、四人用の小さなものである。
傍の自動販売機で黒豆茶と発酵茶をそれぞれ買って、飲みながら待つ。
間もなく、馬鹿とヘタレ――もとい、エゼル・トゥアーとゼータ・オンネスが連れ立ってやって来た。
「どしたのー。根暗っちまで集めちゃってー」
いかにも頭が軽そうな男が、エゼル。
「改めて集められると、嫌な予感しかしないんだが」
一重の細い目が特徴の男はゼータで、今は落ち着きがあるように見える。実態はヘタレだ。
ミミリは集まった面々をぐるりと見回すと、ため息をついた。
「なぁんでこの面々が残ってるのかなぁ」
「おい、さっさと本題に入れよ」
ゼータが不機嫌に言う。
「いやぁ、実はねぇ・・・あー・・・誰かサンジュとマヌーの居場所知らない?」
言いよどんだ末に、ミミリはこれまた幼馴染の名を出した。
今名の挙がった二人は既に成人し、大学からも去っている。
「知らん」
「俺もしらなーい」
「・・・さあ」
その二人は、縁ある幼馴染たちのなかでも「生死不明」と名高いのだ。滅多と連絡を寄越さない。
「どうかしたのか?」
「・・・ニアスから連絡があったんだけど、メイが拉致されたんだって」
スウロはむせた。
ゼータは眉間にしわを寄せる。エゼルも表情を硬くした。
「それ、どういう理由で」
「みんなわかってるだろーけど、テロ組織に拉致。でも無事。自力で脱出したって。・・・でも、あたしらの名前が、ばれたかもしれないって」
メイことメイリーフは、中央世界の一国イジェにいた。年齢はスウロと一緒。学習室から高校まで一緒だったが、大学入学前に姿を消した。
幼馴染とはいえ、正直苦手な相手なので、どうでもいい。
問題は、メイリーフの身に起こった危機が、スウロたちにも起こり得るということだ。
「・・・・・・ヨハンとセイファは?」
ゼータが訊ねた。
ヨハンとセイファは、同じく学習室からの幼馴染だったが、自らの意思で違う道を選んでいる。
「セイファはラウドさんとこにお世話になってるから平気みたい。ヨハンのほうは、ニアスがどうにかするよ」
スウロは他人の心配をする余裕などない。もとが小心者だから、不安で気分が悪くなる。
わざわざ幼馴染の安否を訊ねたゼータはと言えば、こちらも小心者のヘタレだから、唇の端が青くなっている。
「メイリーは無事だったんだろー?いいじゃん」
他人のことをとことん他人としてしか考えられないエゼルは、危機感が薄いらしい。彼の声音には、顔色を変えたゼータとスウロのことをばかにするような響きすらある。
ミミリは深いため息をついた。
「なぁんでこの面々が残ってるのかなぁ」
「るせー、こっちのセリフだよ」
余裕のない声でゼータが答えた。
オチはないです。




