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「爆弾は、美術館テロに使われたものとよく似た成分が検出されています。ああ、それからアジトにあったコンピューターのデータ復旧が完了しました。中身の解析はそれほど出来ていませんが、彼らの背後にいるテロ組織は〈ガラテア〉ではないかと思われます」
システム研究所ウルダン基地の、とある棟の廊下。部下からの報告を、ラウドは苦い表情で聞いている。
「〈ガラテア〉か。なんの捻りもない結果のようだが、しかし・・・・・・」
〈ガラテア〉と名乗るテロ組織は、主にイスヴィラやナナイ、ガリアスなど西世界を中心に活動している。研究所に対して行動を起こすテロリストたちは、基地のある地域ごとでまとまっており、横のつながりが薄いとも言われている。
「ひっかかるな・・・」
「はい。それとさっき、生き残りの意識が戻ったと連絡がありました。すでに警備隊の者に聴取をさせています。痛い目に遭ったせいか、素直に喋っているそうですよ」
「そうか。――気になるな。知っているとは思えんが、俺も行こう」
「わかりました」
サラ・サフラテス準研究員が、エアノストラ総合芸術大学のキャンパス内でテロリストたちに拉致されたかけたという連絡があったのは、約五時間前だった。
彼女は機転を利かせてテロリストを追い払い、彼らの顔の画像、そして彼らが所持する端末の識別コードを入手して、すぐさま研究所へとデータを送ってきた。
連絡を受けた管理維持室長エリーティアの判断は実にすばやかった。ラウドの許可を求めるよりも先に特殊警備隊を出動させたのだ。ラウドへ連絡を寄越しながら、システム研究室へ連絡して識別コード解析と、現在地の割り出しを指示。その結果を手に、特殊警備隊はすぐさま犯人を追った。
犯人たちのアジトを突き止めたところで、事態は急展開した。
アジトが、爆破されたのだ。旧市街のはずれにあった倉庫は、ばらばらに吹き飛んだ。
証拠を消されたと、誰もが思った。やはり、悪事に不慣れなテロリストたちの背後には、大きなテロ組織がある、と。
特殊警備隊員は危険も顧みず火の海へと飛び込み、証人となるテロリストたちを探したが、たった一人しか生き残らなかった。
それが、先ほど部下が報告した「意識を取り戻した生き残り」である。
生き残ったテロリストが治療を受けているのは、研究所の奥深くである。ラウドが室内に入ると、警備隊員の詰問と生き残りのぼそぼそという回答が聞こえてきた。
「だから・・・おれたち、しらないんだ。上から、・・・マキ・セイファを・・・捕まえて来いって。ぜったい、殺すなって・・・・・・でも、ちょっと怪我するくらいなら、・・・かまわないって」
ベッドに横たわった生き残りの声は苦しげだ。しかし彼の他は全滅したことを考えると、あの程度で済んだのは奇跡的である。
「ではなぜサフラテスを狙った」
「サフラテスって、眼鏡の女の事?・・・・・・だって、あいつ、しばらくマキと、一緒に・・・いたから・・・、仲間だと思って」
「しかし、上からはマキを拉致しろという命令だったんだろう」
「・・・・・・仲間の一人が・・・女のほうが、捕まえやすいって、・・・ちょっと脅せば、抵抗もしないだろって・・・もし役に立たないにしても・・・マキを脅す、材料に・・・なる・・・て」
ラウドはため息をついた。傍らの部下も同じく、だ。
サラ・サフラテスは仮にも特殊警備隊に配属されたのだ。先端技術が詰まった防具だって支給されているし、戦闘訓練だって受けている。その辺の男がどうにかできるわけがない。セイファの方がよほど安易な獲物である。
聴取をしていた警備隊員がラウドに気づき、目礼した。その顔には「こいつからの情報はこれ以上期待できない」と書いてある。ラウドはうなずきを返して、部屋を出た。
予感はあったが、やはり無駄足だった。
「マキ・セイファを狙え、か。メイリーフのことをあわせて考えると、あの面々全員の名前が流出したと見て間違いないだろう」
メイリーフはセイファたちと同時期の、黎逢シュシン基地のもとラボ・チャイルド。最近、テロ組織〈創世の蒼〉に拉致され、自力脱出した後にカダロイ基地に保護を求めている。
「でしょうね。流出経路を洗わないと。――ああそうだ、メイリーフですが、身柄をウルダンで預かって欲しいとカダロイから連絡がありました。どうしますか」
「本部のほうがいいんじゃないのか」
「メイリーフが拒否したそうです」
「あんの、わがままめ。――カダロイは周囲が落ち着かんから、仕方がない。受け入れるよう回答しておけ」
「了解です」
次の仕事現場へと向かう歩みは緩めぬまま、ラウドは顎に手を当ててうなった。
「しかし、メイリーフ拉致は〈創世の蒼〉、今回は〈ガラテア〉か・・・横のつながりが出来たとすれば、面倒だな」
「ええ、調べなければなりません」
二つのテロ組織は比較的古く、規模が大きいという共通点があるものの、活動する地域や集まった人種、思想は随分違う。テロ組織同士で考え方が合わず、過去には小さな衝突があった。だが、彼らが手を組んだとなれば厄介だ。
「それから、セイファの保護なんですが」
「ああ、こっちに来るよう伝えてくれ」
「こちらから護衛を派遣しなくてよろしいのですか?」
「サフラテス準研究員に任せればいい。そう伝えておけ」
「はあ・・・・・・よろしいのですか?新人ですよ?」
「いないよりマシだろう。それよりも、ガーディアンを出さねばならんところがある」
「はい?ええと、どちらでしょうか・・・」
戸惑う部下の声を聞きながら、ラウドは自分の端末からイーニアス・イーサムの名前を探し出し、発信した。




