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巻き込まれた一般人であるナターリアは、事情聴取をされ、事件について口外しないと誓約書を書かされ(ついでに自分の命と家族の命を楯に脅され)、解放された。
少しばかり知り合いと言うだけでセイファはそれに付き合わされた。
「なんで僕が・・・」
と文句を言うセイファに対外対策室の研究員はあきれ返った。
「お前はそれだから人間関係がうまくいかないんだよ」
「それだからって、意味がわかりません。僕とあいつは同じ大学ってつながりしかない。ついでに言わせてもらえば、あれはレナラストの熱狂的なファンで、思想もかなり過激。テロに関わってる可能性も高い。仲良くする理由、どこにあります?」
「その説明聞いてると、レナラストに傾倒しているからって理由だけで色眼鏡で見て遠ざけてるって印象。しっかり関わりをもったうえで人を判断することが出来ないかね」
「しっかり関わるって、意味がわかりません。深く付き合うのは信頼できる友人だけでいいでしょう」
「そーいう意味じゃあないんだがなぁ」
やれやれ、と研究員は頭を左右に振る。
「生まれ持った性格か?難儀なやつだな。――とりあえず、リハビリがてら彼を敷地の外まで送ってやって」
「・・・・・・」
「ほら、さっさと行く!」
そんな流れで、疲れた様子ながらセイファへのふざけた態度を変えないナターリアを門の外まで送っていった。
これでセイファが研究所と深い関係にあるとナターリアにばれてしまった。――ナターリアは薄々察していたようだが。
これでセイファの身に何か起きれば、ナターリアがテロリストへの内通者の可能性が高くなる。――つまり撒き餌だ。
「美術館でテロだなんて、どう思う?」
別れ際にナターリアはにやにやしながらセイファに問うた。
「最悪だ。芸術に対する冒涜だ」
「気が合うね」
「うれしくない」
「ねえ、セイファは俺のこと疑いたいみたいだけどさ。――俺は、破壊を芸術だなんて認めないよ。芸術は創造でのみ語られる。火薬を使いたいなら花火にすればいいんだ。そうだろう?」
「・・・さっさと帰れ」
「ねえ、サラは?」
「知らないよ。もう帰ったんじゃないの?」
「ショックだろうな。大丈夫かな」
「研究所がなんらかの手配をするだろ、きっと」
「あのさ、セイファ。人間は、なんか手配したからって、絶対大丈夫なんてことはない。家族とか友人が気にかけるって大事なんだ」
「少なくともお前はどうこう言えるような関係じゃないだろう」
「友達だよ」
「彼女には近づくな」
「なんで」
「訂正。どうとでもしろよ」
サラに「ナターリアに近づくな」と言えば済む話である。
セイファはナターリアに背を向けた。外部との接触を制限するための門が、二人の間で重々しく閉じる。
砲弾を打ち込まれても耐えると言われる金属の柵の向こうで、ナターリアがひとつため息をついた。そして、笑う。
「じゃ、また大学でね!」
ナターリアが研究所に背を向けるのを肩越しに見て、セイファは苛々と頭をかきむしった。
今度はサラの様子を確かめようかと思ったところに、通信が入った。同一エリア内で使える内線通信――研究所内からの連絡である。
出てみると、ラウド・ハルゲン基地局長の秘書からだった。
「局長がお呼びです」
「また愚痴でしょ。秘書が聞けばいいんですよ」
「外部の者相手のほうが気楽なんですよ。あと、うっかり機密漏らしてきみを研究所に監禁する計画もあるかもー」
「あんた一度死んでください」
「やっだわぁ、きみはシステム壊れてもいいって言えるのかい?言えないだろ?」
「・・・・・・」
「っていうのは冗談としてもだよ。きみは今新人研修の教官を引き受けてるんだろう。そして監督する新人が事件に巻き込まれた。――すべてを預かる方からお話があるのも当然だ。お行きなさいよ」
苛々が次から次へと沸いてくる。禿げるんじゃないかと一瞬心配するが、頭をかきむしるのはやめられなかった。




