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平面世界を形作る巨大なシステムは、巨大なコンピューターによって制御されている。
ウルダン基地は遠くから見ると一つの街のようになっていた。中央にはいくつものビルがそびえ、その周囲は研究者たちの居住区となる。
見た目は普通ビルとあまり変わらないが、正体はデータセンターとスーパーコンピューターである。ギガ、テラ、ペタなど日常で聞く単位をはるかに超えて、ゼタだヨタだという情報量を扱う。
この区域は厳重な警備が敷かれている。入るには許可証が必要で、関係者以外立ち入り禁止、研究員でもランクが低ければ入れないエリアもたくさんある。
サラは一応研究員なのでここの居住地域に住んでいたが、それ以外の場所には出入りしたことがなかった。
今現在、ランクBまでが許可されるエリアに来ている。
初めて足を踏み入れた基地の中心だというのに、理由はよりにもよって事情聴取だった。
自爆したテロリストの似顔絵作成、状況説明等々。非常に衝撃を受けた直後だというのに、その状況をもう一度思い出して語る。つらい作業だったが、気力だけで耐え抜いた。
ようやくそれを終えると、すぐにランクEのエリアまで追い出された。
ここへ来たときは夕刻だったが、すでに夜も更けている。
本当に自分もこの研究所の一員なのだろうかと考えてしまい、無性に泣きたくなっていた。
エリアEとエリアDを仕切る門の外で、セイファが待っていた。セイファの姿を見た瞬間に、悲鳴を上げて拒否しそうになった。幸か不幸か、悲鳴を上げる気力がなかったが。
「お疲れ様です」
「・・・・・・」
「家まで送るように言われてます」
そんなことされては余計に疲れると正直に言うのと、その労力を厭って彼と共に帰路をたどるのと、どちらがよい選択だろうかとサラは思った。だがそれは一瞬で、それ以上考えるのは面倒だった。
結局、何も言わずセイファに送られる。
何か嫌味を言ってくるかと思われたセイファは、意外にも沈黙していた。
身近でテロが起こったと言うだけでも充分にショックなのかもしれない。忘れがちだが、セイファはサラより年下なのだ。イスヴィラ市内は比較的平和だから、慣れていなくとも無理はない。
サラが住む、独り身の研究者たちのための集合住宅前までたどり着いた。
「あの、送ってくださって、ありがとうございます」
「いえ。今日は本当に・・・お疲れ様でした。応急手当、手伝っていたそうですね。とても助かったと警察のほうから感謝されましたよ」
「・・・・・・ええ」
「ゆっくり休んでください。明日は休日ってことで。では、おやすみなさい」
毎日が休日のようだったけれど、今はその言葉がありがたい。
セイファがサラに背を向ける。
そのとき、なぜこのタイミングなのかわからなかったが、唐突に緊張の糸が切れた。今まで疲労や衝撃で押し込まれていた感情が一気に噴出した。
(どうして・・・・・・!)
涙を誘発する胸の痛みが膨らんだ。
同時に、頭の中を今日見た映像が鮮明に再生されて、眩暈に襲われる。
その後思い返しても、サラはこの時のことをちゃんと思い出せなかった。ただ、思いっきり声を出して泣いたような、そんな記憶が漠然と残っていた。




