第7話
どうしてか……はシュトラール自身も分からなっていない。ただ「何となくそう思ったから」としか言えなかった。
「――当てましょうか?」
「……いや。そんな聞き方をしなくても分かっているみたいだからな」
「フフ。そうね」
「そもそも分かっているからこの話を始めた……そうだろ?」
「ええ」
「良い性格しているな。本当に」
「あら、それそっくりそのまま返すわよ?」
「……」
エデルの言葉にシュトラールは思わず吹き出しそうになったが、グッと堪えた。しかし、笑いはこみ上げて来てしまったので思わず笑ってしまったが、それはエデルも一緒な様だった。
「はぁ……ねぇ」
「ん?」
「今回のこの『野菜』の話。あなたはどう思っているの?」
涙が零れそうになる程お互い笑っていたが、エデルはそんな涙を拭いながら尋ねる。
「正直……まだ何とも言えない。ただ、そんな感じがするとだけ」
「確証がないものね」
「ああ。それに、彼女がシュタイン共和国に出入りしているといった情報も上がっていない。そうなると考えられるのは……」
「あそこで生活している……という事よね」
にわかには信じがたいがそういう事になるのだろう。
「もちろん別人に成りすましているという可能性も否定は出来ないが」
「その可能性は低そうね」
なにせ彼女が持つ黄金の瞳はそれだけでかなり目をひく。
もちろん魔法や魔法陣を使って成りすましが出来ないとは言わないが、これには時間の制限に限らず大量の魔力を消費するだけでなく、この『瞳』に関してはこの魔法の効果が出ないとされていた。
つまり「変身魔法」なるものはあっても、それが『瞳』に反映される事はないという訳だ。
そして、彼女が持つ黄金の瞳はブランド王国に限らずシュトラール共和国でもかなり珍しい。普通に考えてそうした人物がいれば何かしらの話題になっていても不思議ではなかった。
「そうなると考えられるのはあの子自身。あの魔物が多く生息する地帯で生活をしつつ収入を得る為に『野菜』を栽培し、それをどこで知り合ったのかシュトラール共和国の商人がこのブランド王国で販売した……という事になるのかしら?」
「今のところ『販売した』かは分からないところかな」
「そうなの?」
「ああ、僕はあくまでスラム街でもらっただけだからな。それに、子供たちも似た様な反応だった」
「じゃあ無償で配っていた……という事になるのかしら?」
「その可能性はあるだろうね。そもそも、この『野菜』大きさはかなりの規格外らしいけど、味は普通と変わらないらしいから」
「な、なるほど。それで乾燥させているのね」
「多分そうだろうね」
大きさが規格外であるが故に持ち運びが難しく販売するのも難しい。そこで細かくカットした『野菜』を乾燥させ、お菓子代わりに子供たちへ渡していたのではないだろうか……とシュトラールは推察した。
「でも、無償で渡したのならあの子に利益はないという事になるけど……」
「うん、そこなんだよ。きっとこの商人は他にも何かを売っているはず。それにはリリー嬢も関わっているのではないか……僕はそう睨んでいる」
シュトラールは報告書に軽く視線を落とし、エデルの方を向いた。
「ええ。私もそう思うわ。あの子が何もしないでひっそりと生活……なんてあの子がたとえ望んだとしてもそうはならなそうだもの」
エデルがそう言うと、シュトラールは「違いない」とまたお互い笑いあった。この会話を密かに聞いている第三者の存在に気付かずに――。




