第6話
「……」
気になる事……は確かにある。それこそ「安全性」とかの話よりも前に。
「そうだな」
「当てましょうか?」
「……いや、いい」
「あら、張り合いがないわね」
エデルは「意外」と言わんばかりの表情を見せるが、この話の流れと彼女の性格を考えるに大体の事は予想がつく。
「今の状況では僕たちも外出は難しいから。大体、君が言い出しそうな事は分かる」
「あらあらバレていたのね」
この発言からエデルはどこか嬉しそうに笑う。
「結婚する前からの長い付き合いだからね。さすがに分かるよ」
「……いくら長い付き合いでも分かり合えない場合もあるみたいだけど?」
それは本来であれば義理の妹になるはずだった「彼女」の事……だけでなく、浮気相手と思われていた彼女が用意したもう一人の彼女。二人を指しての言葉だった。
「それは言わないで欲しい」
「フフ。私も最初は驚いたけど、どうやら二人共彼にはもったいない優秀でしたたかなレディだったみたいね」
「ああ。だからこそ、あいつにはもったいない。それに、この国に有益な二人共言える」
「……あなたにそこまで言わせるなんて相当なのね」
確かに、リリーの情報を事前に見せてもらった上で彼女と対峙した時。既に彼女からは明らかに他の令嬢たちとは一線画す雰囲気があった。
一方のハンナ嬢はそこまでの雰囲気はなかった。しかし、彼女はリリーの考えを全て理解した上で利用とするしたたかさを感じた。
本来であれば「婚約破棄の原因」に自分がなるのは避けたいと考えるのが普通だ。だが、彼女はそれにのった。
きっと彼女は彼女なりに「男爵令嬢」という己の身分と将来。そしてこの計画の危うさなど全て理解した上でのったのだろう。
「ほとんどギャンブルみたいなものだったかも知れないけど」
「彼女たちはそれに勝って今に至っている」
ただ、本当であればそもそもの原因になった「エデルの処遇」に関してはこの流行り病の対処に追われて宙に浮いている様な状況だ。
だからこそ、シュトラールにどこか焦りが出ているのもまた事実だった。
「でも、正直『出所』は知っておくべきだと思うわよ?」
「……分かっている」
「分かってはいるけどあんまり乗り気じゃないって感じね」
「……」
本当は『野菜』に関する報告書の中にエデルが言う『出所』に関する情報も書かれていた。
そこには「シュタイン共和国の商人が持ち込んだと推察される」としか書かれていなかった。
それ自体は何も問題ない。そもそもシュタイン共和国の商人がこのブランド王国に来て商売をする事自体は本来であれば何も引っかかる事などないはずだ。
さらに加えるのであればその場所がたとえスラム街だったとしても、特に問題はない……はずなのだが。
なぜかシュトラールはこの話に妙な引っ掛かりを覚えたのである。




