第4話
「――はい。結論から申し上げますと……とんでもない代物です。この『野菜』は」
「……そっか、やっぱり」
小さく息を吐きつつシュトラールは乾燥させた『野菜』が載せられた皿を見つめる。
「これがあれば現在流行している病の治療に一石を投じるだけでなく、様々な病の治療にも使えると思われます」
「うん、そうなると……良いね」
どことなく興奮気味に報告をする研究者とは対照的にシュトラールの反応はいまひとつ。ただそれは「思っていた結果だったから」とはまた違う。
「どうかされましたか?」
そんなシュトラールの反応に研究者は疑問を感じていた。普通に考えれば現在ある治療薬で対処しきれていない流行り病の治療に使えると分かった時点で喜ぶはずだ。
「いや、何でもない。こちらの話だ」
「そう……ですか」
シュトラールは『野菜』を一瞥し、研究者が持っている資料を見せる様に促した。
「しかし、君がそこまで興奮しているという事は余程いい結果が出たんだな」
「はい……と言いますか、正直驚きです」
「へぇ?」
「まず、この『野菜』は簡単に持ち運び、そしてどこでも食べられるように細かくされています。ですが、これを持っていたスラム街の住人曰く元々の『野菜』は通常の1.5倍はある……と」
そもそも、この『野菜』が発見されたのは流行り病が本格的に流行し始めた頃にシュトラールが護衛を撒いてスラム街近郊に行った時の事だ。
その時、スラム街に住んでいる子供がお菓子代わりに持っていた乾かした『野菜』をもらった事がきっかけだった。
元々、シュトラールはよく護衛を撒いてスラム街に限らず様々な地域を見て回っていた。
騎士団はそれに頭を悩ませていたのだが、殿下自身。魔法の実力だけでなく体術も習得していたので余程の事が無ければ実はあまり問題なく、下手をすれば護衛に当たっている騎士たちよりも強かった。
そして、久しぶりに訪れたその地でシュトラールはこの『野菜』に関しては初めて見たのだが、シュトラールはどうにもこの『野菜』が気になりそのまま持ち帰ったのである。
「それにしても……そんなに大きいのだな。ハハ」
「ええ。私もそこまで大きい物は露店などの出し物などでしか見た事がありません」
「でも、不思議なのはその大きさだけじゃないのだろう?」
「はい、詳しく調べたところ。この『野菜』には普通の野菜には含まれていない成分が含まれおり、これが病に有効だという結果が出ました」
「普通の野菜に含まれていない成分……ね」
「現在鋭意調査中ではありますが、おそらく『薬草』と似た様な効果があると推察されています」
「なるほど。つまり、この『野菜』を食べていたからスラム街の方では病が蔓延していない……という訳か」
「――おそらく」
巷では「この病は貴族など贅沢な暮らしをしている者がなる病気だ」という噂が囁かれていたのだが、最近では平民にも病は蔓延し始め、検問所の方では本格的な封鎖もされ始めている。
「ですが、平民の間でもこの『野菜』はささやかながら出回っているとの情報もあります」
「ああ、スラムに近いところ……だったな。場所は」
シュトラールの言葉に研究者は「はい」と頷く。
実はこれはキチンと調査をした為元々分かっていたのだが、どうやらそうした結果が出た理由はこの『野菜』によるものだった……らしい。




