第3話
「……」
今にして思えば、アルフ自身も「どうしてあそこまで評価にこだわっていたのだろう?」と不思議に思う。
この話自体そう昔でもないのだが、今となってはそう感じる。
それはきっと「置き去りから伝説くらすの魔物に助けられて考えが変わったから」なのかも知れない。
これ自体そうある話ではないからこそ、自分を見つめ直すきっかけになったのかも知れないが、我ながら「なんて簡単な……」とも思える。
「しっかしなぁ」
それに、今更ながら「なんで魔物にペンとインクなんて渡したんだ?」と当時の自分がどれ程気が動転していたのか分かってしまって思わず笑ってしまう。
でも、それくらい「ありえない」話だったのだ。
そこから何度かブランド王国を行き来していたのは偏にこの「ペンとインクを買ってくれる人がいたから」である。そうでなければ再度行こうと思わない。
ただ、そもそもペンも消耗品とは言えそう頻繁に買い替える物でもない。だからそう頻繁に行き来はしていなかった。
だからこそ、今度はしっかりと「検問所を通る」という正規のルートを選んでブランド王国に行っていた。
それなのにどうして「魔物が多い地帯」に足を踏み入れ、またも「置き去り」をされる事態になったのだろうか……。
多分それは己の「甘さ」が故に起きた結果だとアルフは思っている。
「人間。そう簡単に変われるはずないって言うのにな」
思わずそう吐き出してしまう程、アルフとしてはあの「置き去り」はショックだった。
それは「2回目だから」などと言うただの「回数」の問題ではない。
そんな事よりも「優しさの皮を被って騙す」という行動をされたという事にアルフは怒りを覚えたのだ。
「――何が変われないというのだ?」
ため息交じりに思わず漏れ出てしまった言葉と共に当時の状況を思い返していると、ふと頭上から声が聞こえて来た。
「は? え、フェ……フェンリル様!?」
「そこまで驚かんでも良かろう」
「い、いやいや! え、どうしてここに? リリー様を一人にしても大丈夫なのですか?」
「何。あやつは我が張った結界の中にいるが故にそう魔物に襲われる様な事はあるまい。それに、あやつの実力は相当なものだからな。お主も知っておろう?」
「そ、それは……まぁ確かに」
言われてみれば、最初に出会った時もフェンリル様と一緒に魔物を追っ払っていた。
「あやつは優しいからな。出来る限り無駄な殺生はしない。だが、そちらの方が難しい事はお主の実力があれば分かるであろう?」
「ま、まぁ」
フェンリルの言う通り「リリーが優しい」というのはアルフも分かる。そもそも「置き去り」の現場を目撃したところで助けるという事は意外と少ない。
それだけここは危険な地帯でそれでいて大体の人は自分たちの事だけで精いっぱい。一言に「助ける」と言っても「善意で助ける」と言うよりは「自分たちに危害が来そうなので助ける」という事がほとんどだ。
「お主もあやつからもらった物によって多少は襲われにくいとは言えそれはあくまで小物の話だ。ここいらは我よりは劣るもののそれなりの魔物が出る事もあるからな」
「な、なるほど。それで」
「お主に何かあってはあやつも心配するからな」
「……そうですか」
口では「リリーが心配するから」と言っているが、なんだかんだ「気をかける相手」として認識してくれているという事に、アルフはどことなく嬉しい気持ちになった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「――失礼致します」
「ああ」
「はい。先程解析が終了致しました」
「うん、それで……どうだった?」
ニッコリと笑顔で解析結果の報告を今か今かと待ち受けていたのは……ブランド王国第一王子のシュトラールだった。




