第1話
「……さて」
リリーの家を後にしたアルフは周囲を一旦見渡し、早速目的地であるブランド王国へと歩みを進めた。
しかし、そうは言ってもここからブランド王国まではそう遠くはない。
そもそも、ここはシュタイン共和国とブランド王国の間に位置する地帯だが、その大きさは想像しているよりもあまり大きくはなく、真っすぐ直線に進んでしまえば半日でお互いの距離を行き来出来るくらいの大きさだ。
その為、この場所で野宿しなければならない……と言う事態になる事はそうない。
まぁ、そのおかげで「置き去り」に遭ってしまったとしても「魔物にさえ出会わなければ」国を出たその日の間に隣国へ渡る事が出来るくらいの距離と言える。
「そもそも置き去りに遭うなよって話だよな」
アルフはフェンリル様に出会った頃の当時の自分を思い出しながら思わず苦笑いをしてしまう。
あの時のアルフも本当は冒険者ギルドに入れるくらいの実力はあったはずだ。ただ、あの頃の自分はそんな事を考えてすらいなかった。
そんな事を考える余裕がなかった……と言うのもあるが、それ以上に「自分に自信がない」いや「自分は価値のない人間」だとアルフ自身が思っていたのも理由にある。
ただそれは周囲がそうさせた……というのももちろんあると思うが、それ以上にアルフ自身がそれを認めていた。
でも、そんな自分を変えたいと思い立ったのはシュタイン共和国のスラム街でスリをきっかけに出会った手先の器用な自分より少し年下の少年。
自分の事すらまともに出来ていないにも関わらず「本当はスリなんかせずに真っ当に生きたい」と真っすぐな瞳で言う彼に突き動かされて柄にもなく世話を焼いてしまった。
まぁ、少年に紹介した職人も「真面目な後継者であれば生まれなんぞどうでも良い」と言っていた。
少年本人は「本当に良いんですか?」と職人に何度も確認していたが、何度も聞いてしまったせいで「だから、俺が良いと言っているから良い!」と思えばあいつは最初から怒られてしまった。
それからあっという間に職人から毎回怒られながらも技術を身につけ、様々な商品を作れる様になった。
ただ、人によって……特に貴族はあいつの出生を聞いて購入をためらう……なんて事も度々あったらしい。
それは……何もこの国に限った話ではない。
一応、シュタイン共和国は王族を有する国ではないものの。昔は存在していた。その名残はどうしても残ってしまっている。
スラム街もその1つとも言え、その偏見は今も残ってしまっている。だから、この反応はその1つとも言えた。
だが、職人が「俺の大事な後継者だ。生まれなど気にせず商品を見て欲しい」と職人の言葉に心動かされて購入してくれた……なんて事もあったらしい。
そんな日々精進している彼の姿に、アルフ自身も背中を押されたのは間違いではない。
だからこそ、アルフ自身も「変わろう」と思い立った。そして、その一つがブランド王国に行く事だったのだ。




