第7話
「どうしたの?」
あまりの挙動不審具合に思わずリリーは尋ねる。
「い、いや。何もやましい事はないんです。国境に関しても検問所はまだ国が発行した許可証を持っている人は通れるようになっていますし」
「でも、それって余程の理由がある人って事を言っているんじゃない?」
「確かにそうだな」
「それに……あなた。そもそもここにどうやって来たの? 確かにフェンリル毛が付いた栞は渡したけど、以前の話を聞く限り冒険者ギルドに登録はしていなかったと思うけど」
そう、その登録をしていないが為にアルフは「検問所でかかる税金から逃れるための裏技」として冒険者ギルドの一員として潜り込み、そして「置き去り」をされてしまったのだ。
しかも、弟がいる冒険者ギルドに。
「えーっとですね。その、実はこの度冒険者の登録をしまして」
「あら、そうだったの?」
「はい、俺としては出来る限り取引は顔を合わせてフェアに行いたい。ただ、冒険者ギルドに頼んでばかりではそうも言っていられない。毎回置き去りにされている訳ではありませんし。そうした中で流行り病が発生しまして……」
「それがどうして冒険者ギルドへ登録する事に繋がるの?」
「先程も話した通り検問所は現在許可証がなければ通る事が出来ません。そして、リリー様がおっしゃられていた通り許可証が下りるのは余程の理由が必要になります。ただ、冒険者ギルドは実は国管轄ではないのです」
「そ、そうなの?」
「はい。だから冒険者ギルドに登録し、ある一定のレベルにまで到達すればここに限らず様々な場所を通る事が出来るのです」
「な、なるほど」
国が管理している機関でないのであればそうした事も可能になるだろう。そして、アルフの話を聞く限り国外に逃れようとこの手段を取っているのは大勢いそうだ。
「ふむ。ではお主はこの辺りを通っても大丈夫だと判断される程までのレベルに達している……という訳だな?」
「えと……そうですね。魔法の腕は相変わらずからっきしですけど、剣と弓はそれなりの腕があるかと」
「ほぉ?」
「まぁ、弟たちと比べると全然ですけどね」
「それは剣だけでなく弓も?」
「ああえと、俺の下の弟は剣の才能があって末の弟は弓ですね。それに比べて俺はどっちつかずの中途半端で……」
そう苦笑いを浮かべながらアルフは自身の頬を軽く指で掻く。
「しかし、この辺りを一人で通っても大丈夫なレベルではあるのだろう? それならば十分目的は果たせているのではないのか?」
「た、確かに言われてみれば」
きっとアルフはずっと自分を比べ続けて来たのだろう。そして、その比べていた相手は「一芸に秀でている人間」だった。
「ええ。一般的なレベルを踏まえて考えるとあなたは十分優秀よ」
「そ、そうですか? そんな事、言われた事がなかったので……ちょっと照れますね」
それを踏まえて考えると、彼はどちらかというと「万能型」だったのだろう。悪い言い方をしてしまうと「器用貧乏」とも言えてしまうのだが、それでもアルフは一般的なレベルよりももう一段階上だという事がこれで判明した。




