第6話
それはつまりブランド王国の国民も同じ流行り病に侵されて苦しんでいるという事を意味している。
「でも、どうしてここで育てた『野菜』がそこまでの効果を生んだのかしら?」
「うーむ。それは単純にこの土地で育てたから……としか言えまい」
「この規格外な大きさも……よね?」
「おそらくそうであろう」
リリーも「何となくそうではないか」と思ってはいたものの、やはり誰かに肯定してらもらうと不思議と納得がいく。
「詳しい効果などについては研究機関などで調べてもらわないと分からないのですが、おそらくこの畑の土や空気が魔素を多く含んでいる事が関係しているのだと思います。それに、通常の畑で育てるよりも効率よく水が循環している事も『野菜』そのものの発育にも大きな役割を担っているのでしょう」
「……なるほどね。この土地だけじゃなくこの魔法陣も大きな意味があったという訳ね」
言われてみると、確かにリリーが「王妃教育」と称して畑仕事を手伝った事があったが、その人たちから「雨の日はともかく、日々の水やりは野菜を育てるうえで重要だ」と言われていた。
「それにしても、まさか試作品として渡していた野菜を干していたとはね」
「あ、それは……」
試しに『野菜』を作った際。そのあまりの規格外な大きさに「このままでは売れない」という結論に至ってしまったのだが「他に加工して販売出来ないか模索する」という事で話は止まっていた。
そこからしばらく音沙汰がなかったが、まさかそんなことになっていたとは……。
「ああ気にしなくて良いのよ。ちょっと驚いただけだから」
「すみません。その流行り病のせいでなかなか国から出る事が出来ず」
申し訳なさそうな表情で言うアルフに対し、リリーも特に責める様な事はしない。
そもそも、アルフに「ここの来る際に勝って来て欲しい物」を頼んではいるが、正直ただ「あったら料理のバリエーションが増える」などの理由なので大きな問題は何もない。
「でも、あなたの話を聞く限り国境を封鎖する寸前まで蔓延している……という事よね」
アルフの言葉をそのまま受け取ればそういう事になる。
「はい」
「じゃあ、あなたが『野菜』を渡したのもシュタイン共和国の人……という事になるのよね?」
「はい、そうです」
「……そう」
そもそも、アルフはシュタイン共和国の人間で大きな商家の出身。ブランド王国でも商売はしてはいても出身国ではない。それに、ブランド王国にもスラム街は存在しているが、そこを管理している領主がいる。
「それに、ブランド王国で商売という形以外で食べ物を渡すのはなかなか難しくて」
それはそうだろう。他国の人間である彼が善意のつもりであったとしてもそう食べ物を渡すのは難しい。そもそも良い顔をしない。
「ふむ。では、なぜそんな状況なのにも関わらずお主はここにおるのだ?」
「え?」
「国境が封鎖されているのであろう? それならばお主がここに来るのは難しいくないか?」
「それは……その」
フェンリルの指摘に、アルフは何やらしどろもどろになり、かなり慌てた様子になった。




