第2話
魔法を学ぶ者としては「常識」とも言われるものだが、魔法を学んだ事のないはずのアルフが知っているのはやはり商人だからだろう。
「薬として使える程の効力……か」
「ええ。それこそ普段飲んでいるこのお茶にも疲労回復の効果があるのよ? でも、『薬草』程の効力は期待出来ないけど」
「え」
アルフは驚きのあまり目を見開いて固まってしまった。
「あら、気が付いていなかったの?」
「い、いや。でも、言われてみれば確かに……そうおっしゃられていましたね」
最初にここへ来た時にリリーが『野草』を煎じて淹れた物だと言っていた。確かにそこまで効力がなければ『薬草』とは言えないが……。
「でも、少なからず魔素の影響は受けているという事ですよね?」
「ええ、そうなるわね。でも、薬程じゃないわ」
「はい、分かっています。ただ、ここでお話を聞くまで薬草が栽培出来るとは俺も思っていなかったです」
「まぁ、私も最初はあくまで仮説程度のつもりだったからここまで上手くいくとは思っていなかったわね」
自生するのに最適な環境であれば栽培をする事も可能とも言えるのではないか。その仮説をリリーは実証して見せた。
「それに……まさか魔法陣を栽培に役立てられるとは」
「ああ、あれね」
二人は窓から見える薬草が植えられている畑の様子を見つめる。
そこには昔住んでいた人間が残していった魔法陣があったのだが、リリーはその魔法陣が何だったのか読み解く事が出来た為、それを復元させ有効活用した。
「……あれに関してはお主が復元させただけであろう?」
「ええ。あくまで私のした事は元あった物を復元させたに過ぎない。あ、あれは元々昔の技術だから」
今も日常生活の中で魔法陣が使われる事はあるが、こうして畑で使われる事は少ない。
「なるほど。つまり、昔は魔法に限らず生活のあらゆる場面で魔法陣を使われていたみたいですね」
「ええ、多分」
アルフは昔のこの辺りの事は知らないのだろう。リリーもフェンリルから話を聞くまで知らなかったのだから無理もない。
それならば下手に話す必要はないだおう。
それに、リリーはあくまで「先人が残した物を復活させ利用いる」だけに過ぎないのだが、それにはそもそも魔法陣の解析出来るだけの知識がなければ復元する事すら出来ない。
つまり、リリーの様に知識がなければそもそもこの栽培方法すら上手くいかなかったとも言える。
「俺は魔法陣に限らず魔法に関してはサッパリですけど、あの魔法陣のおかげで効率良く『薬草』が栽培されているという事は分かります」
「そんなに難しい話じゃないわよ? あれは魔素と水を満遍なく『薬草』に行きわたらせる物と言えば分かりやすいかしら?」
「……なるほど。それは素晴らしいですね。もしこれが畑仕事をしている庶民の間でも使えれば負担も少しは軽減されると思うのですが」
「でも、この魔法陣は『魔素と水の両方を畑に行きわたらせる』というものになるから水に限定して果たして正常に使えるか……」
リリーがそう言うと、アルフは「あくまで仮の話ですよ」と小さく笑った。




