第1話
そうしてアルフと取引が始まったのだが、その成果はリリーやフェンリルの予想を大きく上回っていた……。
「これは……思った以上の成果だな」
「ええ」
そんな二人に対し、アルフはキョトンとした表情を見せる。
「そうですか? 俺としては妥当な線だと思いますけど」
「妥当……」
思わず漏れてしまった言葉に、アルフは再度「はい」と頷く。
「……」
リリーは再度日々の売り上げが書かれた手帳を見つめ、思わず固まる。
ただ、リリーも「元」は公爵家の令嬢。その時と比べたここに書かれている金額程度で驚くのも不思議な話……なのかも知れない。
しかし、公爵家にいた時。リリーはあまり自分の為にお金を使わなかった事と、自分で稼いだ経験がなかった為、これが初めての「成果」だった事もあり、その金額に驚いていたのだ。
「でも、本当によろしいのですか?」
「え?」
「これだけの金額になるのに報酬は金貨ではなく現物支給で」
「ええ。私としてはむしろこの方が助かるわ」
そう、リリーは薬草の売上。つまり「報酬」は金貨ではなく「欲しい物リストに書いた物」として受け取る事にしたのだ。
「でも、これだけじゃ売り上げた金額の四分の一にもなりませんよ?」
「あら、それならその余った分だけスラム街の人たちに食べ物を渡せばいいと思ったのだけど?」
サラリと答えるリリーに、アルフはハッとした表情になった。そう、最初からリリーはそのつもりだったのだ。
「しかし、これ程まで売り上げるとはな」
「ええ、さすがに私も驚いたわ。みんな欲しがっているのね」
「はい、そもそも『薬草』自体かなり希少価値が高い物。つまり需要も高いのです」
「言われてみれば、確かに魔法薬に限らず普通に薬にも使われる物だものね」
そう「魔法薬」としてよく例に挙げられる「ポーション」に限らず、普通の風邪薬にも『薬草』はよく使われる。
ただ、希少価値が高いせいもあってかその価格は非常に高く、庶民の中には薬を手に入れる事が出来ないという人もいた。
「なるほど。しかし、それほど使われるのであればこやつの様に育てれば良いのではないか?」
「そう出来ればいいのですが、基本的に『薬草』の自生する物です。そして『薬草』自体はどこにでも自生しています。ですが、そう多くはありません。その上、効力の良い物は基本的に魔素が多いところで自生します。ただ、魔素が高ければ高い場所ほど魔物が出現するリスクが高まりまってしまうのです」
「……ふむ」
「みんながみんな魔物に対処出来る術があればいいのだけど……そう簡単にはいかないでしょうね」
基本的に魔法が使えるのは貴族とほんの一部の庶民だけ。つまり、魔物に対抗出来る人間はそう多くなかったのだ。
「そもそも『薬草』の研究はしても栽培する事を考える人はいないでしょうね」
「薬草はそこら辺に生えている物ですが、薬として使える程の物は魔素の高い場所に自生する物という考えがあくまで常識ですから」
しかし、ここは魔物が多く生息している。つまり、薬として使える『薬草』が自生するには最適な環境だったのだ。




