第9話
きっと、シュトラール殿下なりに自身の弟であるエミル殿下にも仕事を……と気遣っていたのだろう。
それに、婚約者は公爵家の令嬢で魔力も魔法の実力もあるリリー・グランツだ。彼女と一緒ならば……と殿下なりに考えて二人に内政を頼もうとしていた……という事は分かった。
そして、エミル殿下がそんなシュトラール殿下の思いだけでなく計画。それら全てを台無しにしたという事も……。
しかし、これはハンナにも大いに関係ある話だ。なにせ、彼女はリリーの後釜としてエミル殿下の新たな婚約者としてあの婚約破棄が宣言された場にいたのだから。
ここに呼ばれた理由もそれに関する事だろうとハンナも覚悟して来た。下手をすれば一族路頭に迷うか、最悪の場合も考えられる。
リリーはそうならない様に出来る限り「ハンナが使える人材である」と言う証明の為に手を尽くしてはくれた。その結果最後の最後にリリーの成績を超える事が出来た……という訳なのだが、実際のところ。シュトラール殿下がどう取っているのか分からない。
そもそも彼女は婚約破棄をされてから国外追放になってしまっている。
つまり、婚約破棄の原因にもなってしまったハンナをこのまま王家が迎え入れるのか……という疑問が残ったままなのだ。
迎え……いれてくれるのだろうか。
リリーの計画にまんまと乗せられて周囲の人間はリリーが自分をイジメる「悪役令嬢」などと言って非難していた。
そんな中でハンナを拒んだ場合……きっとその非難は王家に向けられるだろう。
そもそも魔法学園は貴族の子息や令嬢。つまり、将来を担う人間が多く集まっている。それを踏まえて考えると「迎え入れない」という選択にはならない……はずなのだが。
ハンナ自身、自分が王家の立場であれば迎え入れないと考えてしまう。半ばリリーに乗せられてしまったが、そうすると自分で選んでここに立っている事には変わりない。
しかし、どう考えても自分の分が悪いのは分かっているつもりだ。
それは身分がどうこうという話ではなく、自分の置かれている現状を鑑みればすぐに分かる。
エミル殿下がここにおらず既に話を聞いた上で、すぐにハンナをここに呼び、これまでの経緯を聞いた……その上で自分はどうなってしまうのだろうか。
「実はね。君をここに呼んだのはこれまでの事だけじゃなくて、聞いておきたい事があったからなんだ」
ここに来て「ようやく本題」と言わんばりにシュトラール殿下はカップに入っていたお茶を一気に煽る。
お茶会のマナーに限らずマナー全般に厳しいと噂される王妃陛下もいる中でその様な行動を取るとは……それを考えると「一体何を言われるのだろうか」と思わず身構えてしまう。
「……」
そんな事を考えつつ、ハンナは次に発せられるシュトラール殿下の言葉をジッと待った。




