第7話
通常「王妃教育」と言われて連想されるのはきっとマナーや隣接しているシュタイン共和国に関する事だけでなく、様々な国々について学ぶ……といったものだろう。
マナーに関してはリリーが「生徒の代表として様々な方に会うのだから――」と生徒会に入る事が決まってからすぐに改めて教えてもらった。
元々貴族令嬢として一通りのマナーは学んでいたものの、リリーがハンナに教えたのはそれ以上のレベルで、その厳しさから思わず泣いてしまった事もあった。
しかし、エデルの言葉だけでなく、シュトラール殿下と王妃陛下の会話はどうにもそれらの「王妃教育」とは一線を画す様に聞こえる。
「でもまさかそれを逆手に取られるとは思っていなかったわ」
「いやぁ、どちらかと言うと結果的に……じゃないかな。もしかしたら本人としてはそんなつもりがなくて不本意だったかも」
二人はそんな事を言いながら「フフ」と優雅に笑い合っている。
「あ、あの」
とりあえずリリーの受けた「王妃教育」がハンナの想像しているものとは違うという事は分かった。
「リ、リリー様が受けられたその『王妃教育』とは一体どういったものだったのでしょうか」
しかし、それでは余計に話が分からずハンナは思わず二人に問いかけた。
「ん? ああ、それはね。この国の職業を全て学んでもらうってものだったんだよ」
「……え、全て……ですか?」
「うん。そう」
「……」
サラリと答えるシュトラール殿下に、ハンナは思わず困惑した。なぜなら、そんな「王妃教育」を聞いた事がなかったからだ。
「まぁ『王妃教育』だなんて言っているけど、本当はエミルもやる予定だったんだよ?」
「え、そう……だったのですか?」
「ええ。ですが、その度に何か適当な理由を付けて逃げられてしまい、結果としてリリー嬢だけが受ける形となってしまい、仕舞いには王妃教育という形になってしまった……という訳です」
「それって……ダメ……ですよね?」
「うん、ダメダメだね。ちなみに、これが始まったのは魔法学園に入ってからすぐの事なんだけど……」
「……」
それはつまり、ハンナと出会ってから放課後何かに理由を付けて会っていた期間も含まれているという事だ。
「す、すみませんでした! 私、そんな大事な殿下ご用があっただなんて知らなくて……」
「いいんだよ。そもそも君に出会う前から逃げていたのだから。気にしないで」
「で、ですが……」
「それに、最終学年を迎える前に全ての過程を終わらせるなどといった芸当をリリー嬢は成し遂げましたが、今となってはあの子が出来るとは到底思えません。それを考えると、むしろやらせなかったのは良かったかも知れません」
「ひょっとすると、学び先で癇癪を起して途中で投げ出していた可能性も否定出来ませんからね、投げ出される前に最初から逃げてくれたのはかえって良かったのかも知れません」
「……」
ここまで身内とも呼べる存在から言われてしまうのも可哀そうに思えてしまうが、これがきっとエミル殿下の評価なのだとハンナは改めて感じた。
そして、それと同時にハンナ嬢は「なぜ、そんな王妃教育を行ったのか」と疑問思った。




