第2話
「席に着いてゆっくりと話そう?」
「はい」
柔らかい笑顔と話し方に似合わず本人の持っている雰囲気は高貴そのものだ。
ブロンドの髪は1つまとめにしている事の多い貴族男性には珍しく短め。そして、肌はそれ以上に白く、弟君であるエミル殿下を「カワイイ」というのであれば、第一王子である彼『シュトラール・ブランド』は「カッコイイ」に分類されるだろう。
瞳の色は弟のエミル殿下のワインレッドとは違い純度の高い黄金で、婚約を破棄され国外追放となったリリー・グランツと良い勝負だ。
つまり、リリーの瞳は王族と引けを取らないくらい魔法の才能があるとも言えてしまう。
この瞳の色は王妃陛下からの遺伝で、エミル殿下の瞳は現在床に臥せていらっしゃる陛下からの遺伝……とされている。
だが、実は巷ではこの話には疑問符が付けられていた。
それはなぜか……それは国王陛下の瞳は純度の高い真っ赤に燃えるような色をしていると言われていたからだ。
この事により「エミル殿下は実は妾の子ではないか」と噂される事もあった。
ただ、この国では側室が認められていない。もし仮にエミル殿下が妾の子だとすると……それは国家を揺るがすとんでもないスキャンダルに他ならない。
しかし、実はエミル殿下をご出産されたのは当時体調を崩された王妃陛下が療養された旅行先でと言われていた。
ただ、出産に立ち会った者は側仕えのメイドと執事だけと言われており、これが噂に拍車をかけた。
だが、ここからそう時を置かずにリリーが隔世遺伝による黄金の瞳を持って生まれ、この事がエミル殿下には追い風になる。
さらに王妃陛下の「この子は誰が何と言おうと私の子です!」と言い切った為、エミル殿下はお二人の子供と正式に発表された。
そんなエミル殿下とシュトーラル殿下なのだが、実はひと回りの年の差がある。
そして、その年の差による大人の落ち着きをシュトーラル殿下は「僕はエミルと比べて年を取っているから。落ち着いている様に見えるのはそのせいだよ」と笑っていた。
しかし、エミル殿下はどうにもそれが癇に障るらしく、エミル殿下が一方的にシュトーラル殿下を敵視していた。
「し、失礼致します」
ただ、そう思ってしまうのも無理はない気がする。
彼自身、国王陛下に代わって国を運用としているのだが、その功績に対し「自分は周りに助けてもらってばかり」とよく話していた。
エミル殿下としては多少なりとも偉そうにしてくれればいいのにそうした素振りも見せない典型的な良い人……と世間では思われている。
対してたとえ年の差があろうとも「自分は……」と比べてしまうのも無理はないだろう。
「ごめんね。突然呼び出して」
「いえ、お時間を下さり感謝いたします」
今回の婚約破棄の一件はそんな出来る兄に対する謀反のつもりだったのだろうか。
しかし、これにはリリーの思惑もあり、一見すると成功した様に見える……が、さすがにこのまま何事もなく……とはいかない事くらいハンナ嬢も分かっていた。




