第7話
「ちょっと待って」
「はい?」
「庶民の人が商売相手という事は、ご家族とその方たちではあなたに対する評価は違うと思うのですが?」
「さぁ……それはどうでしょう」
リリーは「きっとアルフも自分と同じく場所によって評価が違うのでは?」と考えたのだが、アルフの反応はあまり良くない。
「え」
「なにせ俺の兄弟たちは名の通っている商人と冒険者ギルドに所属していますから」
言われてみれば確かにそうである。リリーの場合とは違い、アルフには国の中で名が通っている兄弟たちがいる。
だからこそ、置き去りにされても衣食住が負担されているからと言って倍額のお金を払っても文句の1つも言えなかったのだ。
決して忘れていた訳ではないのだが、そう考えると……彼の置かれている状況が何とも可哀そうに見えてしまう。
「そ、それはそうだと思うけど」
「まぁ、でも。気に入ってくれている人たちがいるのもまた事実ではありますけどね」
「あら、そうなの」
「ええ、愛嬌がある……とか親身になって話を聞いてくれる……とか。そうは言っても俺の出来る事なんてせいぜい日々の愚痴を聞く程度ですけど」
「――大事な事よ」
「でも、確かにそれで言ったら兄さんたちに愛想は……あるにはありますけど、人を選んでいたりそもそもないって感じですけどね。さすがに押し付けはしませんけど」
「……そう」
「そもそも、兄たちが販売している物はどれも一級品ばかりなんです」
「あら、じゃあ」
「はい。兄さんたちの商売相手は貴族とかそういった方たちばかりになります。ただ、俺からしてみると相手によって表情を作っている感じがどうにも……」
きっと彼は優しい性格なのだろう。だからこそ、お兄さんたちの商売の仕方に疑問を抱いている。
しかし、その「優しさ」が本当に正しいのかは……ここまでの話の流れでは判断が出来ない。
「じゃあ、あなたは人を選ぶ様な真似はしていない……という事ね?」
「え? はい」
「それはお金をキチンと支払ってくれるからこそ……よね?」
「……」
「まさかお金のない人たちに無償で……なんて事はない?」
「……たまに、スラム街に住んでいて食べ物に困っている人に渡しています」
正直。なんでもかんでも施しをするのが正しい「優しさ」だとリリーは思っていない。
ただ、生まれた環境のせいで将来が限られてしまっている人がいるのもまた事実という事も分かっている。
それこそ、アルフの様に商人に生まれて魔法の才能がなかったがために家業をしている……や、リリーの様に貴族の令嬢に生まれた為、将来は貴族の家に嫁がなければならない……など。
リリーに関してだけ言えば「貴族」ではなく「王族」だった。でも結局は「嫁がなければいけない」ので同じではあるが……。
だから、本来であれば敷かれたレールを通るだけの人生が「普通」で、今のリリーが置かれている状況はかなりイレギュラーでしかない。
ただ、正直この「支払えない人たちに対して」という線引きは難しい。
そして、これを「人を選んでいる」とするかどうか……そこがどうしても判断に困る部分でもある。
だからこそ、アルフも困っていたのだろう。自分の思いとは裏腹に現実はそうも言えない状態だったから。




