第6話
「ど、どうして分かったの?」
「何となくそうだと思っていました。俺の家は国ではそれなりに名が知られている事もあって貴族の集まりに呼ばれる事もありましたし、そこに『グランツ』という名前はありませんでした」
言われてみれば確かにそうかも知れない。
リリーの家は公爵というだけでなく、リリー自身もエミル殿下の婚約者という事もあって様々な集まりに参加した。
その場には貴族はもちろん様々な人たちがいた。
つまり、アルフはそうして呼ばれる側の人間だったのだろう。すると、アルフは「それに」と付け加え。
「俺自身お茶会などに連れて行ってもらったのは本当に数える程度でしたが、隣国の噂話などはよく耳にしていました」
「それってつまり……」
「はい、あなたの事も聞いた事があります。魔力が高く、魔法の実力は言わずもがな。確か、ブランド王国第二王子の婚約者……でもありましたよね?」
「え、ええ」
アルフがリリーを見てすぐに分からなかったのはきっと貴族や王族主催のお茶会や夜会に参加したのが幼い頃だったからだろう。
その頃、リリーはまだ隣国に行った事はない。
ただ、風の噂で「隣国に『黄金の瞳』を持った令嬢が生まれた」という事は聞いていた可能性はある。
しかし、彼が知っているのはその程度で『黄金の瞳』つまり魔力が桁違いだという事は分かるものの、その他の外見に関する事は知らなかった様だ。
「でも、それももう『元』だけど」
そして、彼の反応を見る限りリリーが婚約破棄された事をどうやら知らなかったらしい。
「……え。元……ですか?」
「ええ。婚約を破棄されてしまったから」
「え、な……なぜ?」
「私は王族に相応しくないらしいわ」
本当は様々な段取りをした上で破棄させたのだが、隣国の彼にそこまで説明をする必要はないだろう。
「知らなかったのか? 隣国とは言えそうした下世話な話はすぐに広まると思っていたのだがな」
狼狽えているアルフに対し、フェンリルは不思議そうに首を捻る。
「ハハハ。俺、実はそういった話にかなり疎くて……それに、俺の商売相手は大体が庶民の人ばかりなので貴族間の婚約とかそういった話にあまり関心がない……と言いますか、雲の上の話と言いますか……」
「なるほど。そうなのね」
言われてみればリリーが王妃教育を受けていた時、お世話になっていた方たちもおおむねそういった反応だった。
それ故に閉鎖的で閉ざされて自分で流したとは言え、悪い噂が広まりきっている学園と外の町ではリリーの評価が二分する……といった現象が起きていたのだ。
「あ、もちろん。不祥事などで自分が住んでいる所の領主が変わるとか税が変わるとかそういった話であれば一日も経たずにすぐに広まりますけど」
「それは……そうでしょうね」
確かに、庶民からしてみれば「貴族や王族同士のいざこざに関しては自分たちの生活に不利益な事がなければどうでもいい」と思うのは当たり前だろう。それに関してはリリーも同感だった。




