第4話
ただ、リリーの場合は元々弟が来るまでは大事にそれこそ「蝶よ、花よ」と育てられた……。
もちろん「黄金の瞳」という事も関係はしていると思うが。
しかし、目の前にいるこの人は違う……そう思えてならない。まるで「自分は生きているし存在はしている。でも、その存在を家族には完全に忘れられている」と言っているかの様にすら感じる。
きっと現にそうなのだろう。だからこそ、フェンリルに「訴えてみては?」と言われても「どうせ自分が言ったところで」と最初から諦めている。
正直、リリーも冒険者ギルドに関してはあまり詳しくはない。そもそもリリーも貴族でありながらブランド王国から出た事はあまりなく、あったとしてもそれはあくまで「婚約者の付き添い」または「視察」という形だ。
しかも、ブランド王国の貴族間で「冒険者ギルド」と言えばどちらかというと「野蛮な連中」とされていて近付く事すらあまり良しとはされていなかった。
そのせいか特殊な王妃教育を受けていたリリーも冒険者ギルドに関してはあまり詳しくはなかったのである。
「弟が生まれる前……と言っても三年もありませんでしたが、その短い期間でも可愛がられていたと思います。でも、弟が生まれて自分に魔法の才能がないと分かってからは……全然」
「何も?」
リリーの質問に、商人は「はい」と頷く。
「正直、怒られたり呆れられたり何かしらの反応があればこちらも反抗や反発をしていたでしょう。ですが、存在すら忘れられてしまったら何をする気力も起きません」
「しかし、お主は商人として働いているのだろう?」
そう、本当に何をする気力もないのであれば何もしければ良いはずだ。話を聞く限りこの商人の家はどうやら国でも商人としてはかなり名が通っている家柄に感じられる。
ただ、1つ疑問としてはそんな名家であれば申し訳ないが普通は出来の悪い人は表へ出ない様にするのではないだろうか。
リリーが知る限り少なくとも貴族であればそうするはずだ。そして、そんな状況に置かれている人間を見た事もある。
「それは……働かざる食うべからず……という事で仕方がなく」
「それはつまり……」
「えと、一応家には住まわせてもらえているんですけど、月にお金を支払っているんです。家に」
「家に?」
「はい。まぁ、家賃とか……衣食住を負担してもらっているのでそれに対する対価……みたいな感じですね。あ、でもこれは兄弟みんな同じですよ?」
「……それって、みんな同じ金額なの?」
リリーは不審に思い尋ねると、商人は「どうでしょう?」と苦い顔をする。きっとこれは何となく察しがついているのだろう。
自分が支払っている金額と他の兄弟の金額とかなりの差があるという事に……。




