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公爵令嬢は悪役になってでも自由になりたい。  作者: 黒い猫
第3章 王妃教育の賜物?
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第8話


「……しかし、お主が受けた教育にその二人が関わっていたとなると……やはりそやつらはお主に何かしらの役割を任せようとしていたのであろう事は明白だな」


「ええ。きっとお二人は私に内政。つまり国民の為になる事を私にして欲しかったのでしょうね」

「……なるほどな」


 それは多分「庶民の生活に関する事」というのは何となく分かった。そうでなければ「ブランド王国のありとあらゆる職業を体験する」という謎の王妃教育の意味がない。


 ただ、そんな二人の思惑など……きっとエミル殿下は知る由もなかったのだろう。

 

「それを踏まえて考えると……そやつらからしれ見れば本当になんて事をしてくれたのだ! という感じだろうな」

「フフ。そうかも知れないわね」


 最終学年の時には既に王妃教育は終了していたものの、それでも時間だけでなく労力もそれなりにかかった。


 その経験は決して無駄になっていない事くらいは今の状況を見ればよく分かる。


 ただ、リリーが受けた様な王妃教育を今からハンナ嬢に行うのは些か無理があるのもまた事実だ。


 貴族から王族になった際のマナーや教育に関する事は学園の勉強にも関連があったのでリリーから教える事が出来たが、王妃教育に関しては何も伝えていない。


 それ以上にリリー本人は気付いていないが、かなり器用だった故に最終学年を迎える前に終える事が出来たのだ。


「でも、きっとあの子なら大丈夫なはずよ」

「そうか?」


「ええ」

「自分の婚約者を奪った相手だぞ?」


「むしろ代わってくれてありがとうって思っているくらいよ」

「ハハハ! 随分と嫌われたものだな!」


 フェンリルが大声で笑ったちょうど計ったかのように「ぐぅ」とお腹が鳴った。


「ふむ。盛大に笑ったら腹が減ったな」

「そんなに笑う様な事だったかしら?」


「まぁ、一応自分勝手なヤツだったとは言え自分の婚約者だった上に一国の王子に対してなかなかな言い方だったからな」

「自分勝手って……」


「しかし、現にそうであったであろう? あやつの口から自分に関する事以外の話を聞いた事がないが?」

「それは……まぁ、そうかも知れないけど」


 そう言いながらリリーは焚火の近くにある焼きあがったキングトラウトが刺さった串を1つ手に取り「フーフー」と息をかけて冷ます。


「……ふむ」


 そして、フェンリルもリリーに倣って目の前にある串を1つ手に取った。


「ああ、焼き立てて熱いから気を付けて」

「うむ」


 焼きあがったキングトラウトは調理されたものよりもやはり何も調味料をかけていなかったからか些か淡白に感じたが、十分に美味しい。


「……ふむ。いつもは生でしか食べた事がなかったが……焼くと油がのっていて美味いな」

「ええ、何も味付けしていないのに……これだけで十分美味しいわ!」


「普段はこういった形では食べないのか?」

「そもそも温かい状態の食事を食べる事自体珍しいのよ」


「それはなぜだ?」

「毒見役の人が一通り食べた後に食べるから……かしら」


 これは爵位が上がれば上がる程厳しくなる。その為、リリーは生まれてから「温かい食事」をグランツ家ではあまり食べた事がなかった。


 もちろん、王妃教育の際に調理をした事はあったものの、それを食べたのは……失敗した時だけだった。


「……そうか。では、良かったな。食べられて」

「ええ!」


 フェンリルの言葉に笑顔で答えつつ、リリーはフォークやナイフなどの食事のマナーを気にせず、ただただ無心でキングトラウトをフェンリルと共に食べたのだった。

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