第7話
「コレでよし」
葉っぱがほのかに光り、リリーを明るく照らす。決して大きな光ではないがこれくらいでちょうどいい。
「それで、どこに向かうのだ?」
「ん? 卒業前にあった魔法実習の時に偶然見つけた家屋があって、それがちょうど良さそうと思って」
それを見つけたのは本当に偶然だったのだが、あのタイミングで見つけて今のこの状況……渡りに船とはまさしくこの事だろう。
「ほぉ? 家屋か」
「不思議よね。こんな魔物が多く生息しているのに人間の住めそうな家屋があるなんて」
話しながらリリーはフェンリルと共にその家屋を見かけた場所へと向かう。見つけたのは確かに偶然だったが、場所は覚えている。
「……この周辺だけがどうしてこの様な状況になっているのかを知らなければ……そう思うのだろうな」
「え?」
フェンリルのこの口ぶりはまるで「昔は違う。こうではなかった」と言っている様に聞こえる。
「知らないのか?」
「ううん。魔物が多くなって人が住めなくなったから……とは教えられたけど」
「王妃教育を受けた者ですらその程度なのだな」
「実際は違うのね」
「ああ、それは人間側が自分たちに都合よくしたものだ。実際は違う」
「そう……なのね」
フェンリルは魔物の中でも長命で有名な種族だ。きっとリリーが生まれるよりももっと昔。それこそ文献で出てくる様なの事も自分の目で見て知っているのだろう。
「その昔、シュタイン共和国がまだ王国だったという事は知っているか?」
「え、ええ」
シュタイン共和国は元々王族が仕切っていたという事はリリーも学園で学んでいたので知っていた。
「その頃に貴族共が自分たちの娯楽である狩りの獲物として魔物をこの地に放った事がそもそもの始まりだ」
「そ、そうだったの?」
まさか領地内に魔物を放ったとは。しかも、自分たちの娯楽の為に。
「だが、元々数が少な過ぎたかすぐに狩り尽くしてしまった。それ同時にその地の領主がこの貴族たちの狩りを観光の目玉にしようという動きがあり、放つ魔物の数と種類を増やした……そしてその結果が今だ」
「じゃあ今のこの状態は人間たちのエゴによって生み出されたという事ね」
何とも皮肉な話だ。
「そういう事になるな。そもそもヤツラは魔物の繁殖スピードを甘く見ていたというのもあるだろうが」
「じゃあ私が見つけたのは……」
「当時住んでいた領民たちの物だろう。物自体はかなり古いが造りは丈夫なはずだ」
「そう」
言われてみれば確かにあの家屋は相当丈夫そうだった。
「今となっては冒険者たちのレベル上げや魔法を使った事のない者の練習場と化しているな」
「そうね」
現にリリーも魔法学園での何度かこの場所で魔法の実践授業を受けている。これも何かの因果と言うものなのだろうか。
「この辺りではないか?」
「あ、うん」
考え事をしている内にどうやら目的地へ着いたらしく、フェンリルは辺りをキョロキョロと見渡し、そしてお目当ての家屋を見つけた――。




