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チート一家のゆる~り愛されライフ -英雄たちに育てられた少年、赤ん坊を拾う-  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第1章 乳児期編

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EP:\0007\機密事項.txt

本日2回目の更新です。


 シエルが来てくれなかったら、あの荷物を運べないところだった。まさかあんなに集まるなんて、みんな色々詰め込みすぎでしょ。思いついたものを片っ端から収納できるんだから、やっぱりマジックバッグって便利でいいな。そんな事を考えながら、ロックは街を歩く。



「シエルって俺の家がある場所、知らないよね?」


「あったりめーじゃないですか。普段あーしらは庁舎から出ねーですから」


「買い物とか行ったりは?」


「必要なものは支給品で事足りるです。服もこれしか持ってねーですし」



 シエルが着ているのは、白いブラウスに濃紺のベスト。そして同じ色のジャケットにスカートという、公務に携わる偽精体(ドール)が身につける標準ユニホーム。スカーフリボンのみ自由な選択ができるようになっている。



「えっ!? じゃあ寝るときとかはどうするの?」


「全裸に決まってんじゃねーですか」


「シャツとか貸すから、うちでその格好するのはやめてね」


「もしかして、あーしに添い寝とかして欲しーんです?」


「夜中にもラピスがお腹をすかせると思うし、せめて同じ部屋で休んでくれると嬉しんだけど……」


「そのコマンドを実行するには、好感度のパラメータが足んねーです」


「……あんまり意味不明なこと、言わないでくれるかな」



 二人の会話は尽きることなく、軽快な足取りで家路を進む。

 しかし街の大通りから外れ、どんどん辺鄙(へんぴ)な場所へ向かうロックを見て、シエルの中で疑問が膨らむ。一部の店舗経営者や事業者を除き、この街で働く大部分の人々は、公営住宅で暮らしているからだ。しかも向かっているのは商業地区ではなく街外れ。



「人気(ひとけ)のねーところに連れ込んで、いかがわしい事をしよーなんて考えてねーですよね」


「ラピスがいるのに、そんな事するわけ無いだろ。シエルは俺のこと、なんだと思ってるのさ」


「二次性徴を迎えたら毎日フルチャージ可能だと、あーしは知ってるです。警戒すんのはあたりめーです」


「変に偏った知識は消しちゃってもいいからね。それよりほら、あれが俺の家だよ」



 ロックが指さした先にあるのは、二階建ての大きい本宅。同じ敷地内に小さな倉庫。そして少し離れた場所にぽつんと佇む、牢獄みたいに堅牢な建物。大きく開けた場所には、複数のクレーター。周囲が植樹されて目立たないものの、明らかに街の建造物とは趣が違う。



「こんな場所にある家、最新の住宅地図にも載ってねーですよ」


「ここは魔力災害の調査チームが拠点にしてた場所なんだ。この辺りって瘴魔(しょうま)のスポットがいくつもあってさ、かなり長期間滞在したんだよ。そのときに使ってた施設を、そのまま利用させてもらってる」


「これが作られた経緯は納得するとして、どーしておめーがそんな場所に住んでるです」


「だってこの家は俺が二歳の頃から八歳になるまで、家族(チーム)全員で過ごした思い入れのある場所だからね」



 そこまで聞いてシエルは思い出す。ラピスの魔力強度を聞いたとき、瘴魔の影響を受けないとロックが言っていた話を。



「もしかして、おめーがいたから魔力災害が収束したですか?」


「俺が貢献したのは、みんなを瘴魔の影響から守ったくらいで、頑張ったのはチームのみんなだよ。大酒飲みで面倒くさがりだけど、やたら交渉(よわたり)がうまい第八王子のアンバー兄さん。精霊族(おっぱいずき)のスフェーン姉さんが支援と回復をしてくれたから、最後まで活動できたと思う。超火力の戦略級魔法で、瘴魔スポットごと周囲をふっとばしてた、エルフ族(ばくれつま)のシトリン姉さんはすごかったよ。虎獣人(ほうこうおんち)のオニキス兄さんは、美味しいお肉をいっぱい食べさせてくれる人でさ――」


「ちょっと待ちやがれです。ってことは、もしかしておめーは偽精体(ドール)の身で英雄認定を受けた、8号体に育てられたですか?」


「うん。ユイ母さんがいなかったら、俺はここまで大きくなれなかった」



 ロックはそのまま話を続ける。アムダールが社運をかけて開発し、ライゼリオン級の実証実験体として送り込まれたユイ。その保守を担当したのが、ドワーフ族(へんたいぎじゅつしゃ)のカッパーおじさんと竜人族(ちゅうにびょう)のクロコアイトおじさん。


 ハード面を担当していたカッパーは様々な魔改造を施して、最終的にとんでも性能の偽精体(ドール)にしてしまった。最初は不具合も多かったユイを、ソフト面からサポートしたクロコアイトは、裏技的なアビリティバブルをいくつも開発している。



「あーしのメッセージが消えた謎、なんかわかった気がするです」


「そういえばシエルが使ってくれた育児支援のアビリティバブルだけど、ユイ母さんが俺を育ててくれた時の経験をフィードバックしてるんだって」


「ちょっと聞きてーんですけど、そこまで貢献してるおめーが、どうして英雄と呼ばれねーんです」


「俺としては、みんなと楽しく旅をしてたって意識しかなくて、そんなのいらないって言っちゃったんだよ」


「もったいねーことしやがって……」


「でも後悔はしてないよ。称号なんかより大切なものを、みんなに貰えたから」


「それがこの家ってわけですか」


「家もそうだけど、この街もかな。それに今日から大切なものが一つ増えた。だから復興をもっと頑張らないとって思ってる」



 話を聞いていたシエルは、英雄たちの意図がなんとなくわかった。まだ未成年のロックにとって、英雄の称号は重すぎるからだろう。そんな栄誉を受けた孤児(ほしのいほうじん)がいたら、自分たちの身内に取り込もうと画策する人々が殺到するのは、想像に難くない。



「ちなみに、おめーの功績を知ってるのは誰なんです」


「家族(チーム)以外なら国王様と王妃様、あとは全世界で十人いないかな。もちろん支部長も知らないから、内緒にしといてね」


「ちょっと待ちやがれです。そんな機密事項をあーしに教えやがったですか!」


「シエルなら大丈夫かなって」


「親指立てながら、ドヤ顔すんじゃねーです! なんかハメられた気がするですよ……」


「ハメられついでに出来る範囲で構わないから、ラピスのことを助けてくれると嬉しいかな」


「自分の迂闊さが、うらめしーです。涙腺(るいせん)からメモリリークしてやがるです」


「シエルって本当に面白いよね」


「腹黒のおめーが言うなです!」



 悪態をつくシエルだったが、なぜか嫌な気分にはならないのであった。


8号体であるユイの名前は、フランス語の8[ユイット]が語源です。

次回は偽精体(ドール)たちがどのようにして、この大陸へ移動しているのか。

その秘密が明らかに。


明日の更新をお楽しみに!

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