EP:\0006\みんなの協力.txt
本日一回目の投稿です。
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受付フロアに戻ってきたロックは、偽精体たちのいつもと違う視線を受け流しながら、シエルの帰りを待つ。標準の終業時間を過ぎたフロアは、普段の賑わいを取り戻しつつあった。
メディカルルームに運ばれた人たちは、そろそろ回復した頃かな。などと考えていたロックの耳に、威勢のよい声が届く。
「おっ!? なんか今日はいつもと雰囲気が違わないか?」
「お疲れ様です、親方」
「おう! ロックもお疲れさん。ところでお前、なに抱えてるんだ?」
「実は旧倉庫街で、この子を保護しまして……」
抱いていた子供の姿を親方に見せると、フロア内が大騒ぎになる。なにせこの街にいる唯一の子どもだ。そして復興の最前線にいる人々は、次代を担う子どもたちのためにと、頑張っている人が多い。
「そんな場所で見つかるってことは、もしかして星の異邦人か!?」
「おそらくそうだと思います」
「うひょー、可愛いっすねー」
「この寝顔は、まさに天使ですよ」
「もし女の子だったら、将来僕のお嫁さんに……」
「お前ら、あんまり近くで騒ぐんじゃないぞ。赤ん坊が起きちまうだろ。それより誰かベビー用品を持ってるやつはいないか?」
「疎開のときにまとめた荷物が、まだマジックバッグの中にあったはず」
「俺も探してみる」
「儂らはベビーベッドを作るぞ。木工スキル持ちのやつは全員おもてに出ろ」
親方の号令で、数人のドワーフたちがフロアを出ていく。そしてロックの前にはベビー服やおむつが、次から次へと集まってきた。
「これはなんの騒ぎなんです!?」
「あっ、お帰りシエル」
「この大荷物、どっから湧いて出やがったです」
「みんながラピスのためにって、探してくれたんだよ」
「ならあーしの次元収納に入れといてやるです」
「ありがとうシエル。それで外泊許可は出たの?」
「支部長はまだ寝てやがったですから、秘書の30号体に許可をもらってきたです」
復興庁Z80A支部に所属する唯一の第二世代、それが30号体だ。老舗のヴィアンカテクノロジーズがカスタマイズした特別モデルで、組織運営に長けている。そんな彼女が判断したのなら問題ないだろう。どんどん次元収納へしまっていくシエルを見ながら、ロックはほっと胸をなでおろす。
「おーいロック。ベビーベッドが完成したぞ」
「こんな立派なものを作っていただいて、ありがとうございます皆さん」
「建築で使えない端材の再利用だから気にすんな。んで、色々やってから聞くのも何だが、どうするんだその子」
「そんな事も確かめずに、騒いでやがったですか……」
シエルにジト目を向けられ、フロアにいた全員がサッと視線をそらした。ロックはそんなシエルをなだめつつ、赤ん坊の体質と魔力強度、そして自分が持っている能力を説明する。
「まあ、そういう事情なら仕方がない。だがいくら数値が高いといっても、まだ赤ん坊だ。お前がしっかり見てやるんだぞ」
「はい、肝に銘じます」
「今日はあーしが付いてやるから、安心しやがれです」
「俺の家は男二人と女一人、育ててきた。男の俺でもある程度アドバイスできる。わからないことがあったら、いつでも聞きに来い」
「種族が違うからお乳ををあげるのは無理だけど、子育ては同じようなものだからね。遠慮せず頼ってきなよ」
人族や獣人族の男たちが次々ロックに声をかけ、街に少数いる妖精族と竜人族の女性たちは、使い方を説明しながらベビーケア用品を渡す。みんなの気遣いに何度もお礼を言い、ロックとシエルは復興庁を出て帰宅の途につく。
それを見送った人々の顔は、大きな仕事をやり終えたときのように晴れやかだ。
「なんていうか、ここって他の街とは雰囲気が違うっすね」
「自分たちが暮らしていた疎開先は、それぞれの種族がコロニーを作って、あまり交流しませんでしたよ」
「ここは人族の国から独立した領地だからな。ありとあらゆる種族に中立なんだ」
「それにこの街みたいな復興の最前線は、他種族とも手を取り合わないとやっていけん」
コンティネント大陸には、四つの主要な国がある。規模が大きい順に人族の国ケーニッヒ王国、獣人族の国ベスティエ、森妖精の国ヴァルト、少し特殊な山妖精の国ベルクだ。
そして海を渡った和州諸島連合国は、鬼人族や竜人族が多く暮らす人種のるつぼ。他に精霊界ニュンフェも存在するが、普通の方法では入っていけない。
「領主をやってるアンバー様は、異種族混合の調査チームに所属してたって話だし、その影響もあるだろ」
「それを言うならロックの貢献も大きいぞ。あいつのおかげで、まとまった現場がある」
「どこへ行ってもうまくやるからな」
「体の動かし方が、俺たち獣人族並に上手い」
「重い資材を軽々運ぶパワーもある」
「そもそも森林化した旧倉庫街を端から端まで移動して、その日のうちに帰ってくるとか絶対に無理だからな」
手先が器用で、細かい仕事を任せられること。飲み込みが早く、大抵の現場で即戦力になること。逆に魔道具が必要な作業はできないことを、今日から現場へ来た五人に聞かせる。そんな彼らも、魔力を吸い取る体質が手袋で抑えられていたというのは、初耳だったのだが……
「その……ロックっていう少年、いったい何者なんですか?」
「あいつはラピスって嬢ちゃんと同じ、星の異邦人だ」
「だけど育ての親が良かったんだろうね。素直で可愛い子だよ」
「あの子を見てると、ついつい応援したくなっちまう」
「そんな彼が引き取ってくれるなら、ラピスって赤ん坊もいい子に育つはずさ」
受付フロアの雑談スペースで繰り広げられている会話は、偽精体たちの耳にもしっかり届いていた。それを聞いていた彼女たちの心に、我々もできるだけ協力しようという気持ちが芽生えていく。
その結果をロックたちが知るのは、翌日の朝であった。
ヴィアンカテクノロジーズがカスタマイズした30号体の偽精体。
その略式はV30となり、PC-98シリーズに採用されたことで有名な、NEC製の8086(上位)互換16bitCPUになります。
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次話の投稿は午後を予定しています。
お楽しみに!




