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チート一家のゆる~り愛されライフ -英雄たちに育てられた少年、赤ん坊を拾う-  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第1章 乳児期編

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EP:\0002\特異体質.txt

本日更新の2話目です。

 ロックは動物たちが逃げ惑う地上へ降りず、持ち前の身体能力に物を言わせ樹上を移動する。枝から枝へジャンプし、時にはツタも利用しながら空中を駆ける姿は、野生児(ターザン)や蜘蛛男(スパイダーマン)のようだ。


 先へ進むに従い、どんどん魔力が濃くなっていく。

 同時に赤ん坊の泣き声も聞こえてきた。



「あーん、あーーん、びえぇぇーーーん」



 どうしてこんな場所に?

 疑問の尽きないロックだったが、ひとまず頭の隅に追いやる。子どもは総じて魔力強度が低い。いくら自分が近くにいるだけで、瘴魔(しょうま)から受ける影響が軽減されるとしても、こんな場所に長時間いたりすると、どんな悪影響があるか未知数だ。


 動物のいなくなった地上へ降り、声のする場所へ近づく。


 ロックは泣き叫ぶ赤ん坊の近くにしゃがみ、抱き上げようと手を伸ばす。ところが触れる直前に、その動きを止めてしまう。


 相手の魔力を吸い取ってしまう自分が、このまま素手で触っても大丈夫だろうか……


 その体質を抑える手袋があれば、周囲に影響を及ばさない程度まで制限される。しかしこの子からあふれ出す魔力を、そんな状態で鎮めることなんて出来そうもない。もっと自分の体質を制御できるように、トレーニングを積んでおけばよかった。


 後悔と躊躇(ためら)いを繰り返していたとき、赤ん坊の目がパチリと開く。そして探していたものが見つかったとでも言うように、ロックの指をキュッと掴む。



「あー、あー、きゃうー。きゃっきゃ」


「俺の手に触っても、大丈夫なのか?」


「あうー、きゅふふふふ」



 右手を伸ばした赤ん坊がロックの指に触れた瞬間、それまでのギャン泣きが嘘のように収まる。笑顔で差し出される反対側の手を見て、ロックは赤ん坊をそっと抱き上げた。



「もう大丈夫だからな」


「うー?」


「とりあえず、街へ行こうか」


「うゆぅぅぅ……」



 ロックに頭を撫でられた赤ん坊は、気持ちよさそうな声を漏らして目をつぶり、やがてそのまま眠ってしまう。



「魔力の過剰放出は、泣いてる時だけみたいだな」



 直接肌と肌が接触しているのに、赤ん坊は魔力枯渇に陥った様子がない。自分とこれだけ長時間触れ合えるのは、偽精体(ドール)や一部の種族だけかと思っていた。なんだか特別な存在に思えてきたロックは、腕の中で眠る赤ん坊を改めて見つめる。純真無垢な体に特定の種族を示す証はなく、どこからどう見ても人族の女の子だ。


 とりあえず魔力に関しては、専門家に診(み)てもらおう。そんな事を考えながらバックパックをおろし、中から大きなタオルを取り出す。汚れていた赤ん坊の背中を軽く拭き、タオルで優しく包み込む。


 脱いだ上着をバックパックの中へ入れ、機材を覆ってクッションに。赤ん坊の体が動かないよう調整し、バックパックを前持ちする。



「森で両手が使えないのは危ないから、少しだけ我慢してね」



 ぐっすり眠っている赤ん坊に声をかけ、揺れが最小限になるよう移動を開始。もし途中で目を覚ましたとしても、ゆりかごの中にいると錯覚するほど、心地よく穏やかな動きで運ばれるのだった。



◇◆◇



 全力で走れなかったため、行きより時間はかかってしまったものの、一般作業員が定時を迎える前に、ロックは復興庁へ到着。朝と違って来庁者は少なく、受付窓口はいくつも空いている。


 今回の報告は庶務課や整備課、それに環境課でも構わない。しかしロックが向かったのは、支援課にあるシエルのいる窓口だ。



「ただいま、シエル」


「前回より三十分近く早(は)えーですが、仕事はサボってねーですよね?」


「うん、ちゃんと記録を取ってきたよ」



 作業ログと測定値の一覧をロックから受け取ったシエルは、手元にある端末を操作してスキャナーの中に放り込む。そして表示された内容に不備がないことを確認し、改ざん防止のフィンガープリントを押す。



「受理は完了したです。危険手当も出てやがるですから、せいぜい贅沢するがいーです」


「ありがとう、シエル。それともう一つ……」



 何から切り出そうかと、ロックは悩んだ。間違いなくこの件は、支部長や領主様に指示を仰がなければならない。普通だったらありえない出来事を、どうやって報告すれば正確に伝わるだろうか。


 この子は特異体質だ。自らの意思で制御できない魔力が暴走したとき、自分が近くにいないと取り返しのつかない事態になってしまう。しかし子育て経験がない自分では、どう足掻(あが)いても手に余る。それをうまく伝えて、協力してもらわなければ。


 まずは森の中で発生していた状況から?

 先にこの子の体質を報告したほうが良いかも?


 いやそんな事より、今すぐ必要なことを忘れちゃいけないだろ……



「こう見えてもあーしは忙しいんです。言いたいことがあるなら、さっさと言いやがれです」


「あー、えーっと……おっぱいを飲ませてください!」


「・・・・・・」



 予想を斜め上に突き抜ける言葉を聞き、シエルはジト目でロックを睨む。

 すぐさま視線を上に向けると――



「ピー、ヒョロヒョロロロー……。通報したです」


シエルが内蔵しているのは、アナログモデムだったのか!?

待て次回!!

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