↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジェットのぼうけん  作者: ジョーカー
終章前半:勇者じゃない
91/131

到来

 魔王を倒した、ジェット達。彼らは彼らなりの日常へ戻ったのだった。


 そして、一ヶ月後──

 あの時の三人は休みが合ったので、街の中央に集合した。

「おーっす。待ったー?」

 ジェットが、一番遅れて来る。

「あァ、今着いた所だ。」

「うむ。じゃあ、まずはゲーセンだったか?」

 三人はこのメンバーに愛着が湧いていた。おそらくこのメンバーの誰が欠けても、魔王を倒すのは不可能だっただろう。

「よっしゃあ、行こうぜ!」

 三人は、遊びに出かけたのだった。自らの手で勝ち取った平和を、満喫したのだった。

 もう、自由の邪魔をする者は居ない。彼らは、勝ったのだ──

「……」

 ジェットは、怪訝な顔で後方を向いた。

「どうした、ジェット?」

「何か居るのか?」

 ジョーとローレンスが、小腹にケバブを齧りながら彼と同じ方を向く。しかし、そこには特に怪しげな人影は無かった。

「……いや、ちょっと嫌な視線を感じてな。」

「嫌な視線だァ?そんなの、何時でも感じるだろうが。」

 世界を救った勇者とだけあって、周囲の目は好奇な色で彼らをチラ見する者が多かった。しかし、その尽くがジョーの眼光に負け、視線を逸らす。

「いや……周囲を警戒しておこう。ただのパパラッチもどきなら、良いのだがな。」

 ローレンスはそう言い、ジェットとジョーは頷いた。勘のいいジェットが何かに気付いた以上、ただ事ではないのは確か。

 しかし、今は遊びの場。なるべく細かい事は気にせず、楽しんでおこう──


 特にこれと言った事件は起こらず、三人は遊んでいた。そして昼飯を食べようと、レストラン街を歩いていた。

「さっきケバブ食ったのに、まだ食うのかよ。」

「王室前で突っ立ってるだけのテメェとは、必要なエネルギーが違うんだよ。」

「そう言うな、ジョーよ。ジェットは我らの中で一番優秀なだけの事。」

 ジョーをなだめた後、ローレンスはニヤニヤと笑った。

「それに、より効率的にエネルギーを補給できる弁当を作ってくれる奥さんまで居るそうじゃないか。」

「あァ!?」

 ジェットは、キレ気味で彼に向く。しかし、その雰囲気は徐々に大人しくなった。

「バッカ、レシアさんは……何か、お母さんっぽい事してくれる。」

 生活の支援をしてくれる以上、文句は言えない。そう思って、否定的な事は言わなかった。

「オイオイ、あのレシアがまさかのお母さん化かよ……」

「まぁ、人間と共存している以上は……」

「うん、すっごく良くして貰ってるよ……一人よりゃ、ずっと生活が良くなったわ。」

 ジェットはそう言うと、ジョーに向いた。

「所で、あの子分はどうした?」

「あァ、モルドレッドか。たまに不意打ちに喧嘩仕掛けてくる。まだ負けてねぇが、こないだダウンを許しちまった。」

「なんだかんだで、戦いは続いてるんだな……」

「ふぅん、俺とどっちが強い?」

 ローレンスが、妬き気味に聞く。

「テメェの方が強いに決まってんだろうが。」

「あ、あァ……」

 彼はジョーの答えを聞き、恥ずかしそうに顔を逸らした。

「つーか、テメェも日に日に強くなってるけど……何か、特別な修行でもしてンのか?」

「ああ……最近、ベリアが家に住み始めてな。たまに修行をつけてもらっている。」

「ベリアがかッ!?」

「西の復興してんじゃねぇの?あいつ。」

「家から西へ飛んでる。」

 メンバーは、今の自分の生活の話に花を咲かせながら、進む。

「でも、やっぱりレシアさんが来てくれて俺は幸せだぜ。色々うるせぇ事は言うけど、家事とか料理とか色々してくれてさ……」

「やはり母親ではないか。」

 ローレンスがそう言うと、三人は笑った……

「へぇ、そうなんだ……」

 突如として、背後からシリアスな声が聞こえた。三人は振り向き、そっちに向く。

「……?」

 そこには、黒髪ロングで、自分達と同い年程度の女が立っていた。ジェットがその顔を見て、嬉しそうな顔をした。

「あぁ!亜門さん!久しぶりじゃん!元気してた!?」

 彼は、亜門と呼んだ彼女に歩き寄る。

「何だジェット、知り合いか?」

「ああ、亜門龍奈さん!学生時代クラスの委員同じでさ、頭も良くて、よく俺に勉強とか教えてくれた人だ!そんでもって、アカデミーの卒業試験で2位だった人!いや〜、まさかこんな所で会えるなんて!」

「うん……ジェット、久しぶりだね。」

 彼女は、ジェットの目を見る。その顔は、どこか悲しげだった。

「あの日の事が、ウソみたいだね。」

「あ、ああ……うん、そうだな。それじゃあ俺らここから遊びに行くから──」

「目を逸らさないで。」

 彼女はジェットの手を掴み、引き止めた。

「どうして……どうして、私じゃ君を救えなかったの?どうして、君はその笑顔を私に向けてくれなかったの?」

「……ッおい……」

 その時彼は、確信した。先程から感じていた妙な気配の正体は、コイツだと。

「私が弱かったから!?私が君より劣ってたから!?そうでしょ!?」

「オイ、そこまでにしておけ……!」

 ローレンスが、その手を引き剥がそうとしたその時だった。彼女は彼の鳩尾に掌底し、ぶっ飛ばした。

「!!!?」

 猛スピードで吹っ飛び、そこらのレストランの壁に激突した。そこが粉砕し、木材やらガラス片やらが舞い散る。ゴトリと食品サンプルが落ちて、二、三回転した。

「ン何ッ!!?」

「ローレンスッ!!」

 二人が驚くと同時に、そこら辺の通行人が叫んだ。尋常ならざる状況に、四人を中心に輪が広がった。

「邪魔しないでよ……!!今は、私とジェットくんが話してる最中でしょ!?」

「ぐ……!」

 ローレンスは難なく起き上がり、首をゴキゴキ鳴らす。そして、血混じりの唾をそこらに吐いた。

 彼女はそんな彼の方を見向きもせず、ジェットに迫っていた。

「ねぇ、私こんなに強くなったよ……?こんな力を手に入れられたんだよ……?だから、お願い……!私を見てよ!あの時向けたあの優しい笑顔を、もう一回だけ私に見せてよ!私なら、君を守ってあげられるから!君の傷跡も痛みも全部、忘れさせてあげるから!だから──」

 彼女は泣きながら、ジェットに縋る。彼はそんな彼女を引き剥がし、顔面に本気の両足蹴りした。

「……お断りだ……!!」

 着地しながら、彼女に眼光を向ける。ジョーはそんな彼の横顔を見て、ゾッとした。

 あの冒険の最中ですら見せなかった、怒りと憎悪が練り込まれた表情。こんなジェットを見るのは、彼も初めてだった。

「お、オイ……ジェット……」

「久しぶりに会ったと思えば、嫌な事思い出させやがって……!!テメェ、マジで殺してやろうか……アァ!?」

 ジョーの静止にも関わらず、ジェットは龍奈に怒りを向ける。彼女は起き上がりながら、鼻血と涙と拭った。

「……そう。まだ、私のものにはならないんだね……じゃあ、仕方ないよね。」

 彼女が、指を天に向ける。

「……」

「……あぁ?」

 必然的に、その場に居た者は上を見上げる事になった。

 見上げた空──雲混じりの青空に、突如として黒い点が現れる。それは次第に大きくなった。それはここから観測すると野球ボール程度の大きさで止まる。そして、何かが降りてきた──

「アハハハッ!」

「この星の命を滅ぼせばいいのね!」

 魔物だ。魔物が、この星に降り立ってきた。それも、サキュバスやデーモンといった魔物から、下半身が蜘蛛のような魔物、植物で体組織を形成した魔物といった、異形の魔物達だった。しかも、その何れも美しい女性の姿をとっていた。

 魔物達は地に降り立つなり、そこら辺の人々を襲い始めた。

「クソッ!!」

 ローレンスは上着を脱ぎ捨て、手刀に神力を纏う。そして、魔物の群れに突撃しようとした。しかし、その眼前に数本の刀が突き刺さった。

「なにっ!?」

 彼は急ブレーキして、上を見上げる。

「やぁローくん、久しぶりだねぇ……」

 髪を結った、和服の美人が降りてきた。ローレンスはその顔を見て、ギョッとした。

「イブキ姉さん……!?」

 知っている顔だ。我が知らないはずがない。何故ならば、彼女は我の許嫁だった女だ。

「うふふ、覚えてくれてたのね……じゃあ早速だけど、死合いましょうか。」

 彼女の周囲が光り、そこから何本か刀が出てくる。その内の二本を両手で取り、二刀流の構えを取ってから、それをローレンスに向ける。するとその周囲の刀が彼の方を向き、一直線に飛んだ。

「ちぃいっ!!」

 ローレンスはサングラスを外し、手刀でそれらを次々に切り落とした。切り落とし終わった後、今度はイブキが突撃してきて、斬りかかった。

「ぐっ!!」

 斬撃を、手刀で受け止める。それはとてつもない重さで、神力越しの手刀がビリビリと痺れていた。

「く……ジョー、市民を助けろ!!俺は忙しい!!」

 ローレンスがそう言うと、その横からジョーが飛び出す。

「言われずとも……!!」

 彼はそこで地面に踏ん張り、跳んだ。しかし、突如として何処からか飛び蹴りが飛んできて、ジョーを打ち抜いた。

「っぐはぁあっ!?」

 ジョーを蹴った影は、彼を追いかける。そして拳を振るい、猛烈なラッシュを仕掛けてきた。

「……!!」

 ジョーは、嫌な事に気付いた。この拳の感じ……ラッシュの癖……覚えている。忘れるわけが無い。これは、己の怨敵……!!

「集中力が無いのは、相変わらずですわね。」

 考えていたら、背後に回り込まれた。彼女は、ジョーの背に正拳突きして、ぶっ飛ばした。

「ーーーッッッ!!!」

 彼は大通りを切るように吹っ飛ぶも、体勢を整えて着地する。そして、改めて敵の方を見た。やはり、覚えのある顔だった。

「テメェ……!!!」

「御機嫌よう、また会ったわねぇ。野蛮なお猿さん。」

 金髪でツインテールの、お淑やかで胸の大きいお嬢様風の女……水龍院カナコ。その人だ。

 それを確認した瞬間、彼が今まで抑えていた怒りが噴き上げた。

「その顔ッッッ──」

 地に足を踏ん張り、怒りのままに拳を握り、そこに魔力を込める。怒りは魔力を炎に変え、その拳は紅蓮に包まれた。

「──ン殴らせろぉオオオーーーッッッ!!!!」

 そして、猛スピードで彼女に突撃する。

「うふふふっ……もう、私は以前の私とは違いますわ……今度は、ブッ殺してやりますわ。覚悟なさい……!!!」

 水龍院は拳を握り、彼と激突したのだった。

 ジョーとローレンスは、それぞれの敵と攻防する。ジェットも、龍奈と攻防していた。

「そんなものなの……?魔王を倒した力ってのは……!」

 拳と拳が飛び交う、ハイスピードのバトル。しかし、ジェットが劣勢だった。

「ぐ……!!」

 純粋な手数とパワーで、押し負けそうになっている。

「私は、君より強いんだ……!!」

 そう言いながら彼女は飛び退き、距離を取る。そして懐からナイフを取り出し、投擲した。

「くっ!?」

 それを避けるも、刃が頬に掠り、血が垂れる。

「やぁあっ!!」

 次の瞬間、彼女は既にその眼前にまで迫っていた。そして、ジェットの顔面に思いっきりハイキックした。

「ぐぁああっ!!」

 彼はぶっ飛んで、そこらに倒れた。そして、立ち上がろうとする。

「ハァッ……ハァッ……!!」

「ぐぁあああ!!」

「ガハァアッ!」

 ジョーとローレンスが、左右に倒れてきた。二人も、押し負けていたようだ。

「な、なんてこった……強すぎる……!!」

「っクソが……!!」

「ふむぅ……」

 三人の前に現れた、因縁。そして、空に現れた暗黒と、そこからやってきた魔物──

「……いくぞぉおおおッッッ!!!」

 ジェットは、再び立ち上がる。その身体に神力を込め、聖なる鎧を纏った勇者と化した。

「手加減無しだ……!!」

 ローレンスはそう言い、燃えるような青のオーラを纏い、眼光を青に光らせた。

「はぁあああッ!!」

 ジョーも燃え盛る紅蓮のオーラを纏い、その目を赤黒く染める。

 三人は、再び立ち上がった。世界を救ったその力を惜しみなく解放し、彼女達と向かい合う。

「だーーーッ!!!」

 ジェットが先頭を走り、突撃したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。