光輝く我が愛の剣
「スッゲ、すっげぇっ!切り込んだ剣が、筋肉で弾き返された!」
「この野郎ォ……!!」
ジョーの相手……兜を深く被った、無邪気な騎士。兜に変声期のようなものがあるのか、声だけでは男か女か判別不能だ。
その武器は、煌びやかに輝く銀の剣だ。
真面目に戦わないモルドレッドを相手に、ジョーはイラつきを隠せずにいた。
「あっ!怒ってる怒ってる!あはははっ!筋肉がエロい上に、めっちゃ可愛い!一粒で二度お得だなぁ!」
「だァアまァアれェエエーーーッッッ!!!」
ジョーは力を全開放する。力の前で服は燃え尽き、上裸になった。とてつもない力に吹き飛ばされそうになりながら、モルドレッドは笑っていた。
「オォッ!マジエロすぎかよっ!堪んねェ!お前は殺さずに、一生玩具にしてやるよ!」
「喋るなァアッ!!」
ジョーは走り出し、モルドレッドの顔面に両足蹴りした。とてつもない威力のソレは、その人を思いっきりぶっ飛ばす。ぶっ飛んだ所へ、容赦なく追い討ちしに走り出した。
「ヒャハハハハッ!!」
拳を振るい、重い一撃を何度も叩き込む。
「っがはぁっ!!いいぜいいぜ!」
モルドレッドは兜の合間から血を吐きながら、反撃した。この斬撃も重く、ジョーの胸をぶった斬る。
「っ!!」
すぐに跳び退き、片手でエネルギー波を放つ。しかしモルドレッドはそれを剣で弾き飛ばし、彼に迫った。
「あだだだだだだ!!」
「オラオラオラオラ!!」
そのまま両者は、拳と剣で攻防し始めた。どういう訳だか、そこらに火花が散っている。
「しゃああっ!!」
振り下ろされた剣を、腕で受け止める。そして、鍔迫り合いになった。
「ぉおおお……!!」
「だッッ!!」
モルドレッドは彼の脇腹に膝蹴りした。
「ゴハァッ!?」
あまりの威力に彼はぶっ飛び、ゴロゴロと転がっていく。そうして、仰向けに倒れ込んだ。
「そこぉっ!!」
モルドレッドは飛び上がり、剣で突き下ろしにかかる。
「ハッ!!」
ジョーは笑い、まずはそれを転がって避ける。そして、足払いをして、モルドレッドをすっ転ばせた。
「ふんっ!」
「はっ!」
向こうもこちらもすぐに持ち直し、向かい合った。
「……いいねェいいねェ!そうだよそうだよっ!これが私が求めてたモンだよ!!どっちかが、力尽きるまで続ける純粋な戦いっ!正直、ランスロットやゴーヴァン達の人間への復讐って奴に興味はなかったけど、私はこの為に母上を慕ってるンだ!!」
「へェ?強いやつと戦うのが好きなのか?」
「モチのロン!特に、お前みたいな単細胞な筋肉エロ男とだと最っ高!」
「……」
学生時代、エロいとはよく言われたが、こういう意味じゃない。コイツ、どこか可笑しいのかも知れない。しかし……
「まァ、俺も同感できるぜ。いや、同感しか出来ねェ……俺が褒められた事っつったら、喧嘩の腕っ節ぐらいだからよォ!!」
ジョーは走り出し、拳でモルドレッドの顔面をぶん殴った。兜越しとはいえ、ジョーの拳。ダイレクトに衝撃が伝わる。
「っ!!」
モルドレッドは靴を擦らせながら後退するも、踏ん張って止まった。そして、彼を迎撃しにかかる。
「はぁああっ!!」
その剣が、バチバチと電光する。そうして電光は剣に集中し、大きくなっていった。
「くらいなぁ!」
神力と電の魔力が練り込まれた剣で、ジョーに斬撃した。それは凄まじい威力で、彼を焼き焦がす。
「ぐぁああああッッッ!!!」
「あはははっ!どうよ、アタシの白銀の魔剣の力!とっても刺激的だろォ!?」
バリバリと焼かれ、苦悶の表情をするジョーだったが、すぐにその顔はケロッとした半笑いの顔に変わった。
「あァ、だが少し物足りねぇな。」
「んなっ!?」
次の瞬間、彼はモルドレッドの頭を掴み、自分を焦がしてる電撃をそちらへ移した。
「んぎゃあああッッッ!!?」
「オラァアッ!!!」
そして、無造作に蹴り飛ばした。その体は壁に叩きつけられる。
「いってぇ……!!」
「ヒャッハァアッ!!!」
ダメージに揺らいでいるスキを見て、ジョーは跳び上がった。足の裏を天へ向け、渾身のかかと落としを放つ。
「チィイッ!!」
モルドレッドはそれを避ける。標的を外した踵落としはキャメロットの地面を破壊し、砂埃を撒き上げた。
「くそっ!?」
「オラァアッ!!」
拳が砂埃を突き破り、モルドレッドの顔面を打った。しかし、その拳では揺るがなかった。
「たぁあっ!!」
「!!」
剣で腕を斬られる。切り落とされはしなかったが、深い斬撃が入ってしまった。
「しゃらぁあっ!!」
モルドレッドはその勢いに乗り、ジョーに猛攻する。彼も拳を固く握り、迎撃した。
二人はぶつかり合い、攻防する。本気同士の一進一退の攻防は、激しさを極めた。
「……」
戦いの最中、ジョーは何かを感じていた。
他の奴とは違う、この男か女かも分からん存在から感じる何か……それは、シンパシーであった。
馬鹿な……なぜ、こんな奴から共有感を……?
「負けるかぁあっ!!」
「ほざけぇええっ!!」
攻防は、更に加速する。疾風のように両者の攻撃が打ち合い、既にその速度は人智を超えていた。
──そうか。コイツは、俺と同類だ。正義とか悪とか、そんなものは自分には関係なくて、自分の楽しみの為に行動するエゴイスト。その楽しみの方法こそ、闘争……そう、くらべっこだ。
ならば、尚更負ける訳にはいかない。
「しゃああっ!」
モルドレッドの剣の振り下ろしを、半身にして避ける。そして、合わせざまに顎をアッパーした。
「ごふっ!?このっ!!」
次に、首を狙った一文字斬り。それを身を屈めて避け、カウンターに脇腹へパンチした。
「ぐはぁあっ……!!」
「おらぁああああッッ!!!」
揺らいだ所に、力任せの無造作なアッパーを顔面に叩き込む。それはクリーンヒットし、モルドレッドの体が空中で幾数回転した。兜の間から噴き出てる血が、円を描く。
「~~~ッッッ!!!」
意識を強く保ち、体勢を整えて着地する。
「くそっ!しゃあねぇ、奥義を使うぜ!」
剣に神力と雷魔法を込め、充実させていく。
「アァ?さっきの雷鳴剣じゃねぇか。」
「違うんだな……!!」
剣に纏われた力が、勢いよく増幅する。そのまま天まで伸びるかと思われたソレは、剣に圧縮された。
「あぁ……!?」
「かぁあああ……!!」
「面白いッッ!!」
ジョーは接近し、無数の攻撃を放つ。それは剣によって弾き止められた。
「ッ……!!」
拳から、出血する、雷電を纏った剣が、拳を止めると同時に斬撃していたのだ。
「らぁあああっ!!」
剣を地面にかすらせながら、ジョーの胸を切り上げた。斬られる寸前にスウェイバックしたので、致命傷は逃れた。
「グッ……!!」
「見せてやるっ!!光輝く我が愛の剣ーーーッッッ!!!」
モルドレッドは剣を振り下ろす。そこから、雷電を纏ったとてつもない威力のエネルギー波が放たれた。
「しゃらくせぇえっ!!正面から打ち砕いてくれるわぁあああッッッ!!!」
放たれるエネルギー波を前に、ジョーは拳を握る。そしてそこへ向かい、跳んだ。その体は、エネルギー波に飲み込まれてしまう。
「ば、馬鹿なっ!?正気かあいつ!?」
放った本人が、絶句する。明らかな自殺行為に見えたが、彼にとってはそうではなかった。
「オラオラオラオラオラオラオラァ!!!!」
なんと拳をエネルギー波に連打し、押していた。とてつもない熱量と、纏われる雷電。拳がただで済むハズが無い。
「しゃあああッッッ!!!」
それにも関わらず、遂に彼は最後の一撃を以てエネルギー波を砕いた。それは霧散し、魔力も神力も0へと還ってしまう。
「馬鹿なぁああっ!!?」
「がぁあああッッ!!」
ジョーは猛ダッシュで、モルドレッドの腹にパンチした。ダッシュの助走を乗せた拳はとてつもない威力で、モルドレッドの鎧に亀裂を入れた。
「ごぷっ……!!」
吐血し、兜の下で目を見開く。
「まだだっ……!!」
しかしすぐに歯軋りし、ジョーの頭に剣を振り下ろした。それに合わせ、彼は頭に力を込める。
「ふんぬぁあっ!!!」
「!!!」
なんと、モルドレッドの剣が彼の頭に負け、弾き飛ばされてしまった。剣は持ち主の遥か後方に、スコンッと刺さる。
「な……!!?」
「ヒャハハハ……!!!」
ジョーは額から流れ出た血を舐め取り、一歩を踏み出す。そして拳と足を振り、モルドレッドに猛攻した。
「うぐぅうううっ!!?」
力任せのラッシュは、防御すら無意味。当てられた所から、破壊されていくのだった。
「オラァアッ!!」
「!!!」
モルドレッドの腹に、膝蹴りが叩き込まれる。それは鎧を打ち砕き、肌を露出させた。
「が、がはぁあっ……!!」
腹を押さえ、悶絶する。ジョーはその前で、拳をギュウウウッと握っていた。
「これで──」
握った拳に神力が宿り、輝く。その筋肉も、まるで金属のような力こぶを浮かび上がらせた。
「終わりだぁあああッッッ!!!!」
その拳で、モルドレッドの顔面をぶん殴った。その体をぶっ飛ばして、壁へ叩きつけた。
「ッッッ……!!!」
モルドレッドの兜に、亀裂が駆け巡る。そうして脆弱性に耐えきれなくなった兜は、自壊した。
「……あっ……!」
「……」
ジョーは、無表情ながら驚いた。なんと、モルドレッドは女性だったのだ。
三白眼でツインテールの、自分と同い年ぐらいの女の子……
「ぐぐぐ……がはっ!」
彼女は起き上がろうとするが、崩れてしまう。どうやら、既に戦闘不能のようだ。
「こ、殺せよ……!どうせ、負けたやつはそうするんだろ……?」
「……あァ、確かに殺せる。だが、俺は気分屋なんでね。お前さんは殺さねぇ。」
ジョーは膝に手を置き、モルドレッドの顔を覗き込む。
「え……!?」
「それに、お前さんは俺に敵意を抱いてはいたものの、殺そうとまではしなかった。つーか、さてはテメェ人っ子一人も殺した事ねェだろ?」
「……」
ジョーの言う通りだった。彼女には、人を殺した経験が無いのだ。戦いは好きだが、殺戮は好きでは無い……その実、彼女には人としての良心を捨てきれなかった。しかし、人間を憎む兄弟達や、自分を愛してくれた母上を失望させたくなかった──その矛盾に、ずっと苛まれ続けた。
明るく振る舞った。調子者を演じた。不器用な失敗ばかりをわざと繰り返していた。しかし、彼女の心のつかえは取れなかった。
「……テメェなら、まだ戻れる。まだ何も失っちゃいねぇんだ。」
「まだ……戻れる……」
「さぁ、選んどきな。人として1からやり直すか、魔物として腹を括るか──」
言葉の途中で彼は、踵を返して背を向ける。
「前者なら良し、後者ならこの背中目掛けて剣でもぶっ刺すといい。ただしそン時は……」
振り返ったその目は、殺意と威圧に満ちたものだった。とてつもない悪寒と恐怖が、彼女の背筋を撫であげる。
「……」
「人として1からやり直す時は、修行でもし直して来な。リターンマッチなら何時でも受け付けてるぜ。」
「……!ほ、ホントか!?」
ジョーの言葉に、食い気味になるモルドレッド。それを聞き、彼は少し笑った。
「あァ……飯食ってる時、寝てる時、女抱いてる時、ゲームしてる時、行住坐臥何時でもかかってきな。そんじゃ。」
ジョーはそう言って手を振り、歩き去った。その背を見つめながら、モルドレッドは動くことは無かった。
満身創痍ながら、その目は輝いていた。そして胸から出た感情が、そのまま口から突き出てきた。
「か……カッケェ~~~……!」
彼女は、彼の我道に憧れを覚えたのだった……




