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ジェットのぼうけん  作者: ジョーカー
中章:激震魔大陸
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狂瀾こそ我が武の極限

「しゃああっ!!」

「ごぁああっ!!」

拳と拳がぶつかり、衝撃が轟く。両者は自分の武器を振るい、激しく攻防した。そこらに爆発のような衝撃が連続し、攻防は加速する。

「ふんっ!!」

冒涜的な触手が(くう)を這いずり、パルジファルに向かう。

「かぁあっ!!」

彼は槍を使うでも手を使うでもなく、それらを気合で吹き飛ばした。気合に当てられた触手は、爆ぜるように引きちぎれてしまう。

「きゃっ!?」

「じゃあああッ!!」

そのまま槍を高速で振り、彼女を切り裂いた。

「く……!」

斬撃が体の節々に叩き込まれるも、上手い具合に致命傷は避けていた。

「死ね!!」

彼はそんな彼女に向かい、鋭い前蹴りを放つ。しかしそれは避けられ、逆に腹へキックされた。

「ごふぅっ!?」

「はっ!!」

左の拳を固め、顎へアッパーする。それは躱され、反撃の正拳突きが腹に入った。

「がはぁあ……!?」

「せいっ!!あだだだだっ!!」

更に顔面へ蹴りが叩き込まれ、鼻血を噴き出す。間髪入れずに胸に蹴りが連打され、吐血する。

「おらぁあっ!!」

トドメに、無造作な槍の薙ぎ払いで、思いっきりぶっ飛ばされた。ぶっ飛ばされてる最中に体勢を整え、壁に張り付く。

その目の前に異次元への深淵なる穴を作り出し、触手をそこに突っ込んだ。

「あだだだだだっ!!」

パルジファルの周囲から、同様の穴が無数に開く。そこから触手が飛び出し、彼に集中鋭打した。

「無駄だぁあっ!!」

白銀に輝く槍を振って攻撃を弾きながら、レシアに接近する。いい距離にまで来たところで急ブレーキし、槍を振りかぶってぶん投げた。

「あははっ!」

レシアが不敵に笑うと、彼女は異次元への穴へ吸い込まれ、姿を消す。標的の消えた槍は、虚しく壁へと突き刺さってから、パルジファルの手に瞬間移動した。

「なにっ!?」

「こっちよ。」

レシアはその背後に現れ、触手でその背を連打した。何度も触手を連打され、ぶっ飛んでいくパルジファル。

「ふんっ!!」

しかし彼は難なく体勢を整えて壁を蹴り、レシアに飛び蹴りした。蹴りは彼女に炸裂し、その体を大きく吹っ飛ばした。

「きゃあああっ!!」

「はははははっ!!」

槍を構え、彼女を追う。

「くっ!」

彼女は異次元への穴を開けて、そこに吸い込まれた。彼はその瞬間に止まり、辺りに目をやる。

「むっ……!!そこかっ!!」

白銀の槍が輝き、それを適当なところにぶん投げる。

「!!!」

その先にレシアが現れ、槍に貫かれてしまった。

「がはぁあっ……!!?」

起きた事態を飲み込めず、大きく後退してからパルジファルを睨んだ。

「ぅ……ぐ……!!」

何よ、今のは……この子、未来予知の類でも得てるの……?それに、あの身体能力……さっきまでとは、桁外れに大きく跳ね上がってる……!

「これは狂気を持って、無我の境地に達する奥義……最低限の理性を残し、それ以外を全て力に昇華する。要は、何も気にせず邪魔者をぶっ殺す為の技って訳よォ!!」

彼は踏み込み、槍を振るう。彼女は掻き回されるように、槍の刃に切り裂かれた。

「くぅうっ!!」

触手を振るい、槍での猛攻を凌ごうとする。お互いの武器が無数に見えるような速さの攻防が繰り広げられる。しかし、鋭くなりゆくパルジファルの猛攻に、手数で負け始めた。

「ぜぁあっ!!」

彼は攻防の最中に手を向け、エネルギー波を放つ。レシアはそれに直撃し、ぶっ飛んだ。

「がはぁっ!!!」

「消しとべぇえっ!!!」

白銀の槍が輝き、突き出される。そこから竜巻のように神力が噴射され、彼女に襲いかかった。直撃すれば、彼の言う通りに全身が消し飛んでしまうだろう。

「くぅうっ!!」

咄嗟にそれを飛び避け、着地する。

足が地についた瞬間、跪いてしまった。

「ッハァーッ……ハァーッ……!!」

内なる邪神の力を宿した体に、遂に限界が来た。この変身の維持、度重なる再生、攻撃によるダメージ……それらが積み重なり、もう満身創痍の状態だ。

「限界のようだなぁ、三下?」

「!!!」

上空から、彼が槍で脳天を突き下ろしに来る。それを避け、触手で攻撃する。それは槍で切り払われ、突きでの一閃が彼女を狙った。

「がはぁあっ!!」

槍は、その胸を貫く。彼女は吐血し、足を震わせながら立ち続けた。

「あぐっ……がはぁあっ!!」

再生しようとするも、体が限界のサインを出し続ける。それが、体の再生を邪魔した。

「ふん。」

槍を引き抜くと、彼女は倒れた。その瞬間に邪神の変異は消えてしまい、ただの右腕が触手になってるサキュバスに戻ってしまった。彼は容赦なく、その頭を思いっきり踏みつける。

「どうやら、ここまでのようだな……」

「くぅうう……!!」

どう考えても、既に限界。だが、意地はまだ死せず。闘志の炎は消えてはいなかった。

まだだ……まだ、こんな所で死ぬわけにはいかない。まだ、死ねないっ!だって私、まだ誰にも愛されてないっ!誰かに認められてないっ!何の大義も成してないっ!

「ッッ……!!」

彼女は腹を括り、目を鋭くする。

この体、壊れても構わない。いや、今ここで負けるよりはマシ。

それに、あの力は邪神(クトゥルフ)だけではすぐに追い越されてしまうだろう。ならば、もう一体をこの身に宿すまで。しかし、そのような事をすれば体は耐え切れずに破滅してしまう。

……戦い終わってから、増援に向かおうと思ってたけど……ごめん、ジェット。増援には向かえなくなったわ。

「っ!!」

レシアは懐の中の黄金宝石の欠片を握り、体力を全回復させた。腕の触手で、パルジファルの顔面を打つ。

「ぐはぁっ!?」

彼が揺らいでいる内に立ち上がり、構える。

「ふんぐるい・むぐるうなふ・くとぅるふ・るるいえ・うが・なぐる・ふたぐん!!」

あの詠唱を高速で行い、まずは邪神の力をその身に宿す。詠唱は、更に続いた。

「ふんぐるい・むぐるうなふ・くとぅぐあ ふぉまるはうと・んがあ・ぐあ・なふるたぐん・いあ・くとぅぐあ!!」

その詠唱を終えると、彼女の体は大きく炎上した。背中が燃え上がり、炎が彼女の体に収束していく。炎は左半身を依代に、メラメラと燃え盛った。

右半身は、冒涜的な邪神。左半身は、生ける炎。二神を宿した彼女は、名状しがたい程の異形へと変化し、一歩を踏み出した。

「うぉおおっ……!!?」

パルジファル、思わず後退する。訳の分からぬ恐怖を前に、彼の理性が戻ってきたのだ。

その前で、レシアは大きく息を吸い込んだ。

「はぁあああっ!!」

彼女は、燃え盛る灼熱を吐き出した。とてつもない猛熱が、パルジファルに迫る。

「ぐぅうっ!!」

彼は槍を扇風機のように回し、炎を切り払う。しかし、その炎の中から二本の触手が飛び出した。

「ごふぅっ!?」

両方に顔面を打突され、仰け反る。しかしすぐに体勢を整え、槍を構えた。

聖魔貫く銀槍(ロン・ギヌス)ッッ!!」

輝く槍を投擲(とうてき)する。それはレシアに刺さるかと思いや、彼女の体は炎となって霧散した。

「なにっ!?」

「はぁあっ!!」

パルジファルの背後で彼女は再構築され、彼を蹴り飛ばした。

「ぐぁあっ!?」

「ふんっ!!」

ぶっ飛ぶ彼に向かって飛び、猛攻する。彼はすぐに体勢を整え、その猛攻に対応した。

「あだだだだだ……!!」

「あああああああッッ!!」

まさに、一進一退。切りつ切られつのバトルが、猛スピードで展開された。

「クソがぁあっ!!」

パルジファルは槍を上空へぶん投げ、自分も飛ぶ。

最果てまで貫く銀槍ロン・ギヌス・ミニアードッッッ!!!」

あの千槍が、地に降り注ぐ。しかしレシアは動揺せずに技を展開した。

門を開け、銀の鍵よ(コズミック・ゲート)ッ!!」

レシアは、眼前に異次元への穴を開け、そこに両腕を突っ込む。すると同時に、彼女の周囲に無数の異次元への穴が開いた。

「いあ・いあ・くとぅるふ!いあ・いあ・くとぅぐあ!」

彼女が詠唱すると、その気はドッと噴き出す。そして異次元への穴から、無数の攻撃が飛び出した。炎の玉と触手の二種類だけではあったが、その総数は向こうとほぼ同じだった。二人の技はぶつかり合い、相殺を繰り返す。

「なにぃっ!?」

「はぁああっ!!」

触手や炎が槍と接触し、爆ぜていく。向こうが1減れば、こちらも1減る。そんな事が続き、遂にはお互いの攻撃は完全に相殺された。

「んだとぉっ!?」

「しゃああああッッ!!」

レシアは飛び上がり、左腕でパルジファルをぶん殴った。渾身の力に加え、炎を纏った拳は、彼を彼方までぶっ飛ばす。

「ぐはぁあっ……!!こンのッッ!!」

槍が輝き、それを突き出す。あの竜巻のようなエネルギーが、レシアに迫った。しかし、今度の彼女は臆することはなかった。自ら、その中へ入っていったのだ。

「自分から入っていくのか!?」

エネルギーの中を、泳ぐようにして接近する。そして、とうとう彼の眼前にまで来た。

「はぁあっ!!」

「ッ!!?」

レシアは、パルジファルの腹へ膝蹴りした。腹を打ち抜くようなソレは、彼に有効なダメージを与える。

「そんな力で……そんな力で強くなったなんて、言わせないっ!!」

間髪入れずに、無数の触手と炎の拳のラッシュが、彼を一方的に打ちのめした。

「理性を捨てて余計なものを捨てたつもりになってるでしょうけど、私は違うッ!!私は、この気持ちを捨てないっ!!」

「何を訳の分からぬ事をォオオッ!!」

猛攻から抜け出し、槍を構える。そして、レシアに突きの一閃をかました。

「ッ!!?」

「ああそうさ!今の俺は騎士道もクソもねぇ!!だから、美意識なんて気にしねぇ!!そうだろォッ!!?所詮、この世は勝った方が常に綺麗なんだからよォ!!」

「はぁあっ!!」

体を貫かれた状態にも関わらず、彼女はパルジファルの顔面をぶん殴った。

「ぶっ!?」

「何が勝った方綺麗よ……!!騎士道を捨てた騎士なんか、勝つ資格なんてないっ!!」

激情に流されるまま、触手で己を貫いている槍を引き抜き、彼の腹にぶっ刺した。

「ごはぁああっ!!?」

「私はこんな異形でも、失ってるつもりなんか無いわ。戦士としての誇り、あの子(ジェット)達や9世様が教えてくれたこの気持ち……!」

「ぐ……それが、どぉしたぁあっ!!?」

彼は槍を引き抜き、構える。しかし、その前で彼女は今ある限りの全力を解放していた。

「狂瀾では対応不可の攻撃を見せてあげるわ……!」

ブーンという音と共に、彼女の神力がとてつもない速さで跳ね上がっていく。それと同時に、一帯の空間の様々なものが焼け始め、金属製のものは溶け始めていた。

「な……な……!!?貴様、どこにそんな力が……!!」

「これで終わりよ……!!」

彼女は大きく体を広げ、とてつもない力を発揮した。

生ける炎の狂乱バーニング・ヘルブレイズ・クトゥグアッッ!!!」

彼女の体から、とてつもない熱量のエネルギーが広がる。それは凄まじい速さで周囲のものを飲み込んだ。

「ば、馬鹿なっ!!?この俺が、三下如きにィイイイーーーッッ!!?」

パルジファルも飲み込まれ、その熱量を前に消し炭になる。一帯を飲み込んだエネルギーは大爆発し、キャメロットを揺るがした。

「ハァッ……ハァッ……!」

レシアはただのサキュバスに戻っており、爆心地に立ち尽くしていた。そして、笑った。

「……ふふふっ、や、やったわ……!やっぱり私は強いわね……!ふふふっ……!」

しかし、もう既に体はズダボロ。急いでどこかに身を隠さねば、あのナイト達が駆けつけるだろう。

「急がなきゃ……」

彼女は、どこか隠れられそうな場所を求め、走った……

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