騎士道は悲哀に歪む
「ハッ!!」
「だっ!!」
二人が、超高速でぶつかり合う。神力を宿した者同士のぶつかり合いは人知を超え、そこら辺に衝撃が連続する。
「かぁあっ!!」
「ぉおおッ!!」
二人は激突し、静止する。
「な、なんと……この世に私に追いつく人間が、ランスロット以外に居たとは……!!」
「その名、覚えておこう。」
ローレンスが背後に回りながら、パンチを放つ。それは避けられ、距離を離された。
「ふんっ!!」
トルストラムは剣を振り、猛スピードで飛ぶ斬撃を何発も放ってきた。全てを避け、両の手刀に魔力を込める。
「斬ッ!!」
手刀を振って飛ばし放つが、剣によって切り落とされた。しかし、そのお陰で接近する事は叶った。
「しゃあああっ!!」
「おぉおおッッ!!」
刃と斬撃が幾度もぶつかり合い、火花を散らす。互いの両腕が無数に増えたかのような光景が繰り広げられるも、両者は冷静に対応していた。
「せいやぁあっ!!」
「はぉおッッ!!」
互いの渾身の一撃がぶつかり合い、エネルギーが拡散した。戦いは静止し、両者は距離をとった。
「……」
「……」
二人とも、右の頬が切れて血が垂れる。そんな事は気にも留めず、睨み合った。
「……戦いが、止まった……?」
この中で唯一、神力を扱えないレシアが、見えている限りの戦況を口にする。その横で、ジェットとジョーが唾を飲んだ。
「……この勝負、恐らく次の一瞬でカタがつくだろうな……」
「ああ……動くぜ。」
ジョーがそう言った瞬間、二人は床を踏み鳴らした。二人の床の踏み鳴らしの威力で、そこらに転がっていた瓦礫やら死体やらが浮かび上がる。
「───」
「───」
次の瞬間、二人以外の全てが静止した。
「ハッ!」
「フンッ!」
トルストラムの剣が振り下ろされるが、手刀で凌ぎ、もう一方の手刀で反撃する。
それも裁かれ、ローレンスの脇腹に斬撃が入った。突然のダメージで硬直するも、すぐに冷静になって肩に手刀を入れた。
「ぐぬっ!?」
「ぐ……!」
お互いに一撃が入った事により、太刀合わせは本格的なバトルへと移行する。先に動いたのは、ローレンスだった。
「せりゃあっ!!」
飛び回し蹴りを、その胸に叩き込む。それは直撃し、トルストラムを吹っ飛ばす。
「ぐぉおっ!?」
空中で静止してる瓦礫やら何やらを粉砕しながら、壁へと叩きつけられる。しかしすぐに壁を蹴り、ローレンスへと迫った。
「覚悟ッ!!」
「ぐぬぅっ!?」
放たれた兜割りを、腕をクロスしてガードする。しかし、刃が僅かに腕を斬り、斬撃の重さによって跪いてしまう。
「死ね……!!」
「フンッ!!」
その状態で足払いしてすっ転ばせ、追撃を防いだ。向こうが転んでるスキに、こちらも体勢を整える。
「はぁっ!!せぇいっ!!」
そこらで停止してる瓦礫を二発、トルストラムに向けて蹴り飛ばす。
「ふっ……!」
トルストラムはそれを切り払い、ローレンスの方へ向き改める。しかし、そこに彼の姿はなかった。
「……そちらかッッ!!」
「っ!?」
トルストラムが剣を振るうと、そこからローレンスが、胸に斬撃されながら現れた。
想定外の事に驚きながら、吐血するも、すぐに体勢を整え、相手の方を向く。
ここで漸く、二人以外の全ての動作が再開した。瓦礫や何やらは重力に従って地に落ちる。
「は、速すぎだぜローレンス……!!」
「……」
ジェットはそう言い、横にいるジョーも言葉を発さないまま驚愕する。
戦いは、そのまま続けられた。
「……!!」
「かぁあああ……!!」
トルストラムは剣に神力を込め、その刃を光らせていた。そしてローレンスに向き、突きを繰り出す体勢になった。
「まさか、私が奥義に追い込まれるとは……!!」
「なに……!!?」
「受けよ……騎士道は悲哀に歪むッッッ!!!」
繰り出された突きから、猛スピードで光が伸びた。
「くっ!!」
それを避け、トルストラムに突進しようとする。しかし、唐突に脇腹が斬撃された。
「ぐはぁっ!?」
「ふふふ……」
剣から伸びた光が折れ曲がり、彼の脇腹へと到達していたのだ。初見では未来予知でも出来ない限り見切ることは不可能な技だが、彼の戦いの最中の直感が、致命傷を回避した。
「剣が、折れた……!?」
「ふふん……これならどうだ!?」
折れた光がメジャーのように戻ってから、再び突きで飛び出す。それはローレンスの前に来てから、猛攻をしかけてきた。
「なにっ!?」
光そのものが、ローレンスに向かって乱舞してくる。まるで、全身が刃で出来た蛇に襲われているかのようだった。猛スピードで襲いかかってくるソレを、どうにか神力を込めた手刀で対応する。
「ぐ……!!」
「そこだっ!!」
光が一瞬のスキを見て、輝きを放つ。それはローレンスのガードを切り開き、その腹を刺し貫いた。
「っぐはぁあ……!!?」
ここで戦いは止まった。
ローレンスは吐血し、顔をガクッと落とした。項垂れてるその口から、血がボタボタと垂れる。
「っくくく……悲しいかな……実力は及んだものの、奥義を打ち破るに至れず。惜しいですね……悲しいですね……」
「……」
「ローレンスっ!!」
レシアが、声を上げる。それもそのはず、人間が腹を刺し貫かれたのだ。普通ならば致命傷だが、ジョーは笑っていた。
「安心しな、レシア……アイツ、いい顔で垂れやがった。」
「え……!?」
「奴はまだ諦めちゃいねぇッて言ってんだ。」
ジョーがそう言い終わった時、ローレンスが動き出した。その両手で、自身を貫いている光を掴む。
「……!?」
「……」
ゆっくりと向けた顔……それは、狂気的なまでの笑顔だった。
「ハァアアアッッッ!!!」
腹から光を引き抜き、血を噴き上げながら下がる。光もトルストラムの剣へ戻った。
「な、何だか知りませんが、頭がおかしくなってしまったようですね……まぁいい、これで終わりなのですから!!」
剣から、光が伸びる。ギザギザを描きながら伸びたソレは、ローレンスに突き刺さろうとした。
「シュッ!」
「!!!」
次の瞬間、カーテナの光は気分でも変わったかのようにトルストラムに襲いかかっていた。
「なぁにっ!?」
頬をかすらせながら避け、ローレンスに向かい直す。
「……」
彼はアンダーシャツを破いて腹にきつく巻き、止血をしていた。こちらには、見向きもしていないようだ。
「……まぐれだ……!!まぐれに二度は無い!!」
再びトルストラムの剣の光が、複雑な軌道を描きながらローレンスへと飛ぶ。
「ふんっ。」
彼は退くでも防御るでもなく、前へと進み始める。飛んできた初撃は、首を傾げて避けてみせた。
光は折れ曲がり、その背へと向かう。それをひらりと躱し、前に進み続けた。
「これならばッ!!」
また光は折れ、今度はその脳天を貫きにかかる。しかし、その姿は既に残像であった。
「なっ!?」
「フン。」
既にローレンスは彼の前に迫っており、手を伸ばしていた。
「くっ!?」
咄嗟に腕を上げ、ガードしようとする。しかし、予想外にも飛んできたのは拳ではなく、小指を捉えた掴み。
「ッッッ!!!?」
突如として小指に発生した激痛に、よろめいた。剣から伸びていた光も、消え失せてしまう。
「ぁ、ぁあああ……!!?」
小指は、第三関節を無理矢理曲げられ、骨折していた。あらぬ方向へ曲がったソレを前に、苦悶する。
「せりゃあっ!!!」
「ッッ!!?」
容赦の無い、顔面への蹴り。鼻血を噴き出しながら、彼はぶっ飛んでしまう。
「くっ!!」
しかし体を廻して着地し、地を蹴ってローレンスへ猛攻した。
「はぁあああああッ!!」
「ふんっ!!」
トルストラムの両腕を掴み、攻撃を止めさせる。その腕を大きく広げさせてから、顎へ膝蹴りした。
「ッッ!!?」
顎を打ち上げられた事によって、脳が上下へシェイクされる。それは典型的な脳震盪の症状を作り出し、彼の世界を歪ませた。
「ぁー……!!?」
ドロドロになった景色を前に、思わず目を手で覆ってしまう。しかし、ローレンスは容赦しなかった。
「ハイハイハイッ!!」
顔面、胸、腹の順に、蹴りを入れる。そして何度も体に拳を連打し、腹に寸勁をかます。
「ごはぁあっ……!?」
「しゃああッッ!!」
吐血しながら揺らいだ所へ、顎への二段蹴りが炸裂する。
「ぅぐ……!?」
「せいやぁああっ!!!」
そのまま、顔面を拳で打ち下ろした。渾身の力を込めた拳は彼を地に叩きつけ、バウンドさせた。
「っがはぁあ……!!」
体を震わせながら、何とか立ち上がる。バク転しながら飛び退き、距離をとった。
「ハァーッ……ハァーッ……!!」
剣を構え、その剣に光が宿った。先程よりも激しい輝きに、ローレンスは思わず目を覆う。
「はぁあああああああーーーッッ!!!」
尚も輝きを増し、その力を波動させる。圧倒的な神力が噴き出して、辺りを揺るがせた。
「どうやら、そこからが本番のようだな……」
「我が奥義の真髄……ここにッッ!!」
トルストラムが突きを繰り出すと、先程よりも速いスピードで光が伸びた。
「!!」
思わず回避が遅れ、脇腹にかすらせてしまう。血の噴き出す脇腹に力を込め、走り出す。
「はぁあっ!!」
光は複雑に折れ曲がり、ローレンスに猛攻してくる。その光を何とか避けながらも、トルストラムに迫る。
「っ!!」
光が、頬にカスる。それは気にも留めず、依然として走り続ける。道を駆け抜ける疾風の如く駆けるが、尚も折れ曲がる光は襲いかかってくる。
「ふんっ!!」
それを弾き、避け、斬り、いなし、光の猛攻を振り切った。
「ぉおおおおッッッ!!!」
剣の光はローレンスの前へ伸び、ジグザグを描いて壁のようなものを作り出した。
「はぁあああッッ!!!」
光に、無数の斬撃が入る。それは細切れになりながら突き破られ、霧散した。
「うぉおおおおおッッッ!!!」
「にっ!?」
剣が、ローレンスに振り下ろされる。不意打ちに等しいソレは、防御の暇も避けるスキもあらず、肩から腰にかけてバッサリと貰ってしまう。
突き抜けるような、鋭い感覚……それを追うように、痛みと猛熱が駆ける。遅れて、血が吹き出した。普通の人間ならば、ここでアウト……しかし、彼はローレンス。まだ、闘志の炎は消えていない。
「ぉおおおっ!!!」
彼は斬空血裂拳を以て、トルストラムの腹を貫いた。
「!!!」
想定外の反撃に硬直し、吐血する。
──これで、同じ舞台に立てた。あともう一歩を先んじれば、勝てる。そして……その一歩は、既に与えられているッッ!!!
「が……ガハァア……!!?」
「斬空ッッ……激烈槍ォオオオッッッ!!!」
大ダメージで揺らいだ所へ、心臓へ貫手をかます。それはただの貫手ではなく、可視化出来るほどの魔力が槍のような形を成して彼の手に宿っていた。
「!!!!!」
トルストラムは、それで心臓を貫かれた。紛うことなき、直撃。感覚で己の死を確信し、剣を取り落とした。
「フンッ!」
手を抜き、血を払う。ローレンスの手という支えを失ったトルストラムは、倒れた。その前で、ローレンスは冷たい眼光で彼を見下ろしていた。




