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ジェットのぼうけん  作者: ジョーカー
中章:激震魔大陸
65/131

脅威の騎士

ローレンスとトルストラムが、戦闘開始した。

「はぁああっ!!」

「ふふふ……」

ローレンスは手刀を構えながら突進し、トルストラムは弓を彼に向けて弦を引っ張り、弾いた。

「!!」

次の瞬間、ローレンスの頬に何かがカスッた。彼は尚も突進し、腕を振りかぶってトルストラムに切りかかる。

「だぁあっ!!」

「おっと。」

ローレンスの手刀を飛び避け、高速移動で消える。

「なに……?」

「こちらです。」

背後から、声をかけられる。振り向いた瞬間には、既に蹴りが飛んできていた。それに直撃し、吹っ飛んでしまった。

「……」

しかし体勢を整えて着地し、床に踏ん張る。

「ふふん。」

トルストラムはそれを見て笑い、琴でも弾くかのように弓の弦を弾いた。心地よい音色と共に、ローレンスに何かが突き刺さった。

「ッ……!」

「驚きましたか?」

「何をした……!」

傷口を触っても、何も無い……魔術の類である何かをされたという事以外、分からない。

「私の弓は"無駄なしの弓(フェイルノート)"……竪琴(たてごと)を改造した弓なのですが、これが美しい……そしてこの悲しげな音色……」

そう言いながら、琴を奏でる。するとローレンスに何度も斬撃が飛んできた。腕をクロスし、何とかガードする。

「くそっ……!!」

「そう、この無駄なしの弓の本懐はここ……我が魔力をもって、自在に形を変化させる矢を撃ち出す事にある……このように。」

彼がまた琴を奏でると、次は無数の打撃が身体に連打された。それは、未来予知でも無い限り回避は不可能なものだった。なす術なくローレンスはぶっ飛ばされ、壁に叩きつけられる。

「くっ……!!」

「さぁ、どうします?私は、指先ひとつで貴方を仕留められる……対する貴方は、その手刀を当てねば私に傷をつけられない……」

「……」

ローレンスがそれを聞くと、ニヤリと笑った。そしてトルストラムに手を向け、指パッチンする。

「ッ!?」

次の瞬間、彼の身体に無数の斬撃が走った。致命傷には至らす事はできなかったが、彼の理論をぶち破る事に成功したのだ。

「ッ……小癪なッ!!」

琴の弦が弾かれる。あの音色と共にまた攻撃が飛んできた。

「フン。」

ローレンスは手刀を振り回し、迫り来る攻撃全てを切り落とした。弾き終わり、キッとトルストラムを見据える。

「なにっ!?」

「姿が見えぬとて、実体の無い攻撃ではあるまい。今度はこちらから行くぞ。」

そう言い、タンッと床を蹴る。するとローレンスの姿が消えた。

「くっ!!」

トルストラムはギターのように弦を弾く。すると周囲に斬撃やら何やらが拡散した。そのせいか、何も無い所から血が吹き出た。

「──そこだッ!!」

血が出た所に、手刀を刺す。確かに肉を貫く手応えは感じたが、すぐに『違う』と確信した。それもそのはず、手刀で貫いたのはそこら辺に転がってた改造モンスターの死体だったから。しかも、それはよりによって身体の大きいブッチャーだ。

「にっ!?」

「こちらだ。」

ローレンスはトルストラムの背後に現れ、背中に拳をつける。その状態のまま、全力の無寸勁を叩き込んだ。

「ぐはぁあっ!」

トルストラムは吹っ飛びながら体勢を整え、ローレンスに弓を向けて音色を奏でる。すると、彼に向かって無数の斬撃が飛んだ。

「……」

ローレンスはそれに被弾しながら突進する。身体の節々が斬撃されて出血するも、顔色ひとつ変えずに突進を続行する。そのまま眼前に迫り接近戦の攻防へ持ち込んだ。

「ぬぐぐ……!!?」

「ほう、器用な奴だ。」

トルストラムは弓を近接武器に、ローレンスと何とか攻防している。しかし手数では完全に不利な模様で、押し負けていた。

「かぁあっ!!」

思い切り拳を振って、トルストラムをぶん殴る。

「ぐぁあっ!!」

ぶっ飛ぶ彼に追い付き、更に攻撃を乱打した。

こうなれば、完全にローレンスのペース……しかし、トルストラムはこの状況で黙っているほど大人しくはなかった。

「つぁああっ!!」

彼の手が光り、弓を奏でる。するとそこから光が拡散し、大爆発が巻き起こった。

「ローレンスッッ!!」

「ふふふ……」

ジェット達の心配をよそに、トルストラムは適当な所へと着地する。どうやら、爆発の寸前に飛び退いたらしい。

爆発の中心部……ローレンスが、腕をクロスしながら踏ん張っていた。

「今のは、神力か。」

「その通り……悲しいかな、神力の扱いならば少なくとも貴方より長く使っている私の方が上……そう、このように。」

彼はそう言い、また弓を奏でる。その弓が光り、エネルギー弾を飛ばしてきた。

「ふんっ!!」

そのエネルギー弾を手刀で切り落とし、突進する。

「無駄ですよ。」

音色が響くと同時に、ローレンスが立っていた床が爆発し、消し飛んだ。

「こちらだ。」

高速移動でトルストラムの背後に回り、手刀を振り下ろしにかかる。

「分かっていました。」

そう言いながら彼は弓を奏でる。すると、ローレンスの身体に何発もの打撃が叩き込まれた。

「っぐはぁあっ!」

彼はぶっ飛んで床へ投げ出され、ゴロゴロと転がる。しかし体勢を整えて起き上がり、手を向けて斬撃を放った。

「無駄ですよ。」

また、弓が奏でられる。すると、その斬撃に同じエネルギーで斬撃がぶつけられた。

「馬鹿め。」

ローレンスが嗤う。相殺されたハズの斬撃からクラスター弾のように斬撃が放たれ、トルストラムに降りかかった。

「!!」

彼は弓を扇風機のように回し、斬撃を防ぐ。その背後に、ローレンスが高速移動で回り込んできた。

「ほう……!!?」

そこへ振り返った瞬間、トルストラムの腹には既に蹴りが入っていた。

「っぐはぁあっ!?」

「こいつは餞別だ。」

揺らいだトルストラムの腹の前に、拳を置く。そこから全力で加速、ワンインチパンチを叩き込んで見せた。彼は腹から背へと突き抜けるような衝撃をくらい、吐血する。

「ぐぬぅ……!?」

靴を擦らせながら後退するも、何とかダウンを免れる。そして手を光らせながら、弓を奏でた。また光が拡散し、大爆発が巻き起こる。

「ふんっ!!」

「なっ!?」

ローレンスは爆発のエネルギーを突き破り、その顔面に拳を叩き込んだ。トルストラムはそのまま、ぶっ飛んでいく。

「ッがぁあっ!!」

何とか踏ん張り、渾身の力を込めて弓を奏でる。すると、ローレンスに強烈な衝撃波が直撃した。

「っぐはぁっ!!」

「しゃあっ!!」

揺らいだローレンスに、渾身の両足蹴りを叩き込む。それは直撃し、彼は壁へとぶっ飛んでいった。

「フンッ!」

しかし体勢を整え、壁を蹴ってトルストラムへ突進した。そのまま、また超スピードで猛攻する。

「せりゃああああッッ!!!」

「く……ぐぬ……!!?」

ローレンスの猛攻の鋭さが、次第に増していく。ただでさえ超スピードの猛攻に、鋭さと重圧が乗る。

「ぅ……ぐはぁあっ!?」

あまりの速く重いラッシュに、遂にトルストラムの防御(ブロック)が切り開かれた。それを待っていたかのように、ローレンスの猛攻が加速した。

「ぐぁああああああああッッ!!!?」

何をされているのかも分からない程、凄まじい速さの超連続攻撃。四擊を一撃、五擊を一撃と錯覚するほどの神速のラッシュを前に、なす術なく猛攻され続ける。

「だぁあああーーーッッッ!!!」

その拳に神の力を込めて、発勁で腹を打った。

「グッッッ──」

とてつもない鈍痛が、腹に発生する。衝撃が腹から背へ抜け、まるで腹から背中へ風穴が開いたかのような錯覚を受ける。遅れて、ピンポイントで腹から竜巻が発生したかのような衝撃が発生し、彼をぶっ飛ばした。

「──ハァアアアーーーッッッ!!!?」

吐血しながら勢いよくぶっ飛び、壁に叩きつけられる。そのまま、床へと倒れ込んだ。

「がっ……ゲハァアッ!!」

転げ回りながら、吐瀉物と血が混ざったものを大量に吐き出す。その姿には、騎士の誇りの欠片も見えなかった。

「無様だな。」

無情にもそう言い放つローレンスを前に、トルストラムは飛び退く。

「〜〜〜ッッ!!!」

そして、弓をぶん投げ捨てた。

「む、演奏劇は終わりか。」

「く……くくく……そ、そうだ……お遊びはもう終わりだ……ここからは私も騎士らしく……」

腰に携えていた剣を取り、ゆっくりと引き抜く。その刃の先を、ローレンスに向けた。

「剣で、相手しよう。」

「……」

ローレンスに向けられた剣……それは、先の折れた剣だった。

「騎士の冗談に対する返しは教わっていないのだがな。」

「冗談だと思うか……?これは、"慈悲の剣(カーテナ)"。我が母から賜った、私の剣だ。」

そう言いながら、素振りする。すると、剣の圧が衝撃波となって拡散した。

「……!」

「はぁあっ!!」

衝撃に揺らいだスキを突かれ、渾身の突きが腹に打突された。

「がはぁっ……!?」

腹を抑えながら後退し、トルストラムへ向き直す。彼は既に飛び上がっており、こちらに兜割りをしていた。

「くそっ!!」

体が、思考より本能に追いつく。本能のままに、それを飛び避けてみせた。

標的を失った兜割りが、床を叩く。それは地に衝撃を掛け巡らせ、大地をも断裂させた。

「な……なんという……!!」

「こちらだ!!」

トルストラムは、既に背後に回っていた。ハッとして振り返った瞬間、思い切り蹴り飛ばされた。

「ぐぁあっ!!」

「はぁあっ!!」

神力による飛行能力で、ローレンスに迫る。そして、剣での猛攻を繰り出した。

「はぁああああっ!!」

「せりゃあああっ!!」

ほぼ互角。二刀であるこちらが、トルストラムの一刀に追いつかれている。手数による有利が作れずに、攻防は一進一退を繰り返した。

「つぁああああッ!!」

「しゃああああッ!!」

二人は超スピードで攻防し、尚も加速し続ける。そして、ついにその姿が消えた。不気味に戦闘音が響き、そこらで衝撃が連続する。

「み、見えないわ……ローレンスも、あの子も……」

「俺ですら、ギリギリ見える程度だ……」

「……!!」

ジョーの横に、何か吹っ飛んでくる。それは壁に叩きつけられたかと思えば、その壁を突き破ってぶっ飛ぶ。

「っぐはぁあっ……!!」

ローレンスが押し負け、ぶっ飛ばされてしまったのだ。

「はぁああああッッ!!!」

トルストラムは剣をしまい、両手をそちらへ向ける。そして、無数のエネルギー弾をローレンスへ集中砲火した。次々と直撃し、爆発を繰り返す。

「これで……終わりだぁあああッッッ!!!」

剣を取り出して、そこに全力の神力を込める。その剣を振り下ろし、高密度のエネルギーの斬撃を飛ばした。それも直撃し、これまでで一番大きい爆発を巻き起こした。研究所の半分が爆発に融け、消し飛ぶ。

トルストラムは着地し、笑った。

「ハァッ……ハァッ……悲しいかな……後一歩の所で、私には届かなかったようですね……死なせておくには惜しい男でしたが、これはあくまで戦い。悲しみを避ける事は、不可能なものです……」

そう言ってから、ジェット達の方へ向く。

「さぁどうします?このまま、私と戦いますか──」

彼の見たジェット達の顔は、想定外のものだった。

焦りの一つも感じず、寧ろニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながらこちらを見ている。

「……何がおかしいのです?」

「……ヒヒヒヒヒ……」

ジョーが人差し指を立てる。それに呼応するように、爆煙からローレンスの仮面が飛んで、指へと引っかかった。

「……!」

それを見て、トルストラムは驚愕した。その顔を見たジョーが、笑みを増す。

「おめェ……簡単に終わると思うなよ……?鬼畜を呼び覚ましたのは、おめェなんだからヨ。」

そう言いながら、爆煙の向こう側を見る。その中から、歩き寄る影があった。

「ば、馬鹿な……!!?た、確かに全て直撃のハズッ!!」

「ふむ……ひとまずは、「参考になった」と言うべきか。」

ボロボロの道義を破きながら、素顔の彼が出てきた。トルストラムを見据えるその目は、既に神の光が宿っている。

「……俺はもう容赦しない。戦いたいように戦わせてもらうぞ。」

「……ここからが、本番ということですか……!!」

二人は改めて向かい合い、構えたのだった……

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