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ジェットのぼうけん  作者: ジョーカー
前章:勇者進撃
37/131

惨劇

正義をかなぐり捨てた、ジェット達。

正義を信じて闘う、アラン達。

二組は、今改めて激突する……

「いくぞぉおっ!!」

アランは剣を抜き、素手のジェットに向かう。剣が振り下ろされ、ジェットの肌に触れる……その瞬間、異変が起きた。

「!!?」

顎を打突され、後退してしまった。いや……

先に当てたのはこちらにも関わらず、当てられた!?

「……シュッ。」

ジェットの拳が、また顎を殴る。それも、さっきより速いスピードで。

「!?」

高速で顎を打ち抜かれ、脳震盪を起こして揺らぐ。

「ホラよ。」

顔面に肘を入れて、思いっきりぶっ飛ばした。アランの顔面から鼻血が噴き出し、滝のように流れ出す。

「ッ……!!?ガハァッ!?ぐっ……!!?」

「アランッ!!」

マナミが寄り、回復魔法を施す。出血が止まって、何とか立ち上がった。

「回復役は、面倒だな……()が出よう。」

素顔のローレンスが出てきて、マナミに寄る。引き続き、マナミと闘うつもりらしい。

「マナミに手は出させ……」

「邪魔だぜてめぇ。」

金龍の顔面を、ジョーが掴んで持ち上げる。

「!!?」

「だッッ!!」

そのまんま、片手で背負い投げた。小さなクレーターが大地に刻まれ、金龍の体はバウンドして倒れ込む。

「がはぁあっ……!!?」

「……来いよ武道……本物の力って奴を教えてやる。カァアッ!!」

ジョーは全身に力を込める。その筋肉の膨張や魔力の波動で、上半身の胴着が吹っ飛んだ。

金龍は立ち上がり、そんなジョーに向く。額に青筋を立てて、浮かび上がる限りの怒りを拳に乗せた。

「剛ォオオオッ!!!」

重い拳が、ジョーのボディに釣瓶(つるべ)打ちされる。

「……!」

金龍の感じた手応え……

修行時代、石の柱をひたすら拳で叩くという修行をしていた。未熟ゆえに、硬い石の柱を叩く拳は数分で傷ついてしまう。

その硬い石の柱が……まず、鋼鉄にすり変わる。その鋼鉄に、道路工事作業で使うような重機のタイヤのゴムを被せたような……そんな手応えだった。

「ッッ……!!?」

「ヂャッッッ!!!」

ジョーの超スピードの足刀が、耳の辺りに当たって頭部を打ち抜いた。初期動作が全く見えない攻撃に対応出来ず、直撃を許してしまった。

「ッッッッ!!!?」

倒れ伏しながら、ダメージに悶えた。たった一発、たった一発だけ蹴られたのに、もう既に目や鼻から血が垂れている。視界がグラグラ揺れ、マトモに立てない。三半規管もやられてしまったらしい。

「ぁ……ぐっ……あが……!!!」

「オイオイ、どうした?反撃が来ねェな……愛する人を護る力ってのは、そんなモンなのかい?」

ジョーはニヤケながら、倒れ伏す金龍を見下す。

「金龍っ!!」

「フンッ。」

走り出したマナミのアキレス腱に、ローレンスの斬撃魔法が入った。

「ァッ!!?」

転んでしまい、地面に顔面から激突する。しかし、すぐにアキレス腱を回復魔法で直し、立ち上がった。

「おっと。」

すると、また斬撃がアキレス腱に入った。今度は、足首の関節の骨にまで入ってる。

「〜〜〜ッ!!!!」

激痛に悶絶するマナミに、ローレンスが飛びかかる。そして、足でその耳をハスった。

「あぎゃあああっ!!?」

「ぐ……ま、マナミ……!!」

「ヒャッハァ!!」

呻く金龍の前で、ジョーがマナミの顔面を蹴り上げた。

「あ、あが……!!」

鼻が潰れ、前歯も折れる。美麗だった顔が、大量の鼻血で汚れた。

「ジョー、この女は俺が相手をしていた筈だ……」

「まぁ見てろって。」

挑発するように、ジョーが金龍の方を向き直した。

「ホラよ金龍さん!とっとと護らねェと死んじまうぜこの女!」

「~〜〜ッッッ!!」

金龍は立ち上がり、ジョーに突っかかる。

「このクズがァアアアッッッ!!!」

そうして放たれた、渾身の正拳突き……は、アッサリと躱された。

「……ッッ!!?」

「トロい拳だな……」

「なんだとッッ!!でぁああああッッ!!!」

激昴した金龍は、猛烈なラッシュを仕掛けてくる。それを避けず、全て直撃する……が。

「ッッッ……!!?」

「痒いぜ……ちゃんと力込めてるのか?」

ジョーは、全く平気そうな表情でニヤついていた。そのニヤケ顔に、遂に怒りが最高潮に達する。

「〜〜〜ッッ!!」

金龍は、人中を一本拳で穿ちにかかる。しかし、それは避けられ、接近を許してしまう……

「オラァッ!!」

カウンターのローキックが、金龍の両足を打つ。鈍い音が響き、両足のスネが開放性骨折し、血が噴き出した。

「ーーーッッッ!!!?」

両足が使い物にならなくなり、あえなくダウンした。足からはドクドクと血が流れ、血溜まりになる。

「き、金龍っ!!」

「あぐぅうっ……う、ぐぅううっ……!!」

回復魔法を施そうとするマナミの手……その手に斬撃が入り、切り落とされた。

「あぎゃああああーーーっ!!!」

女とは思えない程の、けたたましい絶叫。喉が潰れそうな声を出しながら、手からは血を噴き出している。

その状況を前に、アランとアシェルの動きにキレが出てくる。

「よくも、よくも大切な仲間をあんな姿に……!!」

「許さない……同じ姿になって、反省しなさいっ!!」

苛烈な猛攻にも関わらず、ジェットは未だに傷一つついてなかった。二対一にも関わらず、かすり傷ひとつ許していない。

「俺だって、お前らを絶対に許さない。」

「なんだと……!?」

「自分たちの正義を一方的に押し付けて、俺らを潰そうとするテメェらを絶対に許さないッつってんだ!!」

ジェットの足が消えて、アランの左手とアシェルの腹が爪先(つまさき)で打突された。

「ぐぁあっ!!」

「がはぁああっ!!」

アランは左手が砕け、指がひしゃげる。アシェルはぶっ飛び、腹を押さえながら吐血した。

「ぁ……あ……!!」

「どうだ?今まで骨折なんかした事あるか?」

「こ、こ……のッ!!」

アランは剣を右手で持ち直し、斬り掛かる。しかしジェットの容赦ないハイキックが、アランの左手を蹴り上げた。

「あぁあーーーっ!!!?」

攻撃どころではない激痛に、剣を放り出して左手を押さえ、悶絶する。ジェットはその様子を、「やれやれ」と見ていた。

「おいおい、何て声出してやがる……喧嘩で相手の弱点狙うのは、基本中の基本だろうがよ。」

「ぐッッ……うぅッッ……!!」

「アランッ!!」

アシェルが、駆け寄ろうとする。しかし、その前にローレンスが立った。

「どきなさいっ!!」

杖を回して魔力を解放し、炎を噴射する。が、既にローレンスは消えていた。

「な!?」

高速移動で炎を避け、アシェルの右側面に回り込んだのだ。手刀を構え、魔力を纏わせる。

「その(ちち)、目障りだなぁ……」

「……ッッ!!?」

次の瞬間、アシェルの大きな乳房が切断された。脂肪の塊が宙を舞い、べちゃりと地面に落ちた。

「あ……ぁあ……む、む……ね……!!」

「フンッ!」

ローレンスの手が、アシェルの胸筋に差し込まれる。その手を一気に下に押し下げた。

「!!!!」

肋骨が折れる鈍い音が、何度も鳴った。その手は鳩尾辺りで止まり、抜かれる。既に肋骨がボロボロで、内臓の数カ所を傷つけていた。

「オッラァア!!」

ジョーが、アシェルの鳩尾を思いっきりぶん殴った。折られた肋骨が内臓に叩き込まれる。

激痛とショックのあまり、彼女は白眼を剥いて「ガハァッ」と大量に吐血し、膝から崩れた。

その返り血を顔に受け、ジョーは鳩尾から拳を引き抜く。すると、彼女も倒れた。

「まずは一人……ッて所か。」

「アシェールッッッ!!!」

「よそ見してる場合かよテメェ。」

ジェットはポケットに手を突っ込んだまま、アランに歩み寄った。惨劇に目も向けずに悠々とする彼を、アランは許せなかった。

「アシェルは、僕の恋人だ……!!絶対に、絶対にゆるさ」

ここで、蹴りで顎を打った。アランの口内から、「ザクッ」という音が鳴る。

「ーーーッッッ!!!」

「あーあ、舌噛み切ってやんの……」

血をダラダラ垂らす舌を出しながら、悶絶している。もう、こうなったら勝負どころではない。

「ぐ……ぅうっ……!!」

「あ、アラン殿……!!」

「アラ……ン……!!」

血塗れになり、ボロボロになった状態の三人を、ジェット達が見下ろした。

「来いよ三人。」

「三対三……条件は対等のハズだ。」

「ダメージ負ってるのはお互いさまだ。文句言うんじゃねェぞ。」

「う……っぐ……!!こ、このぉおお……っ!!」

恋人を傷つけられた怒り……仲間を傷つけられた怒り……ジェット達の外道っぷりの怒り。それらの怒りが魔力に変わり、アランの剣が炎上する。その剣で渾身の力を込めて、斬りかかった。魔力が爆発し、濃い爆煙が辺りに立ち込める……

「……!」

「……」

ジェットの剣が、アランの一撃を止めていた。あっけなく、アッサリと。

「そ、そん……」

「はっ!!」

剣を振り、右手首に斬撃を入れる。それで右手は切り落とされ、遂にアランは丸腰になってしまった。

「ぁ……!!?」

両手が使い物にならなくなり、後退するアラン……その前で、ジェットは剣を投げ捨てた。

「なぁ勇者さん……命のやり取りってのは、正義感だけで乗り越えられるほど甘くねぇんだよ。」

ガラ空きになったボディに、ドスドスドスッとパンチを叩き込む。拳が当たる度に骨が折れて、肋骨は全壊した。

「ましてや、正々堂々の戦いなんて有り得ねぇ。」

両手で手刀を作り、手首の辺りで顎を打った。両顎の関節が粉砕し、顎が外される。

「息の合った、魅せる戦いも存在しねぇ。」

足を振って、両の膝に蹴りを叩き込む。膝の皿を砕いて、跪かせた。

「技術を巧みに使った、上手い戦いなんてもっての他だ。」

そう言って、拳から人差し指と小指を立てる。その手で、目を潰した。

「こういう身も蓋もない攻撃とか……」

「ーーーッッッ!!!」

目から指を引き抜き、今度は拳にする。その拳に全力を込めて、顔面をぶん殴った。

顔面の骨が拳の形に凹み、骨の破片が脳を傷付ける。

アランは完全にダウンし、起き上がる事はなかった……

「……こういう派手な攻撃とかが飛び交う、凄惨な戦いなんだよ。」

そう言いながら剣を拾い、鞘へ納めた。

「ぁ……あ……あ……!!」

それを見ていたマナミは、腕を必死に動かしてジェット達から逃げようとする。既に恐怖で怯え切っており、涙を流しながら失禁していた。

「やはりな……貴様らは偉そうに俺達に正義を押し付ける割には、自分からは何も差し出してはいない……反吐が出るッ。」

ローレンスが青筋を立てながら、マナミの方に歩み寄る。しかし、その両足は金龍に掴まれた。

「ぐ……っぐぅ……!!マ……ナミ……!!今のうちに……」

「シャアッッ!!」

ジョーは、ローレンスの足を掴む両腕に踵落としした。腕の骨は折れて、折れた骨が皮膚を突き破って飛び散る血と共に露出する。開放性骨折だ。

「ーーー!!!」

両腕も使い物にならなくなり、ローレンスの足を離してしまう。

「俺達に喧嘩を売ったこと……後悔するのだな!」

ローレンスはマナミの足を掴んで、上空に投げ飛ばす。

「きゃああああ……!!!」

落ちてきた所で、拳を突き上げた。その拳に斬撃属性が纏われて、歯医者で聞くようなあのドリル音が鳴る……

「……斬空血裂拳。」

ドリルのようにマナミの背中を突貫し、腹から拳が抜けた。血や肉片がスプリンクラーのように飛び散り、ローレンスはそれを一身に浴びる。

「ふん。」

拳を引き抜いて、蹴り上げる。遥か後方に蹴飛ばされ、ドシャッと倒れ込んだ。

「ま、マナミーーー」

「喧しい、叫ぶな!!」

ジョーは金龍の後頭部を踏んで、顔面を地面に叩きつけた。体はビクンビクンと痙攣してから、ガクッと崩れる。顔から血が滲んで、血溜まりが出来た……

アランは上半身を破壊され、失明。

アシェルは胸を切り落とされ、折れた肋骨が内臓に叩き込まれる。

金龍は四肢が開放性骨折して、頭を踏み抜かれる。

マナミはアキレス腱を切られ、腹を貫かれた。

これだけやっても、死んでる人間は誰一人居ない。放っておけば当然死にはするが、およそ人体が絶命を免れるギリギリで破壊し尽くしたのだ。

立っていたのは、ジェット達だった。

「……アラン一行、倒れたな。」

「ああ……」

ローレンスは仮面を拾って、着ける。

勝利の後の余韻……という気分ではなく、ジェットとローレンスの二人は難しそうな表情をしていた……

「……我らが成したことは、正しかったのか?」

「向こうから仕掛けてきた喧嘩だけどな……」

ここで、ジョーがジェットの方を見て笑った。

「俺達が正しいか正しくねェかはどうでもいい……確かな事は、喧嘩を売られたので返り討ちにしましたって事だけだ。」

「そうだな……」

「そもそも、正義に絶対的な答えは無い……押し付けること自体が間違いなのだ。」

ローレンスがそう言い、眼鏡のように仮面を整える。その表情は、どこか憂いを秘めていた。

「正義を信じて戦う事は、立派な事だとは思う……しかし、戦いは戦いだ。ある程度の覚悟をする事が必然になる。」

「覚悟……?」

「踏みにじられる覚悟……倒される覚悟……傷つけられる覚悟……押し付ける意気はあった癖に、潰される覚悟が無かった……ジェットよ、今までのお前は戦いの最中にどんな怪我をした?」

いきなり問われて、ジェットはしばらく考える……そして、思いついた順に言ってみた。

「……斧でぶった切られたり、何回も爆発したり、槍で肩貫かれたり、腹に穴開いたり……学園時代の喧嘩とか掘り返すとキリないから、こんぐらいかなぁ。」

「そんな怪我を負った時、お前は逃げたか?」

「いや、逃げねぇよ。戦いで怪我する事なんか当たり前なんだから。勝てない戦いじゃない時は、必死で戦ったよ。」

「……要するに、そういう事だ。相手に正義を押し付けるというのに、自分だけは無事で居ようとする……敗けて当然だ。覚悟無き正義など、何の意味も持たぬ。」

「まァ……」

ジョーが頭を掻きながら、また笑った。こんなムードだというのに、こいつだけはなんだか楽しそうだった。

「ジェットの戦いがどういう事だったか知らねェけどよ。今回のコイツらは相手が悪かったって事でいいんじゃねェか?ヒャハハハハハ!」

「ああ、うん。もうそれでいいや。」

「……全く。」

話を終えて、三人は改めて進行方向を向いた。ノーヴェム村が、遠くに見える。

「なんか足止めくらったけど、ひとまずは解決した!よっしゃ、行くぞ!」

「ああ……急ぐぞ。」

「だりィ〜〜……」

ジェット、ローレンス、ジョー……三人は、正義について思い思いの感情を抱く。

そして、改めて旅を再開したのだった……

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