勇者VSドラゴン
ヴォシム王女を救いに、サーバマウンテンへ着いた勇者達。
戦い方についてその仲に亀裂が生じるも、ローレンスが諌める。しかし、そこへ例のドラゴンが飛来してきた……
「逃げるぞっ!!アシェルっ!!」
「きゃっ!」
アランはアシェルをお姫様抱っこで抱え、その場から離れる。
「金龍!」
「分かっている!」
金龍とマナミも逃げて、とりあえず体勢を立て直す。しかし……
「あ、じゃーんけんぽォン!」
「あいこでしょッ!」
ジェット達は、じゃんけんをしていた。それを見て、アラン達はまた驚く。
「何をしているんだッッ!!危険だぞっ!!」
アランの警告を無視して、ジェット達はじゃんけんを続ける。そして、ジェットが勝った。
「俺の番だ!!」
ジェットが勝った瞬間……ドラゴンの爪が、炸裂した。それだけで衝撃が轟き、地鳴りが起こる。
「ジェットーーーッ!!!」
「きゃ……!!」
決裂した仲とは言え、人命は人命。目の前の命に手を差し伸べられず、アランは歯ぎしりをする……しかし、その背後にジョーとローレンスが立った。
「余計な心配すんな……奴がこの程度で死ぬタマじゃねェ。」
「さぁ、見せてもらうぞ……」
姫を救出しに来た勇者VS巨大なドラゴン……
この手の物語を書くにあたって、無くてはならないシナリオだ。それが今、ジェットと殺意に満ちたドラゴンで展開されようとしている。
果たして……
「……へっ!」
ジェットは、竜の爪を剣で止めていた。あまつさえギリギリと力を込めて、押し返した。
「グゥッ!?」
「……さぁ、バトルスタート!」
ジェットは構えて突撃し、跳び上がる。ドラゴンの頭に来て、剣を振り上げた。
「シャッ!」
しかしそれより速く爪が振り下ろされ、叩き落とされてしまう。何とか体勢を整え、着地した。
足に力を込め、ダッシュしてドラゴンの背後に回り込む。スピードならば、巨駆なドラゴンより人間の方が上だ。
「しゃおらぁっ!!」
跳び、その背に思いっきり切りかかる。しかしドラゴンの鱗が、刃の邪魔をした。
「なにっ!?」
「ガァッ!!」
ドラゴンは一瞬でこちらに振り返り、爪を振り下ろす。また叩き落され、今度は倒れ込んでしまう。
「ぐはぁっ……!!」
「ギャオオッ!!」
口に炎を込めて、炎球をジェットに吐き放った。直撃し、大爆発が巻き起こる。そこらに熱波か轟き、衝撃であらゆるものが吹き飛んだ。
「ぐ……!!!」
アランが剣を構え、向かおうとする。しかし、その肩をアシェルが掴んだ。
「危険だよアラン!あんなの、勝てっこないよぉ!」
「それでも、僕にはやらなければならない事があるんだ!!」
アシェルの静止を無視し、駆け出した。そのまんま、ドラゴンに切りかかる……
「!!!」
剣が鱗に届く寸前、尻尾が脇腹に入ってしまった。メキメキと体が軋む音が鳴り、内臓の組織も圧迫され、ぶっ飛ばされた。
「っぐはぁあ……!!」
「アラーーーン!!!」
「よっと。」
ぶっ飛ぶアランを受け止めたのは、ジェットだった。炎球の直撃のせいでボロボロだが、まだ余裕があった。
「ほら、僧侶!回復してやりなッ!そんでもって、二度と乱入すんなって伝えと……けッ!!」
アランをマナミの方に蹴り飛ばし、ジェットは更に滞空する。そして、ドラゴンの方を向き直した。
「ギャオオッッ!!」
「おらぁあっ!!」
また、炎球が飛んでくる。しかしそれを、難なく剣で弾き飛ばした。
「オォオオオッッッ!!」
「はぁあああああ……!!!」
ドラゴンは両腕を振り、ジェットに猛攻した。ジェットも剣技を連打し、猛攻に対応する。やがて戦いは超スピードの打ち合いに発展し、攻撃が疾風のように飛び交う。
「オラオラオラァ!!どうしたァ!!」
「コロス……!!」
バチッと一撃がぶつかり合い、お互いが仰け反る。
ジェットは、一回転して着地した。しかし、間髪入れずにドラゴンは接近し、爪を振り下ろす。
「あらよっ!」
それを跳び避け、腕に乗る。剣を振るいながら、一気に肩まで駆け上がった。
「ッ……!!」
「せいやぁあっ!!」
跳んで、その顎に後ろ回し蹴りする。見事に踵が顎を捉え、思いっきり蹴り飛ばした。
「!!?」
ドラゴンはグラリと揺れ、ヨロヨロと後退する。そこらのモンスターほどの手応えはないが、とりあえずダメージを与える事には成功したらしい。
「ッグゥウッ!!」
しかし、踏ん張って口に炎を溜め、炎球を連射してきた。ジェットがそれを次々に避けて、爆発が連続する。
「ガァッ!!」
こちらに向かって、一発放たれる。それに両手を向け、魔力を込めた。
「ハァイ!!」
炎球が凍り、止まる。
「スノウダストストーム!!」
魔力を纏った足で凍った炎球を蹴る。それは打ち砕け、無数の氷の刃となってドラゴンに降りかかった。しかし、ドラゴンの鱗により氷の刃は全て打ち砕ける。
ジェットの狙いは、そこにはなかった。
「氷上・八艘飛び!!」
跳んで、氷の刃を踏みながら接近した。この技は、凍っているものから凍っているものに飛び移るという条件なら何でも使えるのだ。
そして、一気にドラゴンの眼前にまで迫った。
「ガァアッ!!」
ドラゴンは口に炎を溜めており、今にもジェットに炎球を吐き出そうとしていた。ジェットの狙いは、それだった……
「そいつをッ!!」
大きく跳び上がり、ドラゴンの頭の真上に来る。そのまま降下し、脳天を思いっきり踏みつけた。
「!!!」
顎が無理矢理閉じられ、そのまま口の中で炎球が暴発した。ドラゴンの口の中で大爆発が起こり、目や鼻から爆炎が飛び出る。
「ッガァアアアアッ!!!」
ドラゴンは絶叫し、のたうち回る。それを見て、ジョーは口笛を吹いた。
「ヒュ〜……あいつ、中々エグい事するじゃねぇか……」
「ああ……あの様子では口内だけではなく、肺と胃袋にも衝撃が響いたのだろう。」
「ギャオオオオッッ!!コロスッ!!コロスコロスコロスコロス!!!」
ドラゴンは、ジェットに向かって爪をめちゃくちゃに振り回した。強烈な一撃が何度も降りかかるが、何とかガードする。
「ぐ……!!」
「グラァアッ!!」
攻撃の手を止め、今度は大きく顎を開けて喰いかってきた。ドラゴンの鋭い牙が、迫ってくるのは圧巻なのだが……
「おバカ!!」
ジェットは喰いかかりを避け、顎を拳で思いっきりぶん殴った。
「ーーーッ!!!」
15mの巨体が、ぶっ飛ぶ。ドラゴンの視界はグラリと揺れ、景色がドロドロに歪んで見えた。
「ッ!?ッ!!?ッッ!!?」
「ハッ、化け物ではあるけど戦士ではねぇみてぇだな……」
ジェットは笑い、悠々と歩み寄る。
その背後……アラン一行は、何が起きているのか理解できなかった。
「お、押してる……たった一人で、あんな巨大なドラゴンを……」
「アラン君でさえ、歯が立たなかったのに……」
「ッ……なんという……!!」
「ウソ……私達は、悪夢を見てるの……!?」
驚愕するアラン一行の隣……例の二人が、真剣に話し合っていた。
「あのドラゴンめ……ロクなスキも見ずに噛みつきとはな……やはり、竜は獣と変わらんか。」
「ああ……戦いにおいて、歯を食いしばるのは基本中の基本……しかし、あの喰いかかりの瞬間は攻撃の性質故に、一番攻撃に脆くなる。そこを打たれたのだ……今や、あのドラゴンの視界はまともなものではあるまい。」
ローレンスの言う通り、ドラゴンはフラフラとよろけていた。
「〜〜〜!!!」
ドロドロの視界のままジェットを見る。すると、どうだろうか。自身より遥かに小さい筈の、タンクトップと短パンの薄着の少年が……今や空間をも歪めるほどの力を持つ強大な戦士に見えるではないか。
生まれて、初めて恐怖した。恐怖のあまり、戦慄さえも覚えた。
しかし、逃げ出す訳にはいかない……こんな小さな存在に、我が負ける筈がないッッ!!
「ガァアアアーッ!!」
渾身の力を込め、爪を振り下ろす。しかしそれを見切って避けながら跳んで、剣を振りかぶる。
「……斬ッッッ!!!」
束の間のリラックスの刹那、腕に全力を込める。思いっきり剣を振って、ドラゴンの腕を両断した。
「ーーーッッッ!!!」
「会心の一撃ィ!」
ジェットの剣は、ドラゴンの鱗を紙のように断ち切っていた。決して、完全な力任せに斬った訳では無い。呼吸、脱力、タイミングが全て好条件になった所に力を込めて全力で斬ったのだ。
「グ……ヌゥウウッ!!」
今度は口に炎を溜める。しかし吐いてきたのは炎球ではなく、炎のブレスだった。超高熱の息が、辺りの木々を燃やしたり吹き飛ばしたりする。
「はぁあっ!!」
ジェットの魔力が爆発し、辺りに寒波が旋風する。その旋風で炎のブレスは吹き飛んだ。
「!!?」
「おいおい、自然は大切にしろよ。ここ別荘にするつもりなんだから。」
「ァ……グ……!!!」
ここで、ドラゴンは全てを察した。この男と、自分の戦力差について。
「ォ……オォオオオオーーーッッッ!!!」
ドラゴンは咆哮し、翼を羽ばたかせて逃げ出した。
「あっ、待てこらっ!!」
ジェットは跳んで尻尾に掴まり、体によじ登る。背中の真ん中で回転斬りして、両の羽根を切り落とした。
「ーッッ!!!」
羽根を切り落とされ、地面へと墜落する。巨体が落ちたので、そこそこの衝撃が起こった。
「……さ、ヴォシム王女はどこだ?」
ジェットはドラゴンの頭に剣を突きつけ、聞いてみた。派手な戦闘だったから、巻き添えになってなければ良いが……
「グ……ヌ……ココニハ、イナイ……」
「なにっ!?」
「ヴォシム王女ナラバ、既にアルトリウス様ガ捕ラエタ……」
「アルトリウスだと……!?誰だそりゃ!?」
「貴様ガ、唯一勝テヌ魔物……四魔姫ノヒトリデアル……」
「よんっ……」
ジェットは、絶句する。ついに三人目の四魔姫の名前が判明した……
アルトリウス。果たして何者なのか……
「みんな、ここから離れよッッ!!」
ローレンスが突然そう言い、皆はビクッとする。
「何だ、ローレンスっ!?」
「いいからっ!!」
ローレンスはジョーの手を引っ張り、その場から離れる。
「待て待て待て!!何だってんだ!!」
ジェットもドラゴンから降りて、ローレンスの後ろにつく。
「離れようっ!」
「うむっ!」
「な、なにっ!?なんなのっ!?」
「何よ、説明しなさい!」
アラン一行も、ただならぬ気配を感じて離れる。
全員が安全な所まで行き、振り返ったその瞬間……膨大な熱量のエネルギーが、巨大なビームとなって飛んできた。
「グオオオオオオオオオ……!!」
ドラゴンだけが、そのエネルギー波に飲まれる。その熱量のあまり、ドラゴンは塵一つ残らずに消滅した……
「ぐ……!!」
「な、なんだこりゃあ……!!?」
「魔力……ではないっ!?」
三人は衝撃に耐えながら、エネルギー波を見る。エネルギー波は天を突き破り、この星から抜けていった……
ローレンスが真っ先に、飛んできた方向を見る。しかし、あまりにも遠くから放たれたのか、飛んできた方を見ても何も無かった。
「凄まじい熱量を感じて離れたはいいが……いったい、何だというのだこれは……」
「……とにかく、王様に報告しねぇと。」
「あァ……思ったよりやべぇ事になってるみてェだな。」
三人はそう言い、ヴォシム王国へ戻る。
「……くっ!」
「……っ!」
「な、何なのだ……」
「……飛躍したものを、見過ぎたわね。」
アラン一行は腰が抜けたようで、全員ジェット達の背中を見つめるのみだった……
西の大陸……の、何処か。
四魔姫の一人、アルトリウスが玉座に座っていた。
右腕が機械で出来ている半機械生命体……長身で髪は短く、程よい筋肉が張っている。背中には、何の目的か検討もつかないが無数のコードが繋がれている。
言わずもがな、上記のエネルギー波を放った本人である。
「ふん……あのドラゴンでは、歯が立たぬか……しかし、私の目的は達成された。」
アルトリウスの横には、ヴォシム王女が居た。下着姿にされて口も封じられ、手も後ろで縛られている。
「……ッ!」
王女は、キッとアルトリウスを睨んだ。そんな視線を受け、クスクス笑う。
「一国を築いた王の娘には、神に寵愛を受けるケースが多いとされるが……貴様のその神の寵愛、どの程度のものか……見ものだな……フハハハハッ!」
アルトリウスの高笑いが、この空間に響き渡った……




