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ジェットのぼうけん  作者: ジョーカー
前章:勇者進撃
28/131

決勝戦

「……」

遂に来た。

来てはいけない時が来てしまった。

シクスパークの闘技場……そこで、ジェットは決勝にまで勝ち上がったのだ。

決勝戦の相手は、勿論ジョーだった。

俺が武術を始めたきっかけ……ある意味、憧れとも言える存在だ。

はっきり言う、勝てる気がしない。

しかし、行かねばなるまい。

出てしまったのだから、出ざるを得ない。

「……」

ローレンスが、入場口前で壁に寄りかかっていた。

「ローレンス。」

「……奴は強いぞ。」

「分かってる。」

素っ気ない会話を交わし、入場しようと歩く。

「頑張れよ。」

背に言葉を投げ、ローレンスは観客席方面へ歩いていった。

「ああ……」

ジェットは入場し、闘技場に立つ。

既に、ジョーが腕を組んで立っていた。

「さぁ、遂に始まりました!!決勝戦ですっ!!白虎の方向、ジョー選手!!玄武の方向、ジェット選手!!さぁ、果たしてどんなバトルが繰り広げられるのかッッ!!?」

「……」

「……」

「始めぇええっ!!!」

開戦の銅鑼が鳴らされ、響く。

それと同時に、観客席にバリアが張られた。

二人は向き合ったまま、動かなかった。

「動かない……」

「ど、どうなってしまうんだ……」

「……」

観客がザワつき、ローレンスだけが静かに見ていた。

沈黙が続き……先に動いたのは、ジョーの方だった。

腕をクロスし、目を見開く。

「……はぁあッ!!」

そして、力を解放した。

凄まじい力の圧で衝撃が轟き、旋風が巻き起こる。

「なっ!!?」

「う、ウソ……!?」

「なんて……力……!!」

観客席のバリアが揺らぐほどの旋風が、ジョーの力を伝えてくる。

皆は確信した。こいつは、とんでもない化物だと……

「……」

ジェットは木刀を構え、目を鋭くする。

額から汗が滲み、頬に伝わる。

顎から零れ落ち、聞こえるか聞こえないか程の水音が鳴った……

「つぁあああーーーっ!!!」

ジェットは駆け、木刀で顔面に一撃した。

クリーンヒットするが、手応えがなかった。

「く……!?」

「……」

「うぉおおおおおっ!!」

剣技と武術が乱舞し、ジョーに無数の攻撃が叩き込まれる。

全て直撃するも、まるで効果がなかった。

何故だ……!?

「しゃおらぁっ!!」

顔面に両足蹴りしてからバク転し、距離を取る。

当然効果は無かったが、目的はそこにない。

「しゃあっ!!」

両手に氷の魔力を込めて、連射した。

「……フンッ!!」

ジョーの目が見開き、気合が放たれる。

それによって氷の魔弾は、消し飛ばされた。

「じゃあこいつはどうだっ!?」

ジェットは両手を突き出し、フリーズバーストを放つ。

しかしそれは、あっさりと弾き飛ばされた。

「な……!?」

「そんな程度か……!!」

ジョーは拳を握り込み、力を込める。

そして、その場で思いっきり正拳突きを放った。

「うわっ!?」

拳圧が飛び、ジェットに向かってくる。

それを避けて、構え直した。

「オラァアアッ!!」

ジョーは跳び上がり、殴りかかってくる。

「ちっ!」

バク転で拳を避けて、向き直す。

しかし、既にジョーは背後に居た。

「なにっ!?」

「おるらぁああっ!!!」

そして、ジェットを全力でぶん殴った。

パンチは直撃し、水平にぶっ飛ぶ。

「くそっ!!」

木刀を床に刺してブレーキし、何とか場外は免れた。

しかし、ジョーは殴りにかかってくる。

「オラオラオラオラオラァ!!」

「くそっ!!」

木刀での受けが、まるで無意味だった。

中距離戦の有利が全く活かせない程の、乱暴な拳でのラッシュ。

「ぐぐ……!!」

「ヒャッハァッ!!」

ジョーはスキを見て、ジェットの腹を蹴り据えた。

とてつもない威力の蹴りで、ぶっ飛んでしまう。

「ぐっうぅっ!!」

何とか着地し、ジョーの方を見る。

「拳が近接武器とは限らんぞッ!!」

奴は腰を落とし、その場でパンチを連打していた。

すると、拳の形をしたエネルギー弾がこちらに向かって飛んできた。

「ウソだろっ!?」

それを避け続けながら、なんとか接近する。

戦って、相手の動きを見なければ何も始まらない。

とにかく、普通の戦いに持ち込む事に専念する事にした。

「ハァアッ!」

ジョーも拳に力を込め、突撃する。

「だっ!!」

「ふんっ!」

木刀が、腕でガードされる。

反撃に、腹にパンチが入った。

「おぐぅうっ!?」

よろけていると、頬に拳が入ってぶっ飛ばされる。

「っくそっ!?」

ダウン寸前で踏ん張り、床を蹴って突撃する。

木刀を振りかぶり、切りかかった……

「フン。」

しかし、それは掴まれて止められてしまう。

「なにっ!?」

「……」

そのまま、握り折られてしまった。

「うわっ……!!」

「折角戦ってんだ……そんな木の棒なんかじゃなくて、拳でかかってきな。」

「……」

ジェットは折れた木刀を場外に投げ捨て、素手になる。

そして構え、魔力を解放した。

「はぁーっ……!!」

「こいよ。」

ジェットは突進し、拳を振りかぶる。

ジョーも体を捻って拳を握り、おおきく振りかぶった。

「だぁあああっ!!」

「がぁあああああっ!!」

二人の一撃がぶつかり合い、衝撃が発生する。

拳が押し合い、バチバチとエネルギーが散る。

「はぁああああああ……!!!」

「おぉおおおおおお……!!!」

押しあっていたエネルギーが爆発し、辺りに爆煙が舞う。

二人は、消えていた。

「なっ!!?消えたァッ!!?両選手、どこ行ったのだァッ!!?」

実況がそう言い、観客も闘技場を見回す。

しかし、二人の姿は無かった。

当惑する闘技場の中で、ローレンスだけが二人を見ていた。

上空だ。

「はぁああああああっ!!」

「オラァアアアアアッッ!!!」

空中で、ドカドカとぶつかり合っているのだ。

二人のぶつかり合いが衝撃を巻き起こし、雲を吹っ飛ばしている。

「はははははっ!!やるじゃねぇかっ!!」

「お前こそ……!!」

笑うジョーの顔に、少しばかり憂いが混じった。

「あの時から、俺は戦うのが億劫になっていた……俺の拳は、ただ鬱憤を晴らすだけの道具に成り下がっていたんだ……」

「……」

激しく攻防しながらも、ジョーの話を聞き入る。

その攻撃が、弾かれる度に強くなるのを感じた。

「だが……」

表情から憂いが消え失せ、歯を見せた笑顔に変わった。

「お前に出会えて、ようやく思い出せた!!」

「!!」

超スピードで拳が飛んでくるが、それを受け止める。

しかし奴は、既にもう一方の拳を振りかぶっていた。

「強くなるために心身を鍛え、更なる強者に挑む事の愉しさが!!」

「っ……!!」

その拳も受け止め、二人は押し合う。

「おらぁあっ!!」

ジョーがジェットの腹に蹴りを入れ、ぶっ飛ばした。

「くっ!?」

「ハイヤァッ!!」

既に背後に回り込まれており、背中に蹴りが入る。

「うわぁあっ!?」

「こっちだノロマ!!」

また回り込まれ、今度はスレッジハンマーで叩き下ろされた。

猛スピードで、闘技場の床に落ちていく。

「おらぁあっ!!」

ジョーはこちらを追いながら、拳を構えていた。

「このっ……!!」

ジェットは体勢を整え体を捻り、猛回転した。

ブーンッと体が浮かび、ジョーに向かって飛んでいく。

「なにっ!?」

「おらぁあっ!!」

その勢いで、顎にアッパーした。

「ッッ!!?」

今度は縦に回転し、勢いよくスレッジハンマーした。

「ぬぐぅっ!!」

「おっしゃああーっ!!」

ジョーに追いつき、攻撃を仕掛ける。

しかし攻撃には対応され、そのまま攻防する。

「あだだだだだだ……!!」

「うぉおおおおお……!!」

凄まじい拳の打ち合いが始まり、エネルギーがスパークする。

辺りにもエネルギーが飛び散り、爆発が巻き起こった。

「っぐ……!!」

熱い。

ジョーの拳が、燃えるように熱い。

魔法だ……それも、超高レベルの炎魔法。

故意に使っている訳ではない。無意識の賜物という奴だろう。

「だだだだだ……!!」

「うぉおおお……!!」

そうして攻防していると、二人は闘技場に墜落した。

衝撃で、濃い砂煙が舞う。

「おおっ!!?あの二人が、空中から落ちてきたぞぉっ!!?どうなったんだぁっ!!?」

「……」

砂煙の中で、拳と拳がぶつかり合う音が聞こえる。

「つぁああーっ!!!」

「がぁああーっ!!!」

クロスカウンターが決まり、エネルギーが旋風する。

その旋風で、砂煙が吹き飛んだ。

「ぐ……ぐぐぐ……!!」

「ぬぐぅう……ぐ……!!」

ジョーが離れ、拳を薙ぎ払う。

しかしジェットが腕でガードし、ボディブローを決めた。

「っがはっ!?」

血を吐きながら後退するが、踏ん張る。

そして、ジェットの頭に頭突きした。

直撃し、額が裂けて出血する。

「っづ……!!でりゃあっ!!」

血を飛び散らせながら体を捻って、腰を落とす。

そして、渾身の蹴りがジョーの脇腹に炸裂した。

「がはぁああ……!!」

「おらぁああーっ!!」

拳に氷の魔力を込めて、ジョーの頬に叩き込む。

見事に炸裂し、揺るがせることに成功した。

「っぐはぁあ……!!」

「これが……俺の全力だぁあああーーーっ!!!」

ジェットは拳に全てを込めて、ジョーの鳩尾を打ち抜いた。

その体は大きくぶっ飛び、放物線を描きながら落ちていく。

そして、場外寸前の所に倒れた。

「はぁ……はぁ……!!」

揺らいで防御もクソも無くなった時に、鳩尾への渾身のストレート。

体重のせいからかあまりぶっ飛ばなかったが、それでも大ダメージにはなった筈だ……

「……っくっくっくっく……っはははは……ゲホッゲホッ……!!」

ジョーは立ち上がりながら笑い、咳き込みながら吐血する。

その目が、ハッキリとジェットを捉えた。

「戦いの中で、よもやこの俺が追いつかれるとはな……」

「……どうしたら勝てるか考えてたら、いつの間にか成功していただけだ。」

「……」

フッと笑った後、目が鋭くなる。

構えを取って、全身を力ませた。

「ジェットよ……好敵手になったお前に万感の感謝を込めて、俺は今一度本気を出してみようと思う……」

「……」

さっきまでの戦いが、本気ではなかった……のは、察していた。

こいつは、ハッタリを言うような人間ではない。

「……行くぞ。」

「ああ。」

返事をした瞬間、とてつもなく重い拳がジェットの腹を打ち抜いた。

「ッッッ……!!!?」

「はぁあ……!!」

先程のパンチで、ジョーのシャツの袖が破けていた。

パンチの瞬間の筋肉の膨張で、破けたのだ。

「おらぁあっ!!」

もう一方の拳が、顔面を打ち抜く。

その衝撃で、また袖が破けた。

「っぐぅううっ!!?」

なんとか踏ん張り、向こうを向き直した。

奴は腕をクロスして、震えていた。

凄まじいエネルギーが練り上げられ、充実していく……

「っはぁああああっ!!!」

燃えるようなエネルギーが爆発し、天を衝く。

辺りに熱風が吹き荒び、衝撃が轟き、地響きが起こった。

「ぐ……!!?」

「はぁあああーーーっ!!!」

ジョーの咆哮で、溢れ出るエネルギーが吹き飛んだ。

先程のエネルギーで服が燃えカスになったのか、上半身裸になっていた。

ゴキゴキと首を鳴らしながら、実況の方へ向いた。

「……おい実況、てめぇは審判も兼ねてんのか?」

「は、はひっ!?え、ええ!」

実況は、こくこく頷く。

それを見て奴は、笑顔を浮かべた。

「……なら、もうこの試合に場外負けは要らねぇ。ルールから消しな。」

「ふぇっ!?し、しかし……」

実況がそう言いかけてる間に、拳を掲げる。

その腕にはこれ以上となく筋肉が込められていて、力こぶがまるで金属のようになっていた。

「チェリャアアァッッッ!!!!」

その拳を振り下ろし、地面をぶん殴る。

すると、場内が崩壊した。

「うぉおあああっ!?」

「ーーーっ!!?」

場内だけではなく、観客席にも地震が起きた。

「わーっ!?」

「なんだなんだなんだなんだ!?」

「う、ウソだろっ!?人間の拳が……」

「相変わらず、力だけでやりたい事をやる奴だな。」

ローレンスだけは、冷静に見ていた。

この中で一番長くジョーと付き合っているので、この程度ならば慣れているのだ。

「さァ、これでこの遊園地全てが闘技場だ。文句は言わせねぇぞ?」

「いででで……お、おい審判!?アリなのかこれは!?」

実況の方を見ると、おどおどしながら丸サインしていた。

このエゴに満ちたワガママが、まかり通ってしまったようだ。

「……はぁ……ま、ある意味で俺も有利になったからいいか。」

ジェットは服を破き捨て、伸脚した。

「勿論、俺も全力で行かせてもらうぜ。拳で。」

拳をガチンと合わせてから、構える。

ジョーも、ついに本気を出してきた。

そして何より、場外がなくなってしまった……

という事は、勝敗はどちらかが負けを認めないと成立しないという事だ。

決戦も決戦、これが最終決戦だ。

「いくぞジェットぉおおおおッッッ!!!」

「おぉおおおおおおッッッ!!!」

二人は駆け寄り、拳を振りかぶる。

こうして今、最終決戦の火蓋が切られたのだった……

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