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ジェットのぼうけん  作者: ジョーカー
前章:勇者進撃
18/131

名も無き村

アクトロ荒野にて、謎の大サソリに襲われたジェット。

なんとかそいつを返り討ちにした直後、不意にダークエルフが話しかけてきた。

ジェットはそのダークエルフの言葉のままに、村へと向かった……


名も無き村……

「……」

小規模な村だが、農業に勤しんでいる人間の男や、買い物をしているダークエルフの親子が通りを行き交っていた。

「ダークエルフの村……いや、人間の男まで……」

「はい……ここはこの星で唯一、人と魔物が共存する村です。」

「何で共存を?」

「それは、私の家に着いてからお話しましょう……」

ジェットとダークエルフは並んで、村の通りを歩いた。

不意に、ジェットの前に少女のダークエルフが来た。

「……」

にっこりと笑いながら、手を出す。

「ああ……そういう事かよ。」

今、ようやく菓子を買い溜めした理由が分かった。

「ほらよ。」

ジェットは、その少女にチョコレートを与えた。

「!」

少女は嬉しそうに、親の所へ走る。

すると、それがきっかけで子供がわらわらと寄ってきた。

「わーい!」

「おかしー!」

「うわぁ、戦後の米兵か俺は。」

ジェットは、子供たちにお菓子を配った。

受け取った子供たちも、嬉しそうに親の所へと走る。

「……優しいのですね。」

「勇者だからな。」

一通り菓子を配り終え、ジェットは一息つきながら袋に手を突っ込む。

「おいおい、まだあるぜ……あいつ、どんだけ入れたんだ……」

「では勇者様、こちらへ。」

「あ、ああ……」

一息ついたのを確認したダークエルフは歩き出し、ジェットもついて行く。

そうして導かれた先は、村で一番大きな屋敷だった。

「おお……」

「この先も、私が案内します。ついてきて下さい。」

「ああ、分かった……」

ジェットは、引き続きダークエルフについていった……


村長の家に着いた。

質素ではあるが、そこそこいい家である。

ダークエルフのあとをついて行き、大きな扉を開く……

「おお、君が勇者か。」

「っ!?」

ジェットを待っていたのは、村長ダークエルフだった。

豊満な体に、妖しい美貌、艶のある小麦色の肌……までは、予想できた。

しかし予想外、その格好は凄く際どかった。

思わず、目を背けてしまう。

「む?どうしたのだ?」

「い、いやアンタ!際どすぎんだろ!ちょっとは抑えろ!」

「お、抑えろと言われても……これが村長着だからなぁ……」

「……」

ジェットは頭を振り、首を鳴らす。

視線を戻すと、たわわに実った豊満な胸から、乳首がハミでて見えていた。

「……」

勘弁してくれ……俺は童貞だぞ……

「勇者よ?」

「あ、あぁ……」

ジェットは落ち着いて瞑想し、息を吐いた。

「どうやら、この辺の事情は少し複雑のようだな……話を聞かせてくれ。」

「ふむ、間違いないようだな……まぁ、立ちっぱなしで話すのもなんだ。座りたまえ。」

ジェットは座って、体勢を楽にする。

そして、村長の話を聞く姿勢をとった。

「まずは、魔物であるはずの私達がなぜ人間と共存しているかを説明するか?」

「ああ、頼む。」

ジェットがそう言うと、村長も頷く。

そして、語り出した……

「……あれは、今から三年前だった。激化しゆく人間と魔物の戦い……押しつ押されつの戦争を繰り広げていた最中だ。私達はエルフと合同して、土地を占領していた。エルフは森を、私達は谷を。森で怖気付いた人間の兵士をエルフが谷へと追い込み、私達が狩る……そんな戦いを、何度も繰り広げていた。」

「……」

そう言えば、エルフとは別種族のダークエルフは、谷に住んでるって噂をちょびっとだけ聞いたことあるな。

なぜ、こんな何にもない所に村を……?

「……ある日、エルフの提案で捕虜を取る作戦に出た。その時の捕虜の拘束と世話は、私達がする事になった。しかし、それが不味かった……」

「……」

「ある日、その捕虜の一人とダークエルフが、恋に落ちてしまったのだ。」

「人間が……魔物と?」

「うむ……二人の恋は熱く、種族も地位も、戦争も関係ないという状態だった……その時、我らも確信した。『人間だって、話をすれば分かってくれる!』と……」

「あ〜……その、お前らに殺された人間はどうなる?いい話っぽいけど、そんな奴らがあまりにも浮かばれねぇぞ。」

「……我々は、無駄な殺生は好かん。この戦争に疑問を抱いているし、谷へ入った人間は最低限の防衛と、忠告だけして逃がしていた……時に、怪我をした人間を助けた事もあった。」

「なるほどね……」

そう言えば、ダークエルフに殺された人間というのは聞いたことがない。

戦況が悪くなった人間達が、谷へ逃げ込んで全員生還。

その後の戦いで一発逆転したという話ならば、よく聞いた。

そうか、こういう事だったのか……

「私達は武器を捨て、人間に訴えた。すると、分かってくれる人達が居たのだ。そんな人達と、我々は共存の道を選んだ……しかし、その選択にケチがついた。」

「ケチ……?」

「魔王様はその事を知って、私達を裏切り者と断じた。そして、多数の魔物からの弾圧が始まった……」

「まぁ、そうなるだろうな……」

「空にはハーピー、森にはエルフ、荒野にはゴブリン……私たちに、逃げ場は無かった。魔王様についている魔物達と戦うには、私達は弱すぎた……やがて、ダークエルフの数は私を含めわずか50人までに数を減らした……」

「50……!?馬鹿な、魔王っつーのは血も涙もねーのか!?」

「悪くなったものは、すぐさま剪定する……そんな、冷徹な性格だったからな……私達を守ろうとしてくれた人間も、たくさん死んだ……」

「……」

ジェットは、絶句していた。

魔王というのは、そんな奴なのか。

たかが自分とは違う考えの一種族を、絶滅寸前にまで追い込むほどの暴君なのか。

「絶望に打ちひしがれ、多数の魔物達に虐げられていた私達ではあったが……ある日、そんな私達の前に立つ人間が居た。」

「……」

「その人間は、勇者でも正義の味方でも、何でも無かった。ただ……」

「ただ……?」

村長は言葉に迷い、しばらく考える。

そして、ゆっくりと続けた。

「ただ……私達には、その人間が『飢えた鬼』のように見えた……」

「飢えた鬼……?」

「ああ……凄まじい暴力で、私達に向かってくる魔物を捻り潰していた……私達を守る、というよりは自分の鬱憤を発散するように……」

「……」

「魔物達は彼を脅威と呼び、恐れ……私達は彼を神のように崇めた……」

「そんなにすげぇ奴なのか。」

「ああ……どの人間とも違う感じがした……ややこしい理屈も信念もない、ただひたすらに強い力の化身のような男だったからな……」

「……」

その男に救われた後は、ここに村を作って暮らしているという訳だ。

そういう訳で、外部から寄ってきた旅人やら何やらをここに招き入れ、人間と共生している。

「そうか、そういうことか……」

人間と共存する魔物、ダークエルフ。

その背景には、壮絶な過去があったのだった。

全てを話し終えた村長は、真剣な顔をした。

「……しかし、ここも遂にエルフ達に嗅ぎつけられてしまった……明日には全軍勢を連れて、ここに攻め込んでくるだろう。そうなれば、今度こそ我らもおしまいだ……」

「急だなオイ。」

いや、ここからが本題という訳か。

まぁ、おおかた予想はついてはいるが……

いや、でも待てよ……

「あの、クソ強いサソリが居るから平気じゃね。」

ジェットがそう言うと、村長は首を振る。

「確かに、あのサソリのおかげで前の軍勢は押し返せた。しかし、今度はエルフの女王も参戦してくるだろう。そうなれば、あんなサソリでは抵抗にすらならん……」

「そうか……つーか、アレは何なんだ。めちゃくちゃ強いじゃねぇか。」

「我らが魔力を注いで召喚した、魔生物だ。ここの防衛を任せている上に、来たものを善の者か悪の者かを判断する役割もある。」

「……」

やけに撤退が早かった訳だ。

という事は、俺は善の者?

やったぜ。

とにかく、だいたいの事情は分かった。

迫害され続けたダークエルフは、人との共存に歩みを進める。

それに横槍を刺すように、エルフ達がここを潰しに来るらしい。

なるほど、分かった。

もう、どうすればいいのかだいたい分かってしまった。

「まぁ、俺は勇者だし……そのエルフって奴は気に入らねぇ。使命と私情を混合させると周りの奴から、あーだこーだ言われるが、俺には関係ねぇ。」

「おお……流石、勇者……!やはり、噂は本当であったか……!」

「どういう噂かは知らねぇけど、俺はやりたい事やるぜ。文句言うなよ。」

ジェットはそう言いながら立ち上がり、首をゴキゴキ鳴らす。

「よっしゃ、やってやろうじゃないの!ダークエルフの村防衛戦!」

パンッと拳を叩き、笑顔を見せた。

「人間の勇者が戦うのなら、我らも共に戦おう!少し待っておれ、戦士を集めておくぞ!」

村長はそう言いながら、ばたばたと戦闘準備を始めた……


ジェットは、素振りしながら明日を待つ。

決戦まで、修行するつもりなのだ。

「……」

ダークエルフの言っていた男……あいつは、何者なのだろうか。

その人物を比喩するのに、『飢えた鬼』という言葉を使っていた……

やはり、鬼のような人間なのだろうか。

いや、そもそも人間では無いのだろうか。

真相はまだまだ分からないが……今は、エルフ族との戦いに集中すべきだ。

やはり、エルフも全員メスなのだろうか。

耳のとんがった、色白で、弓矢放ってくる、そんなアナログなエルフなのだろうか。

そうなると、やっぱりエルフの王様的な奴も女王?

……やはり、またアデリアやセレストと同程度の戦闘力を持っているのだろうか。

そうなると、激戦は避けられないであろう。

「……よーし、気合入れとくか……!!」

ジェットは、トレーニングのスピードを早める。

気合万端な状態で、明日への戦いに臨むつもりなのだ。

唐突とはいえ、エルフ族と戦うハメになったジェット。

果たして、どうなることやら……

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