ダークエルフの村防衛戦
旅を続けるジェットが寄ったのは、名も無きダークエルフの村だった。
そこで、村長からの頼みを受けて、エルフの一族と対決する事となった……
ジェットが村に来てから、翌朝……
「……」
宿屋で、目を覚ました。
いつもの服に着替え、身だしなみを整える。
「さぁて、今日はどれぐらい死にかけるのかなっ。」
そう言いながら、伸びをしたり伸脚する。
剣を手に取って、軽く振ってから腰に携える。
そして、外へ出た……
村は、いつも通りの雰囲気ではなかった。
農作業をしていた連中が家に引きこもり、戸を閉めている。
店も閉め切っており、完全に防御態勢に入っているようだ。
通りはというと、戦闘員が準備をしていた。
人間の戦士も、ダークエルフの戦士もだ。
「……勇者様。」
「ああ。」
出迎えるように、昨日のダークエルフが話しかけてきた。
「これを。」
渡してきたのは、おにぎりだった。
普通の、何の変哲もない、おにぎり二つだ。
「ここに居る戦士達が少しでも戦う力がつくようにと、昨日の夜中に村民達が握りました。どうか。」
「ああ、サンキュ。」
朝飯を確保した。
おにぎりを食べながら、ジェットは戦士達と待機する。
「……勇者か。」
「?」
話しかけてきたのは、忍者風の格好をした、仮面を着けた戦士だった。
しかも、他の戦士とは違って俺と同い年ぐらいだ。
「緊張するな。」
「ああ……」
何だろう、俺と同い年っぽいから、シンパシー的なものを感じたのかな。
とりあえず、激戦前の緊張感を無くすために、その忍者と会話した……
「実は、我も二日前にここに来た旅人でな。」
「へぇ、それは何で。」
「ある男を探しに来たつもりだったんだがな。」
「居なかったのか……ある男って、誰だ?」
「我の友人だ。」
「行方不明なのか?」
「生きてる事は確かだ。」
この戦士、どうやら行方不明の友人を探しにここまで旅したらしい。
しかし、無駄足だった上にこんな事に巻き込まれたと。
「ここに入る前の、あのでっかいサソリはどうした?」
「倒せると確信した瞬間、地面に潜られた。」
実力は、そこそこ高いらしい。
それも、感じられるパワーだけならサルバを超えるだろう。
なるほど、めちゃくちゃ強そうだ。
「戦闘員だから、ここに残ったが……」
「……」
二人は、村の戦士達を見渡す。
ダークエルフと人間の戦士……僅か、50名居るか居ないかぐらいの人数だった。
エルフの一族全軍と戦うとしたら、あまりにも絶望的に見える。
「ああ〜……こりゃ真正面から突っ込めば撃沈コースだな……」
「いや、あの大サソリもいる……僅かなら、抵抗は出来るだろう。後は、俺達の頑張り次第だ。」
「そ〜だけどさ〜……」
とにかく、こんな事になってしまった以上はやるしかない。
急いでおにぎりを食べて、飲み込む。
そうして、待機して間もなくの事だった。
「来たぞ!全員配置につけ!」
ダークエルフの声で、戦士達が呼び出された。
どうやら、ようやくここにエルフ族が向かってくるらしい。
「あ、もう来たの?」
「行くぞ。」
ジェットと忍者風の戦士は、遅れて向かった……
村の外……
森の方角から、大量のエルフ族がこちらへ向かっていた。
「な、なんだありゃあ……!?」
「なるほど、攻めてきたのは約1000体か。」
忍者風の戦士が、エルフ族を見回してそう言う。
「行くぞ!皆の者!!例え絶望ばかりでも、私達は最後まで諦める訳にはいかないっ!!」
村長が、戦闘着で皆の前に立つ。
そして、エルフ族の大軍を掌で刺した。
「絶対に、生きてこの村をあのエルフ族から守る……!!行くぞぉおっ!!」
「ぉおおおーーーっ!!!」
「……」
「……」
ジェットと忍者風の戦士以外は、どうやらこの村の戦闘員のようで、最後まで戦うつもりのようだ。
しかし、あの敵の数はあまりにも絶望的……
……と、敵の大軍の中から、馬に乗ったエルフが現れた。
「お、あいつが大将か?」
「そのようだな……」
以下にもな感じの格好に、とてつもないパワーを感じる。
間違いない、あいつが大将だ。
「勝ち目の無い勝負をよくも……」
馬に乗ったエルフは、弓矢をこちらに向ける。
「人間の戦士共々惨たらしく死ぬがよい!魔王軍の裏切り者が!!」
そう言いながら、矢を放った。
「!!!」
ジェットのすぐ隣に居た、忍者風の戦士が撃ち抜かれた。
「うわっ!?」
何と、ジェットの方にも矢が飛んでくる。
それを剣で斬り弾き、構えた。
「しゃあっ!!」
なんと、ダークエルフ村長にも飛んできたようで、それを弾き飛ばしていた。
「な、なんて奴だ……一発で矢を三本も放ってきやがった……!!しかも、なんつー神エイム……!」
あとついでに、忍者風の戦士がやられた。
なるほど、もうマジのようだな。
「む……二人、撃ち逃したか。まぁ良い。皆の者!!かかれーっ!!」
そいつの号令で、エルフ族はこちらへと走ってきた。
1000の足踏みが大地を揺るがし、震える。
「怯むな皆の者!私達は、戦うぞぉおっ!!」
「ぉおおおおーーーっ!!!」
ダークエルフ村長の号令で50人の戦士達は魔力を解放し、エネルギー波を大軍に向けて連射した。
次々に敵を撃ち抜いて、何とか食い止めている。
「よっしゃあーーーっ!!」
ジェットは走り出し、敵の大軍に単身で向かった。
エネルギー波と共に駆け抜け、遂には敵の眼前へと辿り着いた。
「なっ!?」
「どぉらっ!ヒャッハァ!!」
敵を袈裟斬りしてから、蹴り飛ばす。
「このっ!」
「ふんっ!」
背後から迫ってきた敵に、剣を突き刺した。
「っ!!?」
剣の魔力が、その敵に炸裂する。
すると、そいつは完全に凍りついた。
ジェットは剣を抜いて、足に魔力を宿す。
「くらえ……!!スノウダストストーム!!」
その足で凍りついた敵に、回し蹴りする。
するとそれは粉砕し、欠片が氷の刃となって敵を切り裂いた。
「ぐぁあっ!」
「きゃあっ!」
「ぅぐっ!?」
「うわぁあっ!」
「オラオラオラオラ!!」
ジェットは、敵を切り分けながら突き進む。
「こいつっ!?」
「女王様の方へ!?」
「させるかぁあっ!」
「邪魔だーっ!!フリーズバースト!!」
ジェットは手を突き出し、そこから氷の魔力が篭った魔力を撃ち放った。
それは敵の一体に当たって炸裂し、辺りの敵を次々に凍結させた。
「うわぁあああっ!?」
「な、なんだと……!?」
「氷上、八艘飛び!!」
ジェットは飛んで、凍りついた敵を踏み砕きながら進む。
そして敵の大軍を抜けて、遂に女王の眼前まで来た。
「……!!?」
「おらぁああっ!!」
思いっきり剣を振りかぶり、兜割りを放つ。
「ふんっ!」
しかし女王は槍を取り出して、ジェットの剣を受け止める。
そして、思いっきり薙ぎ払った。
「おっと!」
ジェットは身を翻して槍を躱し、着地する。
「単身でここまで乗り込んだその心意気や良し……しかし、貴様の行動は無謀のそれだ。」
「いや、そうでもねぇさ……」
二人は構え直し、戦闘態勢をとる。
気迫がぶつかり合い、ピリピリと音を立てた。
「ふ……小さきものよな……馬上から見る敵は。」
「いくぜっ!」
ジェットは踏み込んで、女王に切りかかる。
「はぁっ!」
しかし馬が跳んで剣を避けて、ジェットの背後に来た。
「しゃあっ!!」
女王は槍を構え、ジェットに一閃する。
「っ!!」
なんとかその一撃を剣で凌いで、防御して見せた。
あまりの威力に、腕がビリビリする。
「ほう……私の槍を凌ぐとは……名乗れ、人間。」
「ジェットだ。」
「ジェット……?ぷっ……くはははははっ!」
女王はそれを聞いて、笑い出した。
「……そうか、貴様がハルピュイア様と戯れたという勇者か!そうかなるほど、生きてこられただけはある!」
「あんた、名は?」
「私はクローディナ!エルフ族の女王にして、エルフ族最強戦士だ!」
そう名乗って、馬上から槍でジェットを指す。
「人間族の勇者よ……ここまで戦ってこれただけの実力はあるようだな……しかし、ここで貴様は終わりだ!我が聖槍で、その邪悪なる魂を貫いてくれる!」
「上等だ!じゃあ、その自慢の槍をへし折ってやるよ!!」
二人は力を解放し、全力になった!
気と気がぶつかり合い、バチバチと火花を散らす……
「……女王と、勇者がぶつかり合ったか。」
ダークエルフの村長は、千里眼でジェット達の様子を見る。
ジェットとクローディナは、ほぼ互角の攻防を繰り広げていた。
「……よしっ!司令塔は無くなった!攻め込めぇええっ!!」
「うぉおおおーーーっ!!!」
剣やら斧やら持った戦士達が、1000の大軍に突っ込む。
「馬鹿め!!この人数に勝てると思ったか!?」
「女王様の指示を聞くまでもない!!正面から叩き伏せてくれる!」
大軍が、戦士達に襲いかかる……
「っ!!?」
先頭を走っていたエルフの一人の首が、飛んだ!
「ウワッ!!?」
「な、なによ……っ!!!」
驚くエルフ達に、次々に斬撃が走る。
そうして瞬く間に、大軍としての勢いを落とした。
「な、何が起きてるの……!?」
「仲間が、次から次に斬られ……ぎゃっ!!?」
エルフの両腕が切り落とされ、両膝にも斬撃が走る。
「ーーーっ!!!」
次の瞬間、その体が唐竹割りにされた。
そこから、さっき矢で撃たれた忍者風の戦士が現れた。
「な……!!?」
「撃たれたはずじゃ……!?」
忍者風の戦士は、仮面を返り血で汚しながらも着地する。
「軍隊としての勢いを、真正面からぶつけて叩き潰す……そこまでは良かったが、油断しすぎだな。後ろが留守だったぞ。」
「な、何者だ貴様はっ!!」
周りのエルフが、一斉に忍者風の戦士に武器を向ける。
「そうだな。戦士として戦う以上、名を名乗るべきか……我の名は、ローレンス。よく覚えておくんだな。」
ローレンスと名乗った、忍者風の戦士。
そいつは手にエネルギーを纏って、消える。
「っ!!?」
「きゃあっ!?」
「がはぁあっ!!」
ローレンスのおかげで、エルフ族の大軍は混乱に陥る。
その中で戦士達は固まって、エルフを次々に切りつけていった。
「離れるなっ!!なるべくお互いの背中を守れっ!!」
「死角をつくるなっ!!」
「倒せる奴だけ倒せっ!!」
そうして戦っている内に、不意に地面が揺らぐ。
モコモコと土が盛り上がり、そこから巨大なサソリが飛び出してきた。
「ギギギィイイイーーーっ!!!」
「あのサソリだーっ!!!」
「うわぁああああっ!!」
大サソリは登場するや否や、激しく大暴れして大軍を掻き回した。
「そ、そんな……!!?」
「この軍差だぞっ!?押されているっ!?」
「ひ、怯むなっ!!先にあのダークエルフを……!!」
矢を構えたエルフ。
その両腕が断たれ、ぼとりと落ちた。
「ーーー!!!」
「ギシャアアアッ!!!」
そいつに大サソリが回転タックルし、粉砕した。
「まさか共闘することになるとはな。」
「ギ。」
ローレンスは、大サソリに乗って敵軍を見回す。
「敵はかき乱れ、脆くなっている。今攻め込まねば、好機は戻らない。本気でいくぞ!」
ローレンスが指揮して、大サソリが暴れ出す。
事態は、一気に大混戦となった……
その戦乱の中で、ジェットとクローディナが睨み合う。
こっちはこっちで、全力のバトルを繰り広げようとしているのだ……
「……こいよ。」
「貴様から来たらどうだ?」
二人を避けるように、戦乱の輪が広がる。
これで、もうお互いは逃げられない。
勇者と女王はそれを確認し、笑う。
「だぁあっ!!」
「ふっ!!」
ジェットは踏み込んで、突進する。
クローディナは馬を操り、突進する。
二人は、激突した……




