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プロローグ
プロローグ
海の音が、すぐそばで聞こえていた。
波が寄せては返す、その繰り返しが、どこまでも穏やかなはずなのに、不思議と胸をざわつかせる。
どうしてだろう。
この場所を、知っている気がした。
空は燃えるような茜色に染まり、小さな島の海岸には、どこまでも続く海が広がっている。
その真ん中に、少女が立っていた。
白いワンピースが風に揺れ、長い髪が夕焼けを透かしている。
どこか、泣きそうな顔だった。
「ねえ」
少女がこちらを見る。
初めて会うはずなのに、どうしてかその声を知っている気がした。
「もしも、この世界が終わってしまったら」
不意に、そんなことを言う。
意味は分からなかった。
でも、不思議と怖くはなかった。
「そのときは――」
少女は、ゆっくりと手を差し出す。
小さな手だった。
けれど、その奥にあるものは、妙に重く感じた。
「きっと、私を救ってね」
無邪気な約束のようでいて、その声はどこか震えていた。
どうしてそんな顔をしているのかは分からない。
それでも――
「……うん」
気づけば、頷いていた。
どうして、こんな約束をしたのか。
その疑問だけが、一瞬だけ胸をよぎる。
少女は安心したように微笑む。
夕焼けがいっそう強くなり、世界はゆっくりと光に包まれていく。
波の音が遠ざかる。
その中で、少女の声だけが、最後まではっきりと残った。
「約束だからね」




