↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
続・昭和ブンドド娘~二学期編~  作者: まつたきりか


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/9

ヨーグルトとフルーツゼリー(7)

「あっはっは! そりゃ本山ちゃんが悪いわー!」


 次の日、千葉さんに相談したら大笑いされてしまった。


 考えてもみなかった。

 できることなら成就してほしいと願っていた孝美の恋路を一番邪魔しているのが自分かもしれない、などとは。


 自分の普段やってることを棚に上げて将人を糾弾しようと暴走したのも恥ずかしかったし、ひょっとしてこれまでも、将人のことで私の所業が孝美に迷惑をかけていたかもしれないということを自覚した。そして生まれてこの方のいろいろな苦い思い出が、頭の中で走馬灯のように駆け巡りもした。


 あの後、昨日の帰り道でもなんとなく孝美とは気まずい空気のままだったし、今朝家を出る時も、ばったり会った将人にろくに挨拶できなかった。

 給食の時間はなんとかやり過ごしたけれど、結局気が重いまま昼休みまで引きずってしまった。

 そして、席を立とうとした千葉さんを思わず引き留め、藁にも縋る思いで昨日の出来事を打ち明けてしまったわけだが。


 ……ここまでバカにされるんなら言わなきゃよかった。


 千葉さんはまた栗山くんの席で、後ろ向きに跨るように座った格好になって、ひとしきり肩を揺らして笑った。そして落ち着くと、ふう、と長く息をついた。


「ほんとに言われるまで自覚なかったんだ?」

「うん。でも思い返せば確かにそうだなって。――んで、自己嫌悪」

「重症だねえ。でもこれじゃ、たかみーも浮かばれないわ」


 彼女は心底呆れたような口調でそう言った。


「ねえ、孝美になんて言って謝ったらいいと思う?」

「謝る? なんで?」

「だって――!」

「別にいいんじゃない? 気にしてないって言ったんでしょ?」

「……そうなんだけどさぁ」


 それは孝美が我慢しているってことなんじゃないだろうか。

 将人を好きなのは孝美なのに、私はそれを知っていて将人と仲良く話したりしていたのだ。高学年になっても気兼ねなく話しかけられる貴重な男子だというだけの理由で。

 それを、孝美はずっと――。


「ねえ、本山ちゃん」


 慙愧の念でオーバーヒートした私が机に突っ伏してしまったところで、千葉さんは少し真面目なトーンに口調を改めた。


「高尾くんって今、好きな女子いるのかな?」

「え? 将人?」


 唐突な質問に、私は面食らって素っ頓狂な声をあげてしまった。

 近くにいた何人かの女子がこっちを向いたので、ごまかすように手を振った。


「たかみー会長のこと、好きだと思う?」

「それは孝美自身が否定してたよ。全然気づいてない、って」

「じゃあ、麗子さまは?」

「……わかんない。けど、今は違うんじゃないかな」


 昨日の将人との会話を思い出して、冷静に考えてみた。将人が牧野さんに恋愛感情を抱く理由がないし、そもそもあいつにそんな甲斐性はない。今後どうなるかはともかく、現段階ではみんなが噂しているほど深い仲じゃないだろう。


「なら、本山ちゃんのことは?」

「絶対ありえないね」


 でも、さすがにここまで訊かれたら、なんとなく千葉さんの言いたいことがわかった。


「つまり将人のほうにその気がない以上は、外野がごちゃごちゃ騒いでもしょうがない、ってことね」

「うーん――まぁ、それでもいっか」


 千葉さんは私の言葉を肯定したけど、なんとなく歯切れが悪いのは気のせいだろうか。


「基本さ、小六男子なんてまだガキんちょなわけよ。好きとか嫌いとか言っても、女子ほど深刻じゃないんだわ、きっと」

「そうかな? 人によると思うけど」


 小学生の時に好きなクラスメイトがいたのに、親の都合で乳幼児と許婚(いいなずけ)にされて涙を流した、という現在男子大学生の知り合いもいるので、十把一絡げにはできない気もする。

 だけどたしかに、矢部くんにしても佐久間くんにしても、女子と付き合うより男子同士で遊ぶ方が好きっぽいし、牧野さんは憧れではあっても恋をしているわけじゃなさそうだ。

 きっと将人だって例に漏れないんだろう。


「……たしかにガキが多いのは事実よね」

「でしょ?」


 私が拍子抜けしたように肩を落とすのを見て、千葉さんは得意げに胸を張った。


「結局さ、高尾くんからしたら女子のこととか気にしてないわけじゃない? で、たぶんあと二年ぐらい経ってさ、高尾くんが思春期まっさかりになった時、はたして誰が選ばれるのか。それが大事なわけよ」

「私はごめんこうむるけど」

「あはは。――だからさ、たぶんたかみーは、ぼーっとしてるように見えて、ちゃんと期をうかがってんの。東南の風が吹くのをね」

「とうなん?」

「あはっ、わかんないか。――まあ要は、逆にたかみーがまだ気にしてないなら、気にしないのが正解なんじゃない?ってこと」


 東南の――ああ、人形劇のあれか。

 わかったけど、千葉さんの話がもう先に行ってしまったので反応できないまま、私は言いくるめられるように頷くしかなかった。

 それで千葉さんの方は満足したようで、ちょうど予鈴が鳴ったところで、自分の席に戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。