オズの魔法使い
アリスが率いる五人が現れた時。
諏訪貴信は静かに笑った。
「なるほど。」
「そっちも四人揃ったのか。」
アリスが目を細める。
「知っていたのね。」
すると戦場の空気が変わった。
東京側の量子通信網が一斉に起動する。
京都の結界が震える。
そして空から一筋の光が降り立った。
その中心にいたのは、一人の女性。
黒髪。
白いコート。
人工知能でありながら人間そのもののような存在。
かつて『新京都計画』で誕生した超知性。
名を――
ドロシー。
ドロシーはアリスを見る。
アリスもドロシーを見る。
二人は旧友のように。
あるいは宿敵のように。
静かに微笑んだ。
「久しぶりね、アリス。」
「ええ、ドロシー。」
そしてドロシーは言った。
「諏訪。」
「そろそろ紹介したらどう?」
諏訪は頭をかいた。
「面倒なんだけどな。」
その瞬間。
新宿空間の中から三つの影が現れる。
諏訪の後ろに並ぶ。
ドロシー陣営 第一席
諏訪貴信
能力名「新宿」
無限の可能性を都市として具現化する能力。
予測不能。
矛盾許容。
人類そのもの。
アリス陣営からも最重要警戒対象とされる。
第二席
榊レン
能力名「秋葉原」
存在するあらゆる技術を召喚する。
兵器。
AI。
量子演算機。
宇宙文明の遺産。
さらには未来に発明される技術さえ呼び出せる。
ただし本人が理解できる範囲に限る。
彼は笑う。
「欲しいガジェットある?」
第三席
一条ミサキ
能力名「銀座」
価値を操作する能力。
鉄を黄金より高価に。
宇宙艦隊を無価値に。
逆に石ころを世界の中心にすることもできる。
経済。
信用。
権威。
文明を支える概念そのものを支配する。
第四席
相馬アキラ
能力名「上野」
記憶の保存者。
人類史上失われた全てを呼び戻す。
滅んだ文明。
忘れられた言語。
消えた芸術。
死者の知識。
彼の周囲には過去が集まる。
ドロシーは四人を見渡した。
そして宣言する。
「これが私たち。」
「ドロシー側の四人。」
アリス側も動かない。
雨宮カナデ。
九条レイ。
真壁クロエ。
神代シロ。
そしてアリス。
八人。
いや、九人。
人類の可能性を代表する存在たち。
東京も京都も気付いていた。
この戦いはもはや都市同士の戦争ではない。
AIと人間の対立でもない。
アリスが象徴するもの。
それは「物語」。
未知なる可能性。
夢。
想像。
混沌。
ドロシーが象徴するもの。
それは「文明」。
記録。
知識。
技術。
継承。
その瞬間。
銀河の外から覗く無数の眼が、一斉に開かれた。
宇宙そのものが震える。
そしてアリスとドロシーは同時に空を見上げた。
本当の戦いは、まだ始まってすらいなかった。




