アリスのお茶会
諏訪貴信の能力「新宿」が発動した後。
戦場は静まり返っていた。
東京も京都も。
未知文明の艦隊でさえも。
ただ一人の人間を見つめていた。
その時。
空間の一角に亀裂が走る。
まるで鏡が割れるような音。
パリン――。
そこから現れたのは一人の少女だった。
白いワンピース。
銀色の髪。
青い瞳。
年齢は十六歳ほどに見える。
彼女の名はアリス。
だが、それは本名ではない。
アリスは微笑む。
「ようやく揃いましたね。」
その背後から四つの影が現れる。
第一席
雨宮カナデ
能力名「不思議の国」
彼女が歩くたびに物理法則が変化する。
上が下になり、
重力が横になる。
一秒が一時間になったかと思えば、
百年が一瞬になる。
彼女の周囲では常識が存在しない。
第二席
九条レイ
能力名「鏡の迷宮」
視認した能力を反射する。
言霊。
未来演算。
歌舞伎町。
その全てを複製できる。
しかし完全なコピーではない。
必ず少しだけ歪む。
だからこそ危険だった。
鏡像は本物を超えることがある。
第三席
真壁クロエ
能力名「時計兎」
時間そのものを切断する。
剣を振るう。
すると空間ではなく時間が裂ける。
攻撃を避けても意味がない。
相手の「避けた未来」ごと斬る。
未来演算の天敵。
ユイでさえ顔色を変えた。
第四席
神代シロ
能力名「終頁」
あらゆる物語に終わりを書き加える。
人。
都市。
文明。
能力。
それがどれほど強大でも。
「終わる」という結果だけは否定できない。
彼は黒い本を閉じながら言った。
「結末は必要です。」
四人が並ぶ。
その瞬間。
未知文明の艦隊が警戒態勢に入る。
銀河を征服した種族が。
初めて明確な敵意を示した。
アリスは困ったように笑った。
「そんなに警戒しなくても。」
「私たちは世界を壊しに来たわけじゃありません。」
諏訪が尋ねる。
「じゃあ何しに来た?」
アリスは夜空を指差した。
その先には未知文明の艦隊。
さらにその向こう。
銀河の外。
闇。
何もないはずの空間。
しかしそこには。
巨大な「目」があった。
星雲よりも大きい。
銀河を見下ろす存在。
観測者ですら知らない何か。
アリスの表情が初めて真剣になる。
「本当の敵が来る。」
東京が沈黙する。
京都も言葉を失う。
未知文明の艦隊は震えていた。
そしてアリスは諏訪貴信を見た。
「新宿。」
「いえ――人類。」
「あなたが中心になります。」
四人の能力者が一歩前へ出る。
雨宮カナデ「不思議の国」。
九条レイ「鏡の迷宮」。
真壁クロエ「時計兎」。
神代シロ「終頁」。
そしてアリス。
五人の背後で夜空が割れた。
銀河の外側から、無数の眼がこちらを見ている。




