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Just place of Love  作者: 諏訪貴信


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22/33

共存か敵対か

東京。


かつて世界最大の都市だった場所は、今や巨大な階層都市へと変貌していた。


地上は気候変動による海面上昇で水没し、その上に無数の居住層が積み重なっている。


空を見上げれば、雲のさらに上まで伸びる超高層タワー。


人々はAIが管理する生活圏で暮らし、不自由のない毎日を送っていた。


しかし、どこか息苦しかった。


少女ミナは、東京第七層の学校に通っていた。


十七歳。


誰よりも成績優秀だったが、心の奥には説明できない空虚さを抱えていた。


ある雨の日。


下校中のミナは奇妙な落書きを見つける。


壁に描かれた古い文字。


「シャングリラは東京にある」


その下には座標が記されていた。


興味を持ったミナは、立入禁止区域へ向かう。


そこは都市の最下層。


誰も近づかない忘れられた場所だった。


エレベーターを何十層も降りる。


やがて扉が開く。


そこに広がっていたのは――


森だった。


東京に存在するはずのない、本物の森。


木々が風に揺れ、鳥が鳴き、土の匂いが漂う。


ミナは言葉を失った。


人工公園ではない。


AIが制御する環境でもない。


自然そのものだった。


森の奥には小さな集落があった。


数百人ほどの人々が暮らしている。


古びた木造住宅。


畑。


市場。


そして人々の笑い声。


一人の老人が近づいてくる。


「初めて来たのかい。」


「ここは……何なんですか?」


老人は微笑んだ。


「シャングリラだよ。」


ミナは笑った。


冗談だと思った。


しかし老人は真剣だった。


「上の世界は完璧すぎる。だから私たちはここへ来た。」


「でも不便でしょう?」


「もちろん。」


老人は即答した。


「停電もある。病気にもなる。失敗もする。」


それでも彼は幸せそうだった。


ミナは数日間そこに滞在した。


朝は畑仕事。


昼は子どもたちに勉強を教える。


夜は皆で食事を囲む。


不便だった。


効率も悪かった。


それなのに、なぜか心が満たされる。


雨に濡れる東京の森。


遠くには無数の高層ビルの光。


完璧な都市。


不完全な集落。


どちらも東京だった。


翌朝。


ミナは上層都市へ戻った。


しかし以前の彼女ではない。


学校へ向かう途中、彼女は友人たちに声をかける。


「東京を変えよう。」


誰かが笑った。


無理だと言う者もいた。


それでもミナは歩き続けた。


雨の降る東京で。


新しいシャングリラは、静かに始まろうとしていた。

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